400万人に迫る! 世界で日本語を学んでいるのはどんな人?

国際交流基金(ジャパンファウンデーション)



 国際交流基金(ジャパンファウンデーション)は、世界の日本語教育の現状を正確に把握するために、1974年より海外の日本語教育機関に関する調査を実施しています。
 このたび、2012年度に世界203か国を対象に行った調査の結果をまとめた『海外の日本語教育の現状 2012年度日本語教育機関調査より』を刊行しました。



国の広がり~136の国・地域で学ばれる日本語
 「2012年度日本語教育機関調査」(以下「2012 年度調査」)で、日本語教育の実施が確認できたのは、128か国と8地域の計136でした。前回の「2009年度日本語教育機関調査」(以下「2009 年度調査」)では、の125か国と8地域の計133でしたので、3か国の増加となりました。



学習者総数は約399万人
 2012 年度調査では、日本語学習者数は3,985,669人(2009 年度比9.2% 増)、日本語教育機関数は16,046 機関(同7.5% 増)、日本語教師数は63,805人(同28.1% 増)でした。日本語教育の規模を図る3つの数字、すなわち、「学校の数」(機関数)、「先生の数」(教師数)、「勉強している人の数」(学習者数)のいずれもが増加しました。

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日本語教育の実施が確認できたのは全世界で136 の国・地域。学習者総数は約399万人

 なお、この調査で対象となっているのは、「語学教育として日本語を教えている学校やその他の機関」であり、国際親善や異文化交流が主目的で語学としては日本語を教えていない教室や講座、テレビ・ラジオ・書籍・雑誌・インターネットなどで日本語を独習している学習者は総数には含まれませんので、その点を考慮すると、日本語を学習している人の数は、今回の調査で明らかになった399万人を大きく上回っているといえます。



過去33 年間で学習者数は31.3 倍に
 1979年度調査から2012 年度調査まで過去10 回の調査結果を見ると、機関数は1,145 機関から16,046 機関となり14.0 倍に、教師数は4,097人から63,805人となり15.6 倍に、学習者数は127,167人から3,985,669人となり31.3 倍にそれぞれ増加しました。
海外における日本語教育は、この33 年間、常に増加を続け、大幅に拡大しています。

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過去33 年間で機関数は14.0 倍、教師数は15.6倍、学習者数は31.3 倍に。



なぜ日本語を学ぶのか?
 日本語学習の目的として、今回の調査対象の機関から寄せられた回答(複数選択可)の上位は、次の通りです。

1位:日本語そのものへの興味(62.2%)
2位:日本語でのコミュニケーション(55. 5%)
3位:マンガ・アニメ・J- POP等が好きだから(54. 0 %)
4位:歴史・文学等への関心(49.7%)
5位:将来の就職(42.3%)
6位:機関の方針(35.3%)
7位:日本への留学(34.0%)
8位:国際理解・異文化理解(32.4%)
9位:日本への観光旅行(28.6%)
10位:受験の準備(大学等)(26.6%)

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日本語学習の目的で最も選択の割合が高いのは「日本語そのものへの興味」(62.2%)。次いで「日本語でのコミュニケーション」(55.5%)、「マンガ・アニメ・J-P0P 等が好きだから」(54.0%)

 実利的な目的より、日本についての知識面での興味が上回る結果となっていることが分かります。また、「マンガ・アニメ・J-POP 等が好きだから」は、「歴史・文学等への関心」を上回っており、日本のポップカルチャーが世界的に浸透し、日本・日本語への興味・関心の入り口となってきていることもよくわかる結果となりました。
 ポップカルチャーをはじめとする日本文化は、旧来の各種マスメディアを通じて、さらに近年ではインターネットを通じて世界中からアクセスがしやすくなっていることが、こうした状況に拍車をかけているものと考えられます。
 なお、6位の「機関の方針」というのは、例えば、高校の第二外国語として日本語を学ぶというように、学習者が望むかどうかとは別に、所属している日本語教育機関(学校)の方針で日本語を勉強しているような状況を指しています。



日本語教育が盛んなのは東アジアと東南アジア
 全世界における機関、教師、学習者の総数を地域別に比較すると、いずれにおいても東アジアが占める比率が圧倒的に高く、次いで東南アジアとなっています。また、機関、教師、学習者それぞれの割合で、東アジア、東南アジア以外の地域は全て1割程度かそれ以下です。
 特に、学習者の割合は、東アジアは54.1%にあたる2,154,344人、東南アジアは28.4%にあたる1,132,701人となっており、この2 地域だけで全体の82.5%を占めています。

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機関数の62.9%、教師数の75.3%、学習者数の82.5% が東アジアと東南アジア



