H22国際交流基金賞-受賞者の視点から再発見する、日本の文化と魅力

大野 由希子
国際交流基金
情報センター
 

国際交流基金では、設立の翌年である1973年以来、国際文化交流に顕著な貢献があり、引き続き影響力が大きいとされる個人・団体に「国際交流基金賞」を授賞してきました。

sv_025.jpg今年度の受賞者は、映画評論家の佐藤忠男さん(文化芸術部門)、デリー大学前教授のサヴィトリ・ヴィシュワナタンさん(日本語部門/インド)、そして、ヘブライ大学名誉教授のベン=アミー・シロニーさん(日本研究部門/イスラエル)でした。

ここでは、日本ではあまり知られていない、海外のお二人をご紹介したいと思います。

ヴィシュワナタンさんは、インドにおける日本研究とそsv_024.jpgの基礎となる日本語教育をインドに根付かせた功労者なのですが、日本研究、そして日本語の勉強をはじめたのは30歳とのこと。実際にお会いしてみると、小柄でとてもチャーミングな女性。実は10年ぶりに来日されたのですが、日本、そして日本人を理解する上で、ことばが重要であるとの信念のもと、毎日、インターネットで日本語の新聞を読み、日本語で考えるということを自分に課している方でした。大学で教えていらっしゃったときには、「授業中はすべて日本語」と、厳しく学生を指導されていたそうです。

10月25日に経団連会館で行われた授賞式では、流暢な日本語で語ってくれました。
「私事になりますが、日本研究を始めたのは30歳の時でございました。それから日本語も勉強し始めましたので、苦労もございましたが、曲がりなりにも日本語が習得できましたことは、その後、日本研究を進めていく上でも、また、日本人、更には日本そのものをより親しく感じ、接していく上でも、大変役に立ったと思っております。私は、日本の文献、資料の原本に直接当たり、日本の関係者と対話することに努めて参りました。」

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シロニーさんは、日本研究の第一人者で、日本の近・現代史や天皇制の研究でも知られています。ヘブライ大学で日本に関する授業を行っていたときには、毎年500人以上の学生を集めたという人気教授。授賞式や講演会にも多くのご友人がつめかけてきました。
ヘブライ大学で修士論文を執筆されたあと、1965年に文部省の奨学金で、初来日されたシロニーさんですが、「東京オリンピックの翌年で、日本が貧乏だったけれども楽観的で明るかった時期でした。(アルバイトをせずに)勉強に専念できる環境を与えてくれたことに、常に感謝している。」と話していました。

シロニーさんは、以下のように語ってくれました。
「国家の本当の偉大さと言うものは文化的偉業にあると私は思っております。この意味で日本は世界で偉大な国の一つであると考えております。日本の文化は、古来からのものであれ、近現代のものであれ、世界の素晴らしいものの一つであるからです。日本の皆さんはこの文化の側面で世界に貢献しているという事を高く評価されてしかるべきだと思っております。そしてこのことは決して忘れ去られるべきではない重要な事であると信じております。」

_MG_8479.JPGのサムネール画像ヴィシュワナタンさんもシロニーさんも、日本の文献、資料の原本を直接読み、そして、人々と話しながら、日本、そして日本人を理解しようと、絶え間のない努力をされてきたことが伝わってくるスピーチでした。そして、日本人がときに忘れてしまいそうになる、日本の歴史、文化、そして魅力について熱く語るその姿に、観客も魅了されました。

ヴィシュワナタンさんは10月30日に、シロニーさんは11月4日に無事に帰国されたのですが、国際交流基金賞の事務局スタッフは、大きな事業が終わってほっとすると同時に、お二人の笑顔にしばらく会えないことを寂しく感じています。

国際交流基金の「動画スクウェア」にて、「2010年度 国際交流基金賞授賞式」と「受賞記念講演会(佐藤忠男氏)」の映像をご覧になれます。


 


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