雑誌『をちこち(遠近)』
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米国人とアジア人の「ダブル」としての誇りを持てる教育に取り組む

セイヤー みどり(特定非営利活動法人 アメラジアンスクール・イン・オキナワ 校長・理事長)



 国際交流基金(ジャパンファウンデーション)は、国際文化交流を通じて、日本と海外の市民同士の結びつきや連携を深め、相互の知恵やアイディア、情報を交換し、ともに考える団体に「国際交流基金地球市民賞」をお贈りしています。2014年度は、アメラジアンスクール・イン・オキナワなら国際映画祭実行委員会、プラス・アーツの3団体が受賞しました。アメラジアンスクール・イン・オキナワは、米国人とアジア人の両親から生まれたことで、自らのアイデンティティーの確立に悩む「アメラジアン」の子供たち にアメラジアンとしての誇りを与え、将来の就学・就業の機会を大幅に増やすバイリンガル教育を提供、多様な文化を理解、尊重し、豊かで活気のある地域やコミュニティを築いています。そのことが高く評 価され、2014年度の授賞が決定しました。



 アメラジアンスクール・イン・オキナワは、アメリカ人とアジア人の両親を持つアメラジアンの子どもたちに、英語と日本語で学ぶ「ダブルの教育」を提供しています。

 日本における米軍専用施設面積の75%を抱える沖縄では、アメラジアンの子どもたちが今でも毎年約300人生まれていると統計局のデータで伝えられています。1960~80年代の沖縄では、アメラジアンいわゆる"ハーフ"の子どもたちの養子縁組を社会福祉事務所が主に行っていました。1980年代になり無国籍の子どもたちの国籍取得、国民健康保険の不加入などの問題が、沖縄からの声として国会で取り上げられたことにより、1985年国籍法が改正され、父親からだけではなく、母親からも国籍がもらえるようになっています。

 1990年代後半、アメラジアンの子どもたちを持つ母親たちは、子どもたちにハーフではなく、ダブルの教育をと声を挙げました。アメラジアンスクールは1998年6月に開校し、今年で17年目になります。アメラジアンの子どもたちをめぐる問題は、生存権から教育権へと時代の流れとともに変わってきました。

amerasian_school_in_okinawa01.jpg  アメラジアンクールを設立した17年前、私たちには何もありませんでした。私たちにあったのは情熱と信念だけでした。あの頃の私たちには今日の日を想像するどころか、日々をこなしていくことで精一杯でした。周りには、きっといつかアメラジアンスクールは数年で自然消滅するだろうと批判的な方々、疑いの目で見ている方々がいました。

 日々綱渡りのような運営の中、社会的認知、理解を得るのは決して容易なことではありませんでした。途中で辞めてしまおうと何度も考えましたが、ここまで継続し成長できたのは、子どもたちはもちろんですが、教職員、保護者、そして未熟であった私たちを専門的な立場で支えてくださった弁護士の先生方、教育学の専門家、経済界などのたくさんの支援者のおかげだと感謝しています。

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授賞の挨拶をするアメラジアンスクール・イン・オキナワ校長・理事長のセイヤー みどり氏

 私たちは、どの子どもたちにも豊かな可能性があり、その可能性を伸ばしてあげることが大人の責任であるとこれまで頑張ってきました。アメラジアンの子どもたちへの教育には大きな社会的意義があること、そしてこれまで頑張って積み重ねて来たことを地球市民賞に値すると認めてくださった国際交流基金地球市民賞審査員、理事の方々に感謝申し上げます。これからもこの受賞に恥じないように地球市民を育ててゆきたいと思っております。

 これまで、アメラジアンスクールの教育権は個人の問題と扱われてきました。しかし、17年間続けてきた努力と情熱、皆様の支援によって今、ローカルからグローバル教育へと実を結ぼうとしています。

 最後に今後の抱負として、多様な文化の中で自分の可能性を存分に発揮し、社会の役に立てる子どもたちを育てていきたいと思います。

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国際交流基金理事長の安藤裕康から賞状を受け取るセイヤー みどり氏
(授賞式での写真 撮影:相川 健一)


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(左)生徒の集合写真
(右)スクールフェスティバルでエイサーを披露




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アメラジアンの子を持つ保護者たちによって創設された。日本と米国の文化を等しく尊重する「ダブル」として誇りを持って成長し、将来の進学や就職の機会が増えるよう、英語、日本語によるバイリンガルでの教育の機会を提供している。また、沖縄の伝統文化を体験する交流会や社会人として世界で活躍している卒業生らを招いて講演会を開催し自らのアイデンティティーの理解を深めている。※アメラジアン(AmerAsian)は、米国(American)とアジア人(Asian)の両親を持つ人。



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