雑誌『をちこち(遠近)』
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若手職人が初挑戦! 和菓子の魅力を東南アジアへ【前半】

蜜屋本舗 明神宜之
吉はし 吉橋慶祐
香雲堂本店 小泉直哉



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2012年2月11日から15日、日本の伝統の味であり芸術ともいわれる和菓子を紹介するために、タイ(バンコク)、マレーシア(クアラルンプール)、フィリピン(マニラ)の3カ国3都市にて、全国和菓子協会推薦の若手和菓子職人が紹介イベントを開催しました。
http://www.jpf.go.jp/j/culture/human/dispatch/supportlist23_o_s.html

●お知らせ 東南アジアでの和菓子紹介イベントについて、明神氏、小泉氏、吉橋氏による帰国報告会を開催します。
日時:2012年5月29日(火)18:30~20:30(開場18:00)
会場:国際交流基金JFIC
東京都新宿区四谷4-4-1
http://www.jpf.go.jp/j/culture/new/1205/05-01.html





――海外で和菓子を紹介するのは、みなさん初めての経験だと伺いました。

明神:海外での講演の話をいただいたときは、海外の人たちが和菓子に対してどんな反応をするのか楽しみな反面、和菓子業界ひいては日本の代表として行くのでプレッシャーを感じ、期待と不安が入り混じった気持ちでした。
3人とも初めての経験なので、とにかく自分たちの持っている力を最大限に出して臨もうと思い、事前の準備に力を入れました。
母校・東京製菓学校の先生にアドバイスや海外講演の経験談を聞きに行ったり、基金のバンコク、クアラルンプール、マニラ事務所の方々に協力いただいて現地のお菓子情報を集めたりしました。イベントの内容についても、3人で何度もやり取りを重ね、方向性を決めました。
3カ国ともほとんど一般の方を対象としたイベントだったので、心がけたのは、和菓子について深く掘り下げるというより、広く紹介すること。また、より多くの和菓子に触れてもらうために、実演以外にも展示をしたり試食を用意したりしました。
一番こだわったのは和菓子の味です。できるだけ本物の味を知ってもらうために、餡などの材料を日本から持参しました。重くて運ぶのに苦労しましたが、試食で参加者のみなさんが和菓子を美味しそうに食べている姿を見た時は、その苦労を忘れるくらい嬉しかったです。

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(左)打菓子を参加者に勧める吉橋氏、(右)展示用の和菓子を準備する3人


――現地のイベントでは、どのように和菓子を紹介されましたか?

明神:レクチャー&デモンストレーション(以下、レクデモ)では、まずパワーポイントを使って和菓子の歴史、材料、芸術性などを紹介した後、はさみ菊、上生菓子、打菓子(和三盆)、焼菓子(どら焼き)作りの実演を行い、その後、試食、質疑応答という流れでした。
 ワークショップでも冒頭で和菓子についての紹介を行った後、参加者に上生菓子の金団(きんとん)、ヘラ菊、どら焼き作りを実際に体験していただいた後、試食、質疑応答という流れでした。
 また家庭でも和菓子作りを挑戦できるよう、参加者全員に英語または現地語に翻訳したどら焼きのレシピを配布しました。
吉橋:試食では、どら焼き、最中、落雁、水羊羹、寒氷(かんごおり)を配りました。量は多めだったと思いますが、東南アジアの人は甘いもの好きだそうで、試食用の和菓子も好評を博し、ほとんど残さず召し上がっていただけました。
寒氷は、今回の事業のために、事前に日本で作ってきたもので、和菓子に親しみを持ってもらえるように東南アジアでよく用いられる「ココナッツミルク」を加えて風味付けしました。
小泉:各会場とも、作業の動線、仕込み場所と会場の距離、空調の具合などが異なるので、イベント前日の夜に3人で話し合って毎回アレンジを加えました。
東南アジアは暑い気候なので、どら焼きに関して言うと、仕込んでからレクデモ開始までの間に、合わせた生地が死んでしまう恐れがありました。そうならないために、卵や水などの材料を冷やして使用したり生地に少量の粉末油脂を加えたりして、本番でも良い状態になるように工夫しました。


――最初の訪問国タイでのイベントはいかがでしたか?

小泉:タイ・バンコクでは、レクデモを2日間行いました。会場は、エンポリアムデパートの催事スペースで、会場の中央には日本庭園も設営されており、日本文化を紹介するにはこの上ない環境でした。吹き抜けの会場だったので、正面席だけではなく、2階、3階からもお客様が見てくれたのが分かりました。週末午後のイベントということで、来場者も非常に多く、とにかくたくさんの人の中で行った印象です。
ステージ真上に設置された大型のテレビモニターを通して、多くの人に和菓子作りの細かい作業を見ていただけたことは、非常に良かったと思います。
初日は不安な気持ちのほうが大きかったですが、みなさんの喜んでいる顔を見ているうちに自然と緊張がほぐれていきました。
吉橋:想像以上に来場者が多く、プレッシャーを感じました。こんな時にベテラン経験者がいてくれればとも思いました。
イベントは、話し声が飛び交う賑やかな雰囲気になるかと思いきや、集中して見ていただいていたようで、全体的に静かに進行していったと思います。意外に若い人の参加が多かったです。
小泉:バンコクでは、レクデモが終わった後に、上生菓子の金団とどら焼き作りのミニワークショップも行いました。予想以上の希望者が集まり、また途中でテレビ取材が入ったため、希望者全員に体験してもらうことはできませんでしたが、タイの人の和菓子に対する興味や関心の高さが実感できました。
吉橋:ミニワークショップでは、レクデモ時にはあまり見られなかった驚きの表情や楽しげな声が飛び交っていたのが印象に残っています。

