アジアに飛び出す日本の社会起業家たちー「東アジア地域社会起業家国際シンポジウム」への社会起業家派遣事業

横田有紀

国際交流基金

日本研究・知的交流部 欧州・中東・アフリカチーム

 

近年、社会に貢献する新しいビジネスのあり方として、「ソーシャル・エンタープライズ(社会起業)」が世界的に注目されています。ただ、アジア地域では、「ソーシャル・エンタープライズ」の概念はまだ新しく、地域内での協働や情報共有につながる機会も限られているのが現状です。

 

そこで、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)は、ブリティッシュ・カウンシルとの共催で、2010 11 月、タイ・バンコクにおいて開催された「東アジア地域社会起業家国際シンポジウム」に、日本の社会起業家15 名を派遣しました。

 

P1030255.JPG今回のシンポジウムは、アジア諸国及び英国の社会起業家や関係者が一堂に会し、互いの知識や経験を共有し、アジア地域において有益なネットワークを構築することを目的に開催されたものです。

 

「社会起業家」と一口にいっても、実際にどんな活動をしている方たちなのか、具体的なイメージが浮かんでこない方も多いかもしれません。それでは、今回派遣された日本の社会起業家の皆さんは、どんな活動をされている方々でしょうか。

 

たとえば、日本の母子保健には含まれなかった「出産後」の母親の心と体のサポート、外出困難な高齢者や障がい者への訪問型理美容サービスの提供、聴覚障がい者向けのITサポート、フィリピン人講師によるオンライン英会話事業を通じたフィリピン人の自立支援など。いずれも、「今までありそうでなかった」「見落とされていた」「でもこういうサービスが実は非常に必要とされていた」といった社会の様々なニーズに、きめ細やかに応える活動をなさっている方たちです。P1030217.JPG

(今回派遣された社会起業家15名のプロフィールは、こちらをご覧下さい。

 

そして、今回派遣された15名のもう一つの特徴は、平均年齢が30.6歳と若い世代であるということです。この15名の皆さんの様子を見ていて、強く印象に残ったことが2つあります。

 

ひとつは、「日本の若い世代は内向きばかりではない!」ということです。

最近の日本では、海外への留学者数の減少等、「若者が内向き志向で元気がない」という指摘があちこちで聞かれます。ですが、今回の15名の社会起業家の皆さんは、そんな批判には全く当てはまらないような方々ばかりでした。

 

シンポジウムは全て英語で行われましたが、どの参加者も大勢の聴衆の前で自分の活動についてプレゼンテーションし、各国からの参加者とディスカッションしていました。また、シンポジウム後に行われたタイのソーシャル・エンタープライズの視察でも、疑問に思ったことは何でも質問し、また逆に、タイの現場の方に日本の現状を紹介するなど、自分から積極的に交流を深めている姿がとても印象的でした。

 

P1030263.gifもうひとつは、「交流の輪の広がり」です。今回の派遣事業を通し、各国からのシンポジウム参加者との間で、国境を越えた「国際ネットワーク」が広がったのはもちろんですが、それと同時に、日ごろは同じ日本にいて同じく社会起業家として活動していても、全く異なる分野で今まで接点がなかった者同士で、業種の壁を越えた「国内ネットワーク」の輪も広がりました。帰国後には、「障がい者向けの就職活動フェア×身だしなみ講習会」、「フィリピンの自立支援×美容職業訓練」、「生活困窮者支援×お洒落イベント」等、様々な異業種コラボレーションの計画が持ち上がっているという嬉しい連絡も受けています。

 

国際交流基金は、これからも、社会をより良い方向へ変えていこうと活動している社会起業家の皆さんを応援していきたいと考えています。

           

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