友情と平和の年に - 東ティモールの子どもたちに、日本の遊びを伝える

坂井恒雄
岡本弘子
阿部花恵
(特定非営利活動法人 日本グッド・トイ委員会 おもちゃコンサルタント)



東ティモールは2012年5月20日に独立10周年を迎えました。また、日本と外交関係を樹立してから、ちょうど10年目にもあたります。そこで、両国は2012年を「日本・東ティモール友情と平和の年」(日本・東ティモール外交関係樹立10周年記念平和年)とし、様々な交流事業を実施しています。
「日本・東ティモール友情と平和の年」のオープニングイベントとして、国際交流基金(ジャパンファンデーション)は、今年の2月に、おもちゃの専門家を東ティモールに約10日間の日程で派遣し、主に子どもたちを対象に、日本の伝統的な遊びを紹介する事業を在東ティモール日本大使館とともに実施しました。



特定非営利活動法人 日本グッド・トイ委員会に所属するおもちゃコンサルタントの坂井恒雄、岡本弘子、阿部花恵の3氏が、バウカウ県ラガ準県のラガ孤児院、首都ディリ市内の聾唖学校「アガペー」、リキサ県バザール・テテ準県の公立学校と幼稚園をそれぞれ訪問し、日本の伝統的な遊びである折紙、けん玉、竹とんぼ、独楽、竹馬、福笑い、羽子板などのデモンストレーションを行い、実際に子どもたちにも遊んでもらいました。
また「大きな栗の木下で」や「不思議なポケット」といった日本の歌をパネルシアター(パネル布を貼った舞台に絵や文字を貼ったり外したりして展開する、おはなし、歌あそび、ゲームをはじめとする教育法)を使って、東ティモールの母国語テトゥン語で紹介しました。どの会場でも笑いが絶えず、国の未来を担う東ティモールの子供たちに、日本の文化に対する理解を進化させる貴重な機会になりました。

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首都ディリ市内の聾唖学校「アガペー」で

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バウカウ県ラガ準県のラガ孤児院で

また、普段は日本の子ども達におもちゃ遊びを教えている派遣専門家の皆さんにとっても、東ティモールの子どもに日本の遊びを伝えることで、得たものも多かったという感想をいただきました。


坂井恒雄
子供たちの置かれた環境は日本では想像できないほど厳しいものでしたが、子どもの特質である、好奇心の強さは変わることなく、また、厳しい環境であるが故の人恋しさの気持ちの強さ、素直さが感じられました。
東ティモールの子ども達にも楽しんでもらえるのを目の当たりにして、我々が紹介した日本の遊びは、世界中のどこでも通じる楽しさがあることも実感しました。今回の東ティモールでの事業通して、子供たちだけでなく、彼らを取り巻く大人達にも遊びの持つ力を感じてもらえれば嬉しいと思います。


岡本弘子
どの国の子も、嬉しいと思うこと・楽しいと思うことは同じなんだと今更ながら気づいたり、東ティモールの子ども達のパワーに、この国の将来は、この子ども達ならきっと変えていける、とも思いました。


阿部花恵
どの場所でも最も盛り上がった遊びは福笑いでした。想像以上の反響に私たちも驚きましたが、「ジャパニーズ・ボニータ(日本美人)」を目隠しして創作していく、というライブ感とドキドキわくわくする感覚と、湧き上がってくる笑いが我々以上にあふれている印象が非常に強かったです。
東ティモールでの10日間は新たなる視点の気づきと、知らなかった文化に触れる素晴らしい時間でした。「日本の遊び」を紹介することで触れ合った子どもたちの印象として器用であること、そして国を隔てても子どもたちの遊びの展開や発想は素晴らしく、こちらが教えられることがたくさんあることを再確認したように思います。

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リキサ県バザール・テテ準県の中学校で

そして、東ティモールから帰国して約半年、日本の遊びを紹介した会場の一つ、リキサ県バザール・テテ準県の幼稚園を運営する聖心侍女修道会に、現地のシスターから嬉しい贈り物が届きました。
それは幼稚園の子供たちが、日本の「先生」たちから教わった日本の遊びを今でも、楽しそうに遊んでいる映像です。これらの映像は、2012年7月に撮影され、夏の終わりに、日本の専門家の手元にも届きました。

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リキサ県バザール・テテ準県の幼稚園で

岡本弘子
子ども達が今も日本の遊びを楽しんでいる様子をありがとうございました。
現地でお世話になった方々の顔が次々に思い出され、「元気かな、お礼を言いに行きたいな」「あれから、どのぐらい遊んでくれたのかな」等と思いながら、見せていただきました。
現地では、様々な出会いや経験をさせていただきましたが、その一つに折り紙の二そう舟を中学生と一緒に作った時のことがあります。作った舟に、中学生自身が「東ティモール、日本、友情の船」と書いてくれたのを見て、私達が伝えたかったことを、逆に言ってもらえて本当に嬉しかったことを思い出します。
また、活動を通して、「どの国の子どもも、嬉しいと思うこと・楽しいと思うことは同じである」と改めて気づいたことや、色々な思いを抱えながらも頑張っている子ども達の様子に私自身がパワーをもらったことも思い出します。
帰国してから、勤務先の学生達に現地のことを話す機会がありましたが、今回、学生達も映像を見せていただき、世界を身近に感じ、興味関心が広まったようです。
貴重な機会をいただきましたことに、改めて感謝申し上げます。




東ティモールの「国づくり」は、まだまだ始まったばかりですが、国際交流基金でも、東ティモールのこれからを担う若い世代の育成に、文化を通じて貢献できればと考えています。



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