JF便り<日本語教育編・20号> 日本語国際センター設立20周年~記念講演会・式典のご報告

日本語国際センター



国際交流基金(ジャパンファウンデーション)では、海外で活躍する日本語教師等のための訪日研修プログラムや、日本語学習者及び教師のための教材・リソース等を制作する専門機関として、日本語国際センターを運営しています。平成元(1989)年7月の設立以来、埼玉県さいたま市(設立当時は浦和市)の地で活動を続けてきた日本語国際センターは、今年で設立20周年を迎えることができました。
2009年10月9日、日本語国際センターの設立20周年を記念して講演会及び式典を実施しました。

講演は、平成21(2009)年度国際交流基金賞日本語部門を受賞した全米日本語教師会連合(Alliance of Associations of Teachers of Japanese, 通称AATJ)のスーザン・シュミット事務局長にお願いしました。講演タイトルは「アメリカにおける日本語教育とAATJの活動」。20世紀後半より本格化した米国での日本語教育の歴史、その中で学習者数や学習動機の大きな変化があり、それらに伴って、日本語教師たちがどのように多様な問題を抱えるようになったかという現状が、具体的なデータとともに明らかにされました。そして、状況を改善していくためにAATJが取り組んできた活動を紹介いただきました。

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スーザン・シュミット事務局長

具体的には、さまざまな外国語教科の全米レベルのガイドラインづくり(The National Standards in Foreign Language Education Project)に参画したことや、高校在学時に大学の単位が先行取得可能となるAdvanced Placement Program(AP)の日本コースとテスト開発に関わったこと、そして、日本語教師たちへの情報・リソースの提供、講座・セミナーの実施、といった取り組みです。

AATJと日本語国際センターは2000年度より共催事業として、米国の現職日本語教師のための訪日研修事業を実施してきました。米国における日本語教師たちの間のネットワークを拡大・強化することに貢献してきたAATJのシュミット事務局長に、国際交流基金賞日本語部門受賞記念、そして日本語国際センター設立20周年記念事業としてご講演いただけたことは、私たちジャパンファウンデーションにとって大変喜ばしいことでした。

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シュミット事務局長が講演の中で述べた「町にひとりしかいない日本語の先生でも、全国、全世界の日本語教師の一員であるという認識をもてることが必要です」「一番大切なことは、職場がどこであれ、生徒がだれであれ、教師全員がお互いに話し合い助け合うことです」というメッセージは、米国のみならず、世界各国で教壇にたつ多くの日本語教師の方々を力強く勇気付けるものであったと思います。

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講演当日はたくさんの方々のご来場をいただき、日本語国際センターで研修を受けている30カ国の日本語教師の方々も講演会に参加しました。講演終了後、会場からは「アメリカの日本語教師たちが抱える問題は、自分の国(インドネシア)の場合と同じだと知って驚いた。教師たちの社会的地位の向上に向けて、アメリカではどんな対策をとっているのかより具体的に教えてほしい」「学習者は増えるが教師は増えない中、どんな対応をしているのか」といったコメントや質問が出されていました。

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講演会につづき、設立20周年記念式典を行ないました。式典においては、AATJの活動紹介や日本語国際センターのこれまでの20年間に制作してきた日本語教材の展示をご覧いただき、講演出席者を含む多くの方々にお集まりいただきました。埼玉県の上田清司知事、さいたま市の清水勇人市長からお祝いのメッセージを頂戴したほか、かつて日本語国際センターで実施していた外交官日本語研修プログラムのOBである現・駐日モンゴル大使レンツェンドー・ジグジッド閣下もご来場くださいました。設立以来、日本語国際センターを支えてくださった近隣地域の皆様もご一緒に設立20周年の節目を迎えることができ、今後も引き続き、海外の日本語教育のさらなる充実化を目標に歩んでいく決意を新たにいたしました。

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駐日モンゴル大使レンツェンドー・ジグジッド閣下


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