雑誌『をちこち(遠近)』
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カイロ:音楽で「日本の哲学」を伝える

カイロ日本文化センター

4月下旬から5月初旬といっても、すでに初夏の汗ばむ陽気のエジプトは、世界の現代音楽の祭典でさらにホットになりました。エジプトで初めて総合的に現代音楽を紹介する催しとなった第1回アレキサンドリア現代音楽ビエンナーレ。ここに参加しカイロでも公演を行なった東京シンフォニエッタの演奏に対する観客の熱い反応を見て、このイベントのために1年近くの間協力してきたジャパンファウンデーションのスタッフは、安堵の気持ちでいっぱいでした。

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コンセルバトワールで学生たちと共演する東京シンフォニエッタ

西洋クラシックを土台にして欧米で発達してきた現代音楽は、日本においても大衆的関心があるとは言えず、エジプトにおいてはさらに知られていないジャンルですから、一般の聴衆を期待して行なうコンサートにどれだけの人が来てくれて、そして難解だと言って中座せずに最後まで楽しんでもらえるのかは、当日、演奏が始まってみるまでまったく予測できなかったのです。

結果は、アレキサンドリア図書館での2回の公演とカイロオペラハウスでの1回の公演をあわせて500人ほどの人たちが聞きにきてくださり、そしてほとんどの人が席を立つことなく、最後まで楽しんでいってくれました。このツアーに同行された湯浅譲二さんの曲をはじめ、武満徹、西村朗、細川俊夫等日本を代表する作曲家の楽曲が披露されましたが、各曲の演奏の前に、指揮者の板倉康明さんが曲の背景を丁寧に解説されたのも、お客さんの鑑賞を絶妙にサポートしていました。

公演のMCのなかで板倉さんが、「私たちの音楽を通して、日本の哲学を感じ取ってほしい。」と訴えかけましたが、その言葉どおり、エジプトの音楽愛好家たちは日本に対して持っているイメージをさらに豊かにして会場を後にしました。西洋のオーケストラ編成という普遍的な形態に作曲家が籠めた日本的な思考や情緒を、彼らは確かに感じ取ってくれたのです。

この3回の公演のほかに、湯浅さんの講演が3回、日本とエジプトの音楽家によるディスカッションが1回、音楽学校の学生に対するマスターコースが1回、開催されました。ビエンナーレという受け皿を得て、音楽家どうしの交流の新しい一歩が踏み出されました。

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