雑誌『をちこち(遠近)』
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Vol.2 盆栽が人々を魅了する理由は世界共通

三寒四温を繰り返し、春の陽気に近づいてきました。

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芽吹きが進むカリンの盆栽。

3月は植え替えが主な仕事。
不要な根を切り詰め、新しい土で植え替えられた盆栽の姿はとても気持ち良く、所有者である愛好家の表情も清々しい。

今回は、来月下旬に開催される「第8回世界盆栽大会inさいたま」が近いということで、海外の盆栽事情も交えて綴ります。

世界に愛好家がどの程度いるか、正確に把握していませんが、SNSの投稿などを見ると、日本とは気候風土の異なる国でも熱心に取り組んでいる人々が多い。

愛好家が所有している盆栽の数はどのくらいか皆さんご存知ですか? 個人差はありますが、私が仕事を請け負っているお客様のほとんどが100点以上。
300点以上お持ちの方も多くいらっしゃいます。

海外の愛好家はどうかというと、これまた同じ。

「いつの間にか増えてしまった」と本人は苦笑いですが。
一点一点、個性の異なる盆栽。それぞれに語れる思い出があり、愛情を込めて世話をすることで、癒しと楽しみを感じているようです。

ちなみに私は少数精鋭タイプ。日々、出仕事が多い状況下で、増やしたいという気持ちをぐっと抑えて、時間をかけて作りたい樹だけ所有するようにしています。
しかし、夢は老舗盆栽園のように銘木がズラッと!

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最近手に入れた赤松。4年計画で今後が楽しみ。

「愛情をかけて育てた分、それ相応の姿で成長を示してくれる」

日々の水やり、剪定、植え替え、針金整枝など、手元での作業は、新芽の膨らみ、葉の色の変化、幹肌、葉脈の模様と、徐々にミクロな世界へと入り込み、対話が始まります。

「植物を愛でる行為」と「芸術性」。
国や言葉、文化は違っても、人々が盆栽に魅了される理由は共通です。

海外に初めて広く紹介されるきっかけとなったのは――。

1873年(明治6年)ウィーン万国博覧会。
日本政府が初めて公式に参加し、数多くの出展作品の中に盆栽が含まれていたという記録があります。
盆栽の発展を願う多くの人々によって、今日まで国内外における普及活動が行われています。

昨年「トルコ・アンタルヤ国際園芸博覧会2016」でも盆栽の展示が行われ、私も日本政府出展メンバーの1人として、フラワーアーティスト、生け花、流通の専門家と共にご奉仕をさせていただく恩恵を授かりました。

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盆栽の最上級ブランド「大宮盆栽」の展示風景。

ギャラリートークの様子。

出展された「大宮盆栽」の展示は大盛況。
盆栽愛好家の集まりでなく、不特定多数の人々に向けたイベントのため、来場者から庭木や生け花を指差しながら「これは盆栽?」と尋ねられることもしばしば。
トルコでは知名度や関心は高いものの、認知度はまだまだ。盆栽を取り扱っている業者はいるので、今後も精力的な活動に期待します。

博覧会で初めて「マクロ盆栽」というワードを耳にしました。
造形技術を施した庭木の海外向け商標らしいです。
調べてみると、すでに9年前に、中国での生産が日本産マクロ盆栽の販売に影響を与えている、と書かれており。
知らなかった・・・・・・。
正確に言うと、盆栽の「盆」とは器を意味するので、庭木に盆栽という呼称をつけることに疑問はありましたが、日本の卓越した造形技術の高さが評価されていると誇りに思い、マクロ盆栽の今後を応援します。
受け継がれた技術や知識は大切にしつつ、様々な形態の盆栽が生まれるということに、私は肯定的です。
新たな価値を生み出す進化や変化が止まったとき、衰退する一方ですからね。

世界に愛好家が増えるのと同様に、技術の高いプロも多くなっています。
日本でしっかりと修行をした方もいますし、独学で経験を積み、立派に盆栽園を構える方もいる。

昨今、アメリカ、ヨーロッパ、アジアの知識や技術力の向上と良質な素材が豊富にあるという理由で、素晴らしい盆栽が次々作られており、その造形や展示方法に刺激を受けることもあります。

先に挙げた来月下旬開催の「第8回世界盆栽大会inさいたま」では、日本人13名と8カ国から招聘された盆栽作家によるデモンストレーションが行われます。
条件により観覧できるデモンストレーションは異なりますが、盆栽を作り上げる工程をご覧いただける滅多にない機会になると思います。
スケジュールを確認し、会場に足を運んでご覧になってください。

盆栽は立派な異文化コミュニケーションツールのひとつ。
一人楽しむもよし。国籍、年代を越えた交流もぜひ楽しんでいただきたい。

【Information】
「第8回世界盆栽大会inさいたま」2017.4.27~4.30@さいたまスーパーアリーナ他
http://world-bonsai-saitama.jp/

bonsai_profile.jpg 森 隆宏(もり たかひろ)
盆栽師。1979年、東京都生まれ。常磐大学国際学部を卒業後、2002年より勝田光松園にて盆栽を修行。2006年に独立し、盆栽師として活動を開始する。2009年、由緒ある国風盆栽展で職人として手がけた作品が国風賞を受賞。2009~2013年、さいたま市大宮盆栽美術館の専属盆栽技師を務める。2013年、欧州文化首都2013コシツェに盆栽デモンストレーターとして、第8回世界盆栽大会(2017年開催)のさいたま誘致プレゼンテーションに盆栽師代表プレゼンテーターとして参加。2014年にはスロヴァキアの国際盆栽フェスティバルでもデモンストレーションを行い、2016年の国際園芸博覧会トルコ・アンタルヤでは日本政府出展の展示に盆栽専門スタッフとして携わった。現在、盆栽師の仕事に従事する傍ら、2013年に構えたアトリエ「盆栽もり」などで初心者向けワークショップを開く他、米カリフォルニアでも講習会を行うなど、国内外で盆栽の普及活動に取り組む。

盆栽もりHP http://bonsaimori.jp/
盆栽もりfacebook https://www.facebook.com/Bonsaimori/

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