雑誌『をちこち(遠近)』
バックナンバー

バックナンバー一覧

Vol.4 盆栽の展示会で「美を追求する技術」に触れる

5月に行う作業の一つに葉狩りがあります。今年形成された葉を全て刈り込んで、新たな芽吹きを促します。
枝数を増やしたい時に有効な手入れの一つです。

bonsai_04_01.jpg bonsai_04_02.jpg

葉狩りする前のカエデの盆栽。

葉狩り作業を終えた姿。

先月は4年に一度のビッグイベント、「第8回世界盆栽大会inさいたま」が開催され、3日間の来場者数が約4万5000人。男女問わず幅広い年齢層が見られました。
事前に想定していた来場者数の倍以上とあって、会場は人で溢れんばかり。28年ぶりの日本開催に来場者数の予測は大きく外れ、主催者側としては嬉しい悲鳴では? 今回の世界盆栽大会は大成功だったのではないでしょうか。

長い準備期間を設けて積み上げた結果、多くの方に盆栽の魅力を発信できたことは、関係者の努力の賜物。この場を借りてでも盆栽師の一人として感謝の気持ちを伝えたくなります。

各所で世界大会を盛り上げる装飾や盆栽のイベント展示を見ることができ、地域と一体となった雰囲気が素晴らしかった。大宮駅から氷川神社、盆栽村、盆栽美術館、最後にさいたまスーパーアリーナというルートで懐かしい景色を散策しながら楽しんできました。

個人的に印象に残ったことといえば、メイン会場のさいたまスーパーアリーナで行われた「日本の盆栽水石至宝展」。ずらっと盆栽の銘品が展示され、しかも培養管理が非常に良い状態。その光景は、後にも先にもないと思うほどで、正直、度肝を抜かれました。

トップクラスの盆栽を目の当たりにした愛好家の多くは、「あんなすごいのを見た後で、自分の盆栽を見るとがっかりしちゃうんだよな」と口にします。
その言葉に対する私の役割は、「良い樹を見て、銘木たるポイントはどこなのか、観察。夢を持っていつかあの樹のように作りましょう!」と鼓舞することなのですが・・・・・・、
本大会では「このレベルの樹を自分が所有する日はいつになることやら」と自身が意気消沈。力の入った展示に圧倒され、自宅の盆栽を見た後、しばらく無力感に襲われたのでした。

bonsai_04_03.jpg

シンボル盆栽として「日本の盆栽水石至宝展」の会場入り口に展示された推定樹齢1000年超の真柏。

世界大会のようなビックイベントとは別に、各地で愛好家団体が展示会を行っています。愛好家にとって、盆栽を展示するというのは楽しみの一つであり、目標。各団体によって即売会、講習会、そば打ちなどを催し、団体や地域住民との交流を深め、集客に力を入れています。

しかし、そこには大きな課題が立ちはだかっているのです。
「高齢化と若手不足」。
80代後半になっても十分、庭先で盆栽を楽しむことはできるのですが、展示会となると、老体に鞭打って、展示台やパネルなどをみんなで協力して設営しなければなりません。
ちなみに私が所属している団体は、私を除くと、平均年齢は推定73歳。
60代後半から80代前半の方々が、「よっこいしょっ」と重い会議用テーブルや展示パネルを運んでは組み立てる。
「若い方に入会してもらいたい」とは全国各団体の共通の願いだと思います。

今から40年近く前に盆栽ブームがあったらしく、当時30代40代の愛好家も多くいたのですが、その方々が歳を重ねて今に至る、という流れ。
その後の世代に見向きもされなかった理由は何なのか。

海外の団体は60代以上も多いのですが、30代40代も2割、50代までだと5割近くいるという印象です。日本文化への憧れも含み、芸術作品を作る意識が強いように思います。

bonsai_04_04.jpg

愛好家団体による展示会の風景。

先日、東京の谷中にある「朝倉彫塑館(ちょうそかん)」を訪れました。
明治大正昭和と活躍した彫塑家(彫刻家)、朝倉文夫のアトリエ兼住居で、作品の展示はもとより、国の有形文化財となる建物と庭園を有する施設です。
アトリエ、住居、庭園の各所に見えるこだわりと美的センスに感動の連続。それと同時に、この偉大な彫刻家が、91年の歴史を持つ「日本盆栽国風展」の第1回目を格式ある東京都美術館(当時は東京府美術館)で開催させることに尽力したという事実がとても嬉しかったのです。

美の追求が脈々と現代まで、命を繋げてきている。展示会場に悠然と並ぶ盆栽を一度見ると、樹の歴史や丹精込めて作り上げた技術に心を奪われます。

今後どういう人たちが愛好家として発展を支えていくのだろう。
これからも続く高齢化に不安は尽きませんが、盆栽に日本人の美意識を目覚めさせてくれる力があると信じて、今日も愛好家の体調を気遣いながら盆栽談義に花を咲かせています。

是非、展示会に足を運んでみてください。

bonsai_profile.jpg 森 隆宏(もり たかひろ)
盆栽師。1979年、東京都生まれ。常磐大学国際学部を卒業後、2002年より勝田光松園にて盆栽を修行。2006年に独立し、盆栽師として活動を開始する。2009年、由緒ある国風盆栽展で職人として手がけた作品が国風賞を受賞。2009~2013年、さいたま市大宮盆栽美術館の専属盆栽技師を務める。2013年、欧州文化首都2013コシツェに盆栽デモンストレーターとして、第8回世界盆栽大会(2017年開催)のさいたま誘致プレゼンテーションに盆栽師代表プレゼンテーターとして参加。2014年にはスロヴァキアの国際盆栽フェスティバルでもデモンストレーションを行い、2016年の国際園芸博覧会トルコ・アンタルヤでは日本政府出展の展示に盆栽専門スタッフとして携わった。現在、盆栽師の仕事に従事する傍ら、2013年に構えたアトリエ「盆栽もり」などで初心者向けワークショップを開く他、米カリフォルニアでも講習会を行うなど、国内外で盆栽の普及活動に取り組む。

盆栽もりHP http://bonsaimori.jp/
盆栽もりfacebook https://www.facebook.com/Bonsaimori/

Page top▲

Twitter - @Japanfoundation