調和的社会実現に向けた日本の取り組みを発信ーロシア・ウズベキスタンでユニバーサルファッションを紹介

藤原 花
国際交流基金 日本研究・知的交流部
欧州・中東・アフリカチーム

 

国際交流基金では、海外における日本研究を促進し、多様化・多面化する現代日本への理解を深めるために、様々な分野の学者や専門家を海外へ派遣しセミナーを開催しています。今回タシケントとモスクワで行われたセミナーでは、「調和的社会実現に向けた日本の取り組み:ユニバーサルファッションを例として」というテーマのもと、今後日本と世界が目指すべき社会のあり方について考えました。

求められているユニバーサルファッション
「Студенты все в восторге! (学生達はみんな大喜びですよ!)」
2010年10月10日、ウズベキスタンのタシケント国立繊維・軽工業大学で行われたユニバーサルファッションについての講演会の後、副学長が語ってくれました。実際、その日は日曜の午前中にも関わらず学生を中心に110名程が集まり、講師の織田晃教授(杉野服飾大学)と若手デザイナー澤柳直志さんを取り囲んで質問や写真撮影が途絶えませんでした。

講演1-3.jpgユニバーサルファッションとは、もともと身障者や高齢者などが簡単に着脱できる服として開発されたものですが、そのまま健常者にとってもおしゃれで優しい服となるデザインのことです。伸縮性の高い生地を使ったり、大きくて掴みやすいボタンを使ったり、一着の中に着易さを実現する工夫が詰め込まれており、日本人の繊細な技術が生きるものでもあります。織田教授によれば、近年の服職業界では、安くて流行の服を大量に生産するファストファッションから、着る人の個性やニーズに合わせた上質で長く着られるオーダーメードに重点が移りつつあるということ。ユニバーサルファッションも、ニーズに応えた服作りの形態として注目されます。また、そうした潮流を背景に日本の若者も、「次々と新しいモノが手に入る未来」より「ひとつのモノを使い継いでいく未来」を望ましいと考える、つまりサステナブルな社会を志向する傾向にあることがアンケート調査の結果やスライド資料を使って分かりやすく解説されました。

講演1-4.jpgのサムネール画像あらゆる人が暮らしやすい未来へ
講演2-2.jpgウズベキスタンの学生は、日本の状況と自分達を比べながら熱心に講義を聴いてくれました。アンケートには「(ファッション業界が出すゴミの問題を知って)環境に関わるテーマは深刻でとても興味深かった」、「普段気づかないものに目を向けさせてくれた」「日本・ヨーロッパのファッション事情に比べて、自分たちはまだ保守的な国ではないかと思った」「こういったセミナーをもっと大学で行って欲しい」といった感想が寄せられ、今回のテーマは深い印象を残したようです。なにより好奇心にきらきら輝く瞳には伸びていく国の勢いを感じました。

「ウズベキスタンはこれから日本の経済を追い抜くかもしれない。だからこそ、経済が先に発達してしまった国がどういう問題を抱え、どういう生活・消費意識の変化を迎えているか興味をもって欲しい」と織田教授が話されたように、私たちは互いの経験を共有し、国を超えてあらゆる人が暮らしやすい社会を作るため協力していきたいと思います。

ホールガーメント.jpgセミナーでは澤柳さんのデザインした服も紹介されました。
注目されたのは、なんと一本の糸から編み上げたドレス。ホールガーメントという国産技術を使っています。製造過程にゴミが出ず、ニットなのでどんな体型の人も着られます。澤柳さんによる説明の最中には会場から拍手が起き、講演後も多くの参加者が触り心地を試したり、裏返したりして作品を眺めたりしていました。
 この後、織田教授と澤柳さんはウズベキスタン・日本人材開発センターとモスクワ国立繊維大学へ巡回して講演を行い、全てのセミナーは大盛況のうちに終了しました。

Page top▲