雑誌『をちこち(遠近)』
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アンドロイド「ジェミノイドF」がタイ語で演じた『さようなら』(後編)

バンコク日本文化センター
瀧田あゆみ



アンドロイドとの稽古

2012年3月、いよいよアンドロイドがバンコクに到着し、続いて平田オリザ氏、技術者の力石武信氏、演出アシスタントの渡辺美奈子氏、アンドロイド役(日本語)の女優井上美奈子氏が到着。タイ人女優を交えての稽古が始まりました。

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(左)タイ人女優との顔合わせ、(右)演技指導をする平田氏

アンドロイドの動きは、女優が別室から遠隔操作をします。女優の動き(演技)を、コンピューターのセンサーで認知し投影するシステムで、女優が上を向いたらアンドロイドも上を向き、女優がタイ語を話せば、その唇の動きをセンサーが読み取って、その通りに口を動かし、スピーカーから声が出ます。笑顔や怒り顔は、ボタンで操作。タイ語と日本語では、口の動き方が全く異なるので、アンドロイドも雰囲気が全然違います。

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コントロール室でアンドロイドの操作の練習をするタイ人女優

タイ人の女優にとって、アンドロイド役としてロボットの操作を行うのは生まれて初めてのこと。舞台上の人間役の女優と、呼吸を合わせながら、セリフと操作を自然にできるように、真剣に何度も練習を重ねていました。

ちなみにこのアンドロイドは、コンピューターがあれば世界どこからでも操作が可能で、石黒氏は実際に、海外出張中に、自分のアンドロイドを使って日本で授業をしたことがあるそうです。



本公演の反響

Android_Geminoid_F2_03.jpg この公演では、タイ語版の公演と日本語版の公演(各20分、英語字幕付)をセットとして、全10回上演しましたが、毎回ほぼ満席。報道と口コミも手伝ってどんどん来場者が増えたため、3日目からは客席を2列分増やすことになりました。アーティスト、演劇分野の専門家から、工学系の学生、日本語学習者まで幅広い層が観劇し、来場者は延べ約3,000名となりました。タイ人女優が日本語でも演じたことから、ロボット工学と演劇のみならず、日本語教育と演劇という異なる分野間のコラボレーションとなりました。

タイのメディアからも特に注目度が高く、大手新聞の1面に2度も掲載されたほか、テレビでも公演期間中に、地上波、衛星放送と多数の報道がありました。テレビを視聴した人を数えると、このアンドロイド演劇『さようなら』のバンコク公演に接した人は軽く1万人を超えるでしょう。

タイでのテレビ報道の様子は、YouTubeでもご覧になれます。

ThaiPBS(タイ公共放送)
http://www.youtube.com/watch?v=lwDHJPYO1XU&feature=player_embedded

Digi Life(タイの衛星放送)
http://www.youtube.com/watch?v=j1sTxm70yms
* 35分40秒頃から、石黒浩氏のインタビューが13分弱流れます。

One World (タイの衛星放送)
http://www.frequency.com/video/oneworld-16-03-55/37517691

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(左)タイの2大英字紙のひとつ、The Nationの1面にも「悲しみにたたずむロボット」として大きく掲載。
(右)こちらはBangkok Post紙。平田氏曰く「この写真の中に何人アンドロイドがいるでしょう」


舞台後には、パーウィット氏のコーディネートにより、平田氏、石黒氏、技術者の力石氏らによるトークと質疑応答も延べ5回行いました。「ジェミノイドF」もいくつかの回のトークに参加。観客の中には、「アンドロイドが観客の質問に答える様子を見て、さらに人間らしく見え、本当に驚いた」という声も聞かれました。平田・石黒両氏には、「どうしてロボットを演劇に使おうと思ったのか」「開発にどのくらいの時間とお金がかかったか」「これからの人間の未来はどうなるか」など活発な質問が飛びました。

  また、本講演にあわせて、平田氏による、チュラロンコン大学日本語学科でのワークショップも行ったほか、プロを目指す若手劇作家向きに戯曲ワークショップも開催しました。(日本語学科での戯曲ワークショップの様子については、「平田オリザ氏ワークショップ 演劇手法を日本語教育に利用する」と題して、バンコクの情報ウェブサイト「ニッポンの壺」に掲載されています。)

3月16日には、石黒氏によるチュラロンコン大学工学部での講演会も実施。「人間とは何か」「人間はコミュニケーションの中で、何を持って人間らしいと思うのか」という問いかけを研究するなかで、アンドロイドを開発したという石黒氏。自身のアンドロイドを使って世界から注目を浴び、「世界が尊敬する日本人100人」(ニューズウィーク日本版/2009年)に選出など、最先端のロボット研究者として世界的に注目されています。講義には300名を超える生徒が熱心に聞き入り、アレンジを担当した工学部のウィッタヤー教授(自身も、ロボコンの審査員を務める)から「石黒教授は、世界で他に誰も成し遂げたことのないイノベーションを示してくれた。学生に夢を与えた。」と謝辞が寄せられました。

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石黒氏とアンドロイド

日タイ合同アンドロイド演劇を終えて、関係者の間には大きな絆が生まれました。共催者のチュラロンコン大学演劇学科、日本語学科、工学科も、今後も交流を続けたいと言ってくださっています。また、観客として参加したタイの商業施設関係者がアンドロイドの再誘致に興味を示しています。本事業をきっかけに、今後もいろんな形で、交流が持続・発展していく予感がし、またそうなることを願っています。

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日タイ合同アンドロイド演劇『さようなら』バンコク公演

日付:2012年3月15日~18日
会場:チュラロンコン大学演劇学科ホール
共催:チュラロンコン大学、大阪大学劇団「青年団」国際交流基金バンコク日本文化センター

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