上位3ヶ国は、中国、インドネシア、韓国
 世界で最も学習者が多い国・地域は中国で1,046,490人。次いでインドネシアの872,411人、韓国の840,187人です。そして、オーストラリアの296,672人、台湾の233,417人、米国の155,939人、タイの129,616人が続き、この7か国・地域が、学習者数が10万人以上の国・地域です。
 これに続き、学習者数の規模でみると、学習者数が1万人以上10万人未満の国・地域が13、1,000人以上1万人未満となるのは33あります。

learning_japanese06.jpg 全学習者の26.3% が中国、21.9% がインドネシア、21.1% が韓国。3か国で全学習者の7 割弱。

 地域的な集中のみならず、各地域における特定国への集中の度合いも高く、上位3か国の占める割合は69.2%、5 位までで82.5%、10 位までで92.5%です。これまで述べてきた全世界の集計結果について、すなわち教育段階別の集計や日本語学習の目的、日本語教育上の問題点などについては、特に中国、インドネシア、韓国の上位3か国が与える影響が大きいといえます。

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日本語教育上の課題は教材不足
 日本語教育上の問題点として最も多くの機関が挙げたのは「教材不足」(28.5%)、次いで「学習者不熱心」(26.5%)、「施設・設備不十分」(26.1%)、「教材・教授法情報不足」(23.9%)、「学習者減少」(21.0%)でした。
 2009 年度との比較では、「他言語導入・日本語科目廃止検討」が6.8%から8.6% へ、「学習者減少」が16.6%から21.0% へ、「学習者不熱心」が23.3%から26.5% へと増加しているが、他の項目では全て減少しており、日本語教育環境の整備が少しずつ進んでいる状況がうかがえます。

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日本語教育上の問題点で最も選択の割合が高いのは「教材不足」(28.5%)。次いで「学習者不熱心」(26.5%)

 上のグラフは世界全体の傾向を示していますが、日本語教育上の問題点を地域別にみてみると、日本語教育が急激に拡大している地域(東南アジアなど)や、まだ日本語教育があまり行われていない地域(南アジア、中米、北アフリカ、アフリカなど)では教材や教師、設備などに関する項目の割合が高くなっている一方、西欧や大洋州など日本語教育の歴史が長い地域では、ほぼ全ての項目で数値が低いなど、地域による差が大きいことが分かっています。
 また、「学習者不熱心」というのは、文字とおり、日本語を勉強する学習者の態度が熱心ではないということですが、この回答は、東南アジアに多くみられました。その理由としては、東南アジアでは、中等教育(日本の中学・高校相当レベル)における日本語教育の導入が教育機関の方針などで急激に進んだことが考えられます。つまり、各国の教育政策によって日本語を学ぶ学習者が増えたものの、学習者本人は特に日本語学習者に強い関心がないというような場合に、「学習者不熱心」という状況が生まれており、これは、前項の日本語学習の目的の「機関の方針」と裏表の関係と言えます。 高校などの中等教育段階の日本語学習者の拡大が異なる国・地域で見られている中で、これらの学習者の関心、期待に応える日本語教材の開発・提供や日本語教師の能力の維持向上の必要性などの諸課題への対応もが今後の課題と言えます。







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(左)日本語を勉強しているベトナムの中学生(右)海外日本語教師短期研修 小学生交流 

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(左)バンコクでの日本語能力試験の様子(右)マレーシア日本語教育セミナーの様子

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米国での日本語教育

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モンゴルでの日本語教育





「2012年度日本語教育機関調査」実施概要
調査目的
日本語教育の現状を把握し、主に以下の3つの点について有用な資料を提供することにある。
①研究者などが、日本語教育に関する調査・研究を行う際の基礎資料
②日本語関係機関、国際交流団体などが、日本語教育に関する各種事業を実施する際の参考資料
③日本語教育機関・団体の情報交流や相互交流、ネットワーク形成のための参考資料

調査対象機関
 本調査は、海外で日本語教育を実施している機関および日本国内において海外の公的機関を設置主体として日本語教育を実施している機関を対象として行った。以下は、調査対象に含めていない。
①組織としての実体を伴わない団体(活動)
②在留邦人子弟向けの日本人学校
③不特定多数を対象に日本語教育を行っている放送局やWebページ管理者
④短期的な日本語体験活動



詳しい調査結果は、書籍として刊行していますので、是非、あわせてお読みいただければと思います。



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本冊『海外の日本語教育の現状 2012年度日本語教育機関調査より』
(全191ページ) CD-ROM付
定価:本体2,000円+税
ISBNコード:978-4-87424-608-5 C3002
発行日:2013年12月1日
発行者:株式会社くろしお出版

概要(日本語)『海外の日本語教育の現状 2012年度日本語教育機関調査より 概要』
(全45ページ)
定価:本体500円+税
ISBNコード:978-4-87424-609-2 C3002
発行日:2013年12月1日
発行者:株式会社くろしお出版

概要(英語)『Survey Report on Japanese-Language Education Abroad 2012』
(全45ページ)
定価:本体500円+税
ISBNコード:978-4-87424-610-8 C3002
発行日:近日中
発行者:株式会社くろしお出版



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