雑誌『をちこち(遠近)』
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山海塾ロシアツアーレポート

山海塾舞踏手
松岡大



私は2005年より山海塾に舞踏手として参加しています。今回は山海塾にとって14年ぶりのロシアツアーということでしたが、私にとってはロシアを訪れる初めての機会でしたので、出発前から未知なる大国への期待感を膨らませると同時に、普段ツアーで頻繁に訪れる国々に比べて具体的なイメージが及ばない部分が多々あり、いつもとは異なる緊張感に包まれながらツアーに臨みました。

ロシアと言えば、ボリショイバレエが世界的に有名ですが、そのボリショイ劇場のすぐ目と鼻の先のロシアアカデミー青年劇場にて、山海塾「とばり」のモスクワ公演が行われました。その際には、劇場の外壁に広報の為の大きなバナーが掲げられ、そしてまたメディアの取材が多く寄せるなど、現地の人々に非常に高い関心を持って頂きました。そういった中で、山海塾の舞台が日本独自の文化としてだけでなく、普遍的なレベルで人々の心を惹きつけるものとして紹介されているのを感じ、とても嬉しく思いました。

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モスクワにて、ロシアアカデミー青年劇場外壁に飾られたバナー
(2012年5月23日、24日 モスクワ公演)


一見して普段は厳しい表情を守り続けるロシア人が、終演後はとても好奇心に満ちあふれた目を輝かせながら、舞台についての質問を投げかけてくる姿が印象に残っています。このようにダイレクトに反応してもらうと、逆にこちら側も相手の中に何かを探り出したくなってしまいます。ロシアの人々が私たちの身体に見いだすものは何だろうか?歴史を重ねたモスクワの街並を眺めながら思ったのは、人々がその生活様式や文化の中で継承してきたものが、どこかで私たちの身体とも繋がっているのではないかということです。ボルシチやセリョートカ(にしんのオイル漬け)、サーラ(豚肉の塩漬け)などのロシア料理に舌鼓を打ちながら、自分のからだが少しずつ街に馴染んでいくのを感じました。他のメンバーもタイトなツアースケジュールの中、節々でのロシアとの良き出会いに、楽しげな表情を垣間見せていました。

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モスクワの新聞に掲載された公演写真

モスクワの次に、ロシア第2の都市サンクトペテルブルクを訪れました。個人的にはここで白夜を初めて体験したことが強烈な思い出です。午前2時過ぎ頃まで外が明るかったので、それはやはり何だか奇妙な感覚でした。サンクトペテルブルクは本来雨の多い都市らしいのですが、私たちが訪れた時期はちょうど雨が降らず、何時になっても日が暮れず、さらには建都記念日も重なって、街全体がお祭りムードでした。何でも、現地の人々は、冬はこれと真逆の状態を強いられるために、白夜の時期に1年分のエネルギーを発散するそうです。想像するだけで「身が震える」話を聞いて、こんな時期に来られて幸せだ、心底そう思いました(笑)。

公演最終日に、在サンクトペテルブルク日本総領事にお招き頂いた食事会では、武道を例として、ロシア国内にて日本文化が広く浸透し始めていることを教えて頂きました。
日本文化のブランディングという観点においても、舞踏がより大きな可能性を持ち得えるのではないか。思いがけない数多くの発見の中、特にそんな思いに駆られた今回のツアーでした。

今回のロシア滞在にて、在ロシア日本大使館、在サンクトペテルブルク総領事館そして国際交流基金の方々に大変お世話になりました。主催のチギリさん、劇場スタッフや通訳の方など含め、多くの方々のお気遣いやサポートのお陰で、モスクワ、サンクトペテルブルクともに公演を成功させることができました。
関係者の皆様、そして公演にご来場頂いた皆様に、改めて御礼を申し上げます。





sankaijuku01.jpg 松岡大(まつおか だい)
1982年生まれ。
上智大学比較文化学科卒業。桑沢デザイン研究所空間デザイン科卒業。2005年より山海塾に入り、現在主要作品のツアーに参加している。2008年より、ソロ活動を開始。様々な企画を立ち上げながら、継続的な活動を行っている。
http://daimatsuoka.com




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