雑誌『をちこち(遠近)』
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ハノイ: 国境を越えて届く声優の歌と声-斎賀みつき feat. JUST トーク&ミニライブ

ベトナム日本文化交流センター

「次の曲は、『07-GHOST』というアニメのラジオ版主題歌となった曲です。聴いてください。」
声優・斎賀みつきさんが、そう紹介し、通訳が「07-GHOST」とアニメ番組の名前を言葉にした途端、「キャー」という悲鳴が会場のあちらこちらから聞こえてきました。「07-GHOST」はベトナムではTV放映されていませんが、一部の観客(その多くは女子大生と女子高生)は、同アニメの主人公、テイト=クラインの声を斎賀さんが演じていることを確実に、そして詳細に知っていたのでした。

当センターが実施した斎賀みつきfeat.JUSTトーク&ミニライブは、文化庁主催のアジアにおける日本映画特集上映事業「日本アニメーション映画祭~再発見!日本アニメーションの魅力」(2011年1月12日~16日、ハノイの国立映画センターで開催)の関連事業です。劇映画としてのアニメの紹介とともに、アニメに欠かせない存在である「声優」という仕事の魅力をトークと歌で紹介することが目的でした。

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「シンガポールや日本に留学している友達に、よくDVDやマンガを送ってもらっています。」
シンガポールから届いた新刊のビジュアルムック(マンガ解説本)を手に嬉しそうにそう語るOL(20代後半)とその友達グループは、斎賀さんのトーク&ミニライブをハノイで見るために、わざわざ休暇を取って、1,800kmも離れたホーチミン市からやって来ました。さながら、アイドルの追っかけのようです。ベトナム人コスプレイヤーとして活動している別のグループの一人(男性)は、『今日から㋮王!』のヴォルフラム(斎賀さんが声を演じるキャラクター)に扮して、花束贈呈を行いました。この日のために、衣装を新調しての登場でした。

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とにかく、熱い。日本のマンガ・アニメの海外での人気は、「クール・ジャパン」の代表例として紹介されることが多いのですが、その人気のあり方は、国・地域によって千差万別です。少なくとも日本のマンガ・アニメが好きなベトナム人の反応は、「クール」というよりも「ホット」で、そのまなざしは、憧憬を含んだ「ファン」のものだと言えます。「なんか格好いいよね」というクールな態度ではなく、とにかく「好き~!」という、熱を帯びたストレートな感情表現なのです。斎賀さんのトーク&ミニライブを含む日本アニメーション映画祭のチケット(無料)配布時には、初日だけでも1,000人以上の若者が押しかけ、手に入れたチケットを嬉々として眺め、見比べる光景が見られました。

「『日本』と『アニメ』のコンビは最強タッグだ。国名とジャンル名の組み合わせで、ここまで若者への訴求力に効果のある映画祭を他に知らない。」とは、国立映画センターのベトナム人スタッフのコメントです。そして、この、いつのまにか形成されたイメージをより強固なものとし、より広く一般層へと波及する媒介(catalyst)となっているのが、「クール」よりも「ホット」な反応を示すコアなアニメファンなのです。

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「ラストは私たちのテーマソングです。サビのところで、JUSTの『J』のサインを左手で作って一緒に歌ってください。」
「ホット」でコアな斎賀さんファンの熱気に勇気づけられ、曲の進行とともに、一人また一人と「J」のサインを掲げて楽しむ人の数が増えていく。黒いベレー帽のベトナム人女性(40代・アニメーター)も、実は「ホット」でコアなファンの一人のようです。終始、歌詞を一緒に口ずさみ、真剣なまなざしで「J」のサインを斎賀さんに送っていました。

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斎賀さんのトーク&ミニライブの様子は、複数のテレビ局でニュースとしても報道されました。「今回のイベントをきっかけに、声優という職業に興味を持ち、また、ベトナムでも声優を目指す人が増えてくれたら嬉しい。」という斎賀さんの言葉は、会場の観客のみならず、ニュースの視聴者にも届いたことでしょう。

ベトナムでは、アニメの吹き替えは、これまで一人のナレーターが淡々と語ることが一般的でしたが、近年、ホーチミンテレビを中心に、キャラクターごとに別の「声」を割り当てる試みが始まっています。同テレビで2009年12月から放映が開始された『ドラえもん』も、これまでの『ドラえもん』とは違い、ドラえもん、のび太、しずかちゃんなど、それぞれのキャラクターに合わせ、別々の演者が「声」を演じています。そして、同番組のサイトには、「ドラえもんの声が好き」「しずかちゃんの声がかわいくない」など、各キャラクターの「声」に対する視聴者のコメントも掲載され始めています。

ベトナム最大のマンガ・アニメファンのインターネットコミュニティ「ACC(Animation & Comic Community)」は、80万人以上の登録者数を誇ります。ホーチミン市から今回の事業に駆けつけたOLグループも、ここのメンバーで、ホーチミン市のオフ会では、定期的に、アニメや声優に関するレクチャーを開催しているそうです。ホーチミンテレビの試みといい、ACCメンバーの活動といい、ひとつひとつの動きが「面」となって、ベトナムに声優という職業が確立される日も、そう遠くないのかもしれません。

 


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