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「気候変動」で結束したアジアの15人

国際交流基金
日本研究・知的交流部
アジア大洋州チーム

次世代リーダー招へいプログラム・気候変動の出発点

 近年、気候変動の問題に対して関心が高まっています。その対策は一国だけで行えるものではなく、国際間で協力して取り組む必要があります。2010年9月、東アジア各国で今後活躍が期待される若手リーダーたちが日本に集い、1週間にわたって寝食をともにしながら、気候変動の問題を真剣に討論しました。


 国際交流基金は、外務省との共催で、2007年度から「JENESYS東アジア次世代リーダー招へいプログラム」を行っています。このプログラムは、東アジアで次代を担うリーダーとしての活躍が期待される参加者に、日本の社会・文化を理解する機会を提供するとともに、地域に共通の課題について話し合い、思索することを通じて相互理解や連携を深め、緊密なネットワークの構築と共通のアイデンティティーの形成を目指して行われるものです。

 2010年9月12日(日)~18日(土)の7日間に開催された今回のプログラムは、「アジアの気候変動対策:日常生活や社会・経済構造の見直し」をテーマにしました。気候変動の問題に携わる各国の行政官全15人(カンボジア2名、ベトナム2名、ミャンマー2名、ラオス2名、インドネシア2名、タイ2名、フィリピン1名、シンガポール1名、日本1名)が参加し、東京、広島、京都、福島を訪れました。


 初日は外務省での意見交換会合から始まりました。龍谷大学の高村ゆかり教授の基調講演に始まり、主な議題として、2013年以降の国際枠組みのあり方、国連の気候変動枠組み条約締約国会議(2010年開催のCOP16と今年開催されるCOP17)への期待、多国間交渉のあり方などについて、活発な議論が行われ、同時に各国の気候変動政策の紹介も行われました。参加者は積極的に自国の取り組みや課題について話し合い、非常に充実した会合になりました。また、外務省では、西村智奈美外務政務官の表敬訪問も行われました。

 参加者は、最終日の京都での文化視察に至るまで、訪問したそれぞれの場所に強い関心を示し、見学、視察先での講義や施設紹介に、真剣に耳を傾けました。


 東京・お台場のパナソニックセンター東京では、エコロジーや省エネルギーのモデルを展示したショールームを見学し、コンピューターを用いた最新技術を操作体験することができました。広島平和記念博物館では、被爆体験者の体験談を聞いて、平和への思いを新たにし、話者の方と固い握手を交わしたり、抱擁をしたりする場面もありました。また、福井・大飯原子力発電所および京都・舞鶴発電所の訪問では、温暖化対策の意識が職員の一人一人まで行き渡っていることなどに、参加者は深い感銘を受けていました。




気候変動を巡る議論を通して友好の輪が広がる

 このプログラムを通じて、参加した各国の若手リーダーたちは、気候変動に関する日本の積極的な取り組みや貢献にも触れることになりました。温暖化問題が主要議題の一つとなった2008年のG8サミットでは日本が議長国としてリーダーシップを発揮したこと、また、低炭素社会の実現に向けた技術開発が日本の国際競争力を高めていることなどを、改めて知る機会になったようです。

 参加者たちは、同じアジア市民として今後も日本と友好関係を継続して構築していきたいと話し、自国の気候変動に対する弱点や今後の課題など、多くを学ぶことができたと非常に喜んでいました。

 また、インドネシアから参加したレンドラ・クルニア・ハッサン(同国環境省・気候変動制御専門法務官)氏は、「日本に対してステレオタイプのイメージしか持っていなかったが、今回滞在する機会を得たことで日本の印象がかなり変わった。今後も気候変動というテーマを通し、両国のより良い友好関係を構築していきたい」と話すなど、日本の社会・文化を理解するよい機会にもなったようです。

 参加者の間には信頼と友情が育まれ、終了後も参加者同士の交流は続いているようです。「同じメンバーでまた日本を訪れたい」というメッセージも多く寄せられました。7日間という短い日程でしたが、今後もJENESYS東アジア次世代リーダープログラムを通し、日本とASEAN各国のさらなる友好関係の形成に貢献していけることを願っています。


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写真は、同様のプログラムで棚田を訪問する過去の参加者の様子

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