雑誌『をちこち(遠近)』
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東北から、アジアへの扉がひらかれた12日間

友廣 裕一(一般社団法人つむぎや 代表/リソース・コーディネーター)



国際交流基金(ジャパンファウンデーション)は、2015年12月1日から12日まで、ASEAN諸国で活躍する若手デザイナー7名を招へいし、三陸地方・陸前高田周辺エリアで「デザイナーズ・イン・レジデンス(DOOR to ASIA)」を実施しました。アジア各国の共通課題である「地域創生」と「自然災害」を背景に、「地域に貢献するデザイン」と「自然災害時のデザイナーの役割」を探求しながら、同地方事業者の協力のもと地域資源を活用したデザインを制作しました。本事業の運営に携わりプログラムにも同行された一般社団法人つむぎやの友廣裕一氏に、本事業の様子とその成果について寄稿いただきました。

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八木澤商店の醤油製造工程を真剣に聞くデザイナーたち

「個室で聞いていたら、泣いたかもしれないよ」
 これは現地報告会のあと、ある事業者さんが語ってくれた言葉です。陸前高田を拠点に過ごした10日間の成果は、この言葉に現れているのかもしれません。それほどに濃密で、お互いを尊重しながら、より深く理解しようと向き合い続けた日々でした。
 今回はASEAN5カ国(タイ、フィリピン、マレーシア、シンガポール、インドネシア)から7名の新進気鋭の若手デザイナーが来日。そこに日本人デザイナーやデザイン関係者も合流してのプログラムは、はじめと終わりの2日は東京での視察や事例紹介にあてられ、中10日間は陸前高田市に震災後完成した「箱根山テラス」という、山の上に浮かぶようなテラスが印象的な滞在施設を拠点に過ごしました。

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プログラムの拠点となった陸前高田市にある「箱根山テラス」

 前半3日間は、岩手県陸前高田市と大船渡市、宮城県気仙沼市に本拠を構える4つの事業者さんのもとