雑誌『をちこち(遠近)』
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心と心をつなぐ 3 ― 中国人高校生が好きになった日本

日中交流センター




● この記事は3回シリーズになっています。
第1回目、2回目の記事もご覧ください↓
心と心をつなぐ 1 ― 中国人高校生が日本で暮らした11ヶ月
心と心をつなぐ 2 ― 日本の部活で大人に成長した中国人高校生たち




 ふくよかな笑顔がステキな17歳の喬金迪さんは、自他ともに認める「日本好き」。漫画やアニメはもちろん、建築、デザイン、無印良品、和食、わび、さびの世界など、興味は尽きない。
 「中国で日本の科学誌『Newton』(ニュートン)を読んで、日本の科学技術はすごいなーとあこがれていたんです」
 山東省済南市の済南外国語学校から、大阪府立夕陽丘高校で研修した。済南でも寿司やたこ焼きがはやっているが、食べるなら本場の日本で、と決めていた。ホームステイ先の近くの京橋界隈で、念願のたこ焼きを食べたことも忘れられない。「大阪はおいしいものがいっぱいある(笑)」と満足そうだ。
 部活は茶道部に入部した。お目当ての1つがお菓子だったが、わずかな部費の範囲では、高価な和菓子は手に届かない。安いケーキやクッキーで代用したのも、今となってはいい思い出だ。
 「青春18きっぷ」を使って和歌山の名所、白浜へ旅行したり、日本の友達に干しナツメなどの中国菓子をあげたり。国際交流に熱心なホームステイ先では、「変な外人」と自称するフランス人や、日本語が上手なモンゴル人とも交流した。ホストファミリーの「お母さん」からもらった本に「私の国籍は地球です」という一言があり、心に刻んだ。「文化の違いは表面的なもので、人間性が共通のもの」。大阪で学んだことは、広く深い。
 ディープなところでは、大阪弁も身についた。中国の後輩たちへのメッセージはずばり、「大阪ええとこやねん。みんな来てや~」。
 将来の夢は、「中国の大学を卒業し、就職してから出張や駐在で日本に来る」ことだそうだ。

喬金迪さん
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江戸東京博物館にて


 大都会の上海に生まれ、上海市甘水外国語中学から、大分県の岩田高校で研修した伏詩宣くん。報告会では、代表の1人として流暢な日本語で報告をした、しっかり者だ。
 来日当初は大分の田舎ぶりに驚いたという。「学校からしばらく歩くと、きれいな大分川が流れていて、広い川原があって......」。 のどかな環境になじめるかと不安になったが、2週間ほどもすると、その「田舎町にすっかり惚れた」自分がいた。
 川原を散歩すると、通りがかりの見知らぬ人から「こんにちは」と声をかけられる。都会の慌ただしい生活ペースに流され、他人への気配りすら忘れてしまった上海人とは違っていた。
 何事にも丁寧で几帳面な日本人にも驚いた。「お店の商品はキチンと並んでいるし、レジでおつりを返すときは手まで握ってくれるんです」
 スランプもあった。11月になり中間試験が近づくと、教室では会話が減った。どうしていいか1人、悩んだ。ある時、同じ寮に住むクラスメートに悩みを打ち明けたのをキッカケに、こうして「交流の壁」を打ち破ればいいんだと、素直な気持ちをそのまま伝えるようにした。
 日本語を学ぶ若者の多くがそうであるように、日本のアニメが大好きだ。小さいころから「名探偵コナン」に夢中になり、「俺は高校生探偵、工藤新一」といったセリフまで暗唱している。そんな影響もあって、人に夢を与える映像関係の仕事、なかでも脚本を書くことに興味を持った。日本での約1年。なんとなくだが「自分をつかめた」との手応えを感じている。

伏詩宣くん
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大分の田舎町にもすっかり惚れ込みました


 日本企業が多く進出している広東省深圳市。市内の深圳外国語学校から来た韋暁晴さんの研修先は、沖縄県立向陽高校だ。
 部活では、沖縄が誇る郷土芸能部に入り、琉球舞踏を一から習った。11月には県の高校総合文化祭に出場し、若い男女が三線に合わせて歌い踊る伝統の「毛遊び」(もうあしび)を披露。踊りは難しく、休日にも集まって長時間練習したという努力の甲斐あって、参加約15校のうち見事5位を獲得。実際に踊ってもらうと、手先まで女性らしいしなやかさが感じられる美しい踊りだった。
 夏休みには高校の友人の実家がある竹富島に行った。「海がきれい。昼はモズクを取ったり、西瓜割りをしたり。夜はカラオケも(笑)」。郷土料理・沖縄そばの店でアルバイトも体験した。「竹富島ではあまり勉強しなかった」と苦笑するが、その代わり、かけがえのない文化や自然にじかに触れることができた。
 「高校を出たら、日本の大学で経済を勉強したい。お金が好きだから(笑)」。冗談を交えながらも「本当は帰りたくない。沖縄にずっといたい」と本音を漏らした。

韋暁晴さん
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 日本に11カ月滞在した28人の若者たち。悩みもしたが、大きな収穫もあったようだ。彼らの達者な日本語も、一層の努力のたまものだろう。
 期せずして、だれしもが「また日本に来たい」という。これも研修生を受け入れた学校、寮、ホストファミリーなど、招へい事業に関わった人たちの温かな理解と支援があってこそ。高校生たちがみな感謝の気持ちを述べていたのもうなずける。
 そしてなにより、ひときわ大きくなった若者たちの笑顔がまぶしい。日本と中国の「心と心をつなぐ」ために、いずれまた日本に来てほしい。そして夢をかなえてほしい。

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「また日本に戻って来たい!」クラスメートやホストファミリーに見送られて帰国


(取材・文 二井康雄、小林さゆり)


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