雑誌『をちこち(遠近)』
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次世代の映画人を育成し、奈良の風景を世界に発信

河瀨直美(特定非営利活動法人 なら国際映画祭実行委員会理事長)



 国際交流基金(ジャパンファウンデーション)は、国際文化交流を通じて、日本と海外の市民同士の結びつきや連携を深め、相互の知恵やアイディア、情報を交換し、ともに考える団体に「国際交流基金地球市民賞」をお贈りしています。創立30周年を迎える2014年度は、109件の推薦・応募があり、選考の結果、なら国際映画祭実行委員会、アメラジアンスクール・イン・オキナワプラス・アーツが受賞しました。
 これら3団体の業績を讃えるとともに、今後一層の発展と活躍を願って、授賞式が2015年3月4日に国際交流基金 JFICホール「さくら」で開催されました。なら国際映画祭実行委員会の活動紹介とともに、授賞式の様子をお伝えします。

(2015年3月4日 国際交流基金 JFICホール「さくら」での授賞式より)



 私が奈良で映画をつくりはじめて、その作品を国際映画祭という場で上映していただく機会が海外で増えたとき、自分のふるさとで映画祭が開催できないかと思いました。
 外にでて海外にいかなくても私たちの国、自分たちの町で交流ができれば、自分たちの地域の宝物も伝えることができる、と思ったのがきっかけです。

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なら国際映画祭実行委員会理事長の河瀨直美氏による授賞スピーチ

 日本には、世界の課題解決の手がかりになるような精神文化があります。自然への畏敬の心、多様な命の尊重などを基調とした、世界の幸せに役立てることができるような精神文化です。この独特の精神風土の原点は、我が国のまほろば大和奈良で生まれたのだと学びました。そして、時の政治との絶妙な距離感を保った結果、途切れることなく紡がれ続けた人々の暮らしの中に遠い時代の人々の心が残っています。これが、ふるさと奈良の先人から受け継いだ宝物です。
 奈良で国際映画祭をするのであれば、世界の未来に役立つものにしようと考え、この地球の次代を担う若い人々の活躍の場にしたいと思いました。そこで、コンペティション部門には長編2作目までの新人監督作品の中から作品を選ぶことにし、将来有望なグランプリ監督には我が国特有の精神文化に寄り添いながら、地域の人々とともに映画製作を担っていただくNARAtiveプロジェクトを立ち上げました。これまで4作品を製作してきましたが、いずれの現場でも新しい出逢いと気づきがたくさんあり、製作の課程そのものが諸外国との国際交流の場となりました。ここで生まれた作品を通じて、人類の普遍的な幸せに役立つ新たな価値観を世界へ提出しようとしています。今年はキューバ人監督と共に奈良県で撮影を行う予定です。日本とキューバの架け橋の一つになれることを楽しみにしています。

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地元の小学生を対象にした映像制作ワークショップ

 他にも学生映画の祭典や小学生をはじめとする学生たちとの映像ワークショップを通じて、映画制作の担い手の育成、そして我が国の精神文化を活かした文化創造に取り組んでいます。しかし、世界に誇れる文化を保持していても、それを伝えるために必要な言葉の壁は日本人の前に大きく高くそびえたっています。ましてや表現の世界では海外の人々に見ていただける状態にするまでのコストや人脈の確保は必須です。そこで私たちの支援として、ここで上映されたすべての学生作品への英語字幕制作を実施し、日本人学生監督が海外の扉を開く大きなステップとなることに注力しています。

 本受賞はこれから先の私たちの活動も含めての評価だと認識しています。これからも、この賞に恥じないよう、一歩一歩、変わらず丁寧に活動を続けていきたいと思います。

 なら国際映画祭実行委員会は、次世代を担う若手の映画人の育成を映画祭の主目的としながら、奈良での映画製作が出来る権利を付与することを通じて地域活性化に貢献。また、奈良に住む人々の日常生活の営みの尊さと美しい風土を、フィルムの形で世界に発信しています。世界の映画人と交流しながら、数多くの若者や市民ボランティアの支えによって運営されており、 文化・芸術による地域づくりのモデルとなる活動であることが高く評価されました。


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国際交流基金理事長の安藤裕康から賞状を受け取る河瀬直美氏
(授賞式での写真 撮影:相川 健一)


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(左)第三回なら国際映画祭(2014 年開催)のオープニング「レッドカーペット」
(右)毎月開催のコミュニティシネマ「ならシネマテーク」ゲスト:是枝裕和監督




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映画館のない奈良市内で、世界で活躍できる次世代の映画人育成を目的とした「なら国際映画祭」を隔年で開催。上映やイベントの開催場所として、奈良特有の歴史的な建物を活用している。また、関連事業として若者や子どもたちを対象に、奈良の暮らしが体験できるよう映画製作やワークショップを企画、運営。映画作品を通して、奈良に住む普通の人々と交流しながら若者たちに映画製作が出来る権利を与え、かつ奈良に住む普通の人々の営みと尊さ、そして美しい奈良の風土を世界に発信している。



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