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バンコクでのレクデモの様子


――レクデモ終了後、現地の方々とも交流されたようですね。

明神:たくさんの方と写真を一緒に撮りました。なかにはFacebookを通じて、この時撮った写真を送ってくれる人もいて、おかげでFacebookの「友達」が一気に増えました(笑)。
吉橋:帰国後、石川県タイ友好協会の会長から和菓子紹介イベントの記事が載ったバンコク週報のコピーと感謝のお手紙を頂戴しました。また、この時のイベントで知り合った人が、バンコクでの告知記事とお土産を持って店まで尋ねて来てくださり、感動しました。
小泉:メディア取材も多数あり、地元紙の紙面を飾ったり、インターネットで取り上げられたりしました。「和菓子をこれから将来にどう伝えていきたいか」などの質問が多く、「若い世代に本物の美味しい餡子を食べてもらいたい」「しっかりと美味しい味を受け継いでいきたい」などと回答しました。

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バンコクの会場にて


――2カ国目のマレーシアでのイベントはいかがでしたか? タイと雰囲気は異なりましたか?

小泉:マレーシア・クアラルンプールでは、ワークショップとレクデモを1日ずつ計2日間行いました。ワークショップは20名弱、レクデモは50名弱の参加で、日本好き、お菓子好きな人が集まっていた印象です。平日の午後ということもあり、主婦層の参加が多いように感じました。
会場となった日本料理レストラン「勘八」は、おしゃれな内装で常にお客さんが食事をしている繁盛店です。スタッフ、料理長とも日本人の方で、作業がとてもやりやすかったです。
レストラン内でのイベントだったので、参加者との距離が近く、また教えやすい人数だったため、タイの時のような緊張はなく、両日とも和菓子の説明が細かい部分まで出来ました。
ワークショップでは、作業台にスポットライトが常に当たっていたため、錬り切りがライトの熱で柔らかくなってしまい、手にべたついて作業がしにくい状態になり、実演で少し慌てたことを覚えています。しかし、参加者が和菓子に興味を持ってくれていることが実感できて嬉しかったです。みなさん器用に、金団、ヘラ菊を作り上げていました。
レクデモは2時間半と長かったのですが、途中で帰る人はいませんでした。実演時の写真を撮ったり、熱心にメモを取ったりする姿を見て、真剣に説明を聞いていただけているのがよく分かりました。
吉橋:2日目あたりから、通訳さんとの掛け合いにも慣れてきたように思います。説明するにも、なるべく平易な言葉で、言いたいことを短くまとめると良いと分かってきました。
マレーシアでは実演中にもよく質問がありました。また、参加者どうしが話し合うような場面も多々あり、和菓子のことをよく知りたいという熱意を強く感じました。
1つ残念だったのは、ワークショップで進行が遅れてしまい、最後に抹茶を点てる時間が無くなったことです。参加者に抹茶と和菓子を一緒に味わっていただく機会が作れませんでした。


――どんな質問が多かったですか?

小泉:タイでは和菓子の歴史についての文化的な質問が多かったのですが、マレーシアでは女性の参加が多かったせいか、「練り切りの作り方」「どら焼きの餡の種類」など実際に作る視点からの質問が多かったです。

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クアラルンプールでのワークショップの様子

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クアラルンプールでのレクデモの様子


――マレーシアではテレビ出演もされたそうですね。

明神:"Hot Shot"という朝の情報番組に出演しました。ぶっつけ本番で、どんな質問をされるのか不安はありましたが、司会者が和菓子や和菓子職人に対する素朴な疑問を投げかけてくれたので、テレビを見ている人にも和菓子の魅力が伝わったのではないかと思います。展示用の和菓子をスタジオに持参したところ、特に工芸菓子の繊細な作りに大変驚いていました。

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マレーシアの国営放送RTM(TV2)の朝の情報番組にて和菓子を紹介



●続きは 6/1 UP
フィリピンや取り入れたい東南アジアの食材について





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左より、吉橋慶祐、小泉直哉、明神宜之

■プロフィール
明神宜之
1982年生まれ。東京製菓学校和菓子科卒業。広島・呉銘菓「蜜饅頭」で知られる「蜜屋本舗」勤務。日本菓子協会東和会最優秀技術会長賞(年間グランプリ)。全国和菓子協会認定「優秀和菓子職」

吉橋慶祐
1982年生まれ。東京製菓学校和菓子科卒業。日本三大菓子処の1つ金沢を代表する和菓子店「吉はし菓子所」勤務

小泉直哉
1982年生まれ。東京製菓学校和菓子科卒業。歴史の街・足利の創業百余年の老舗和菓子店「香雲堂本店」勤務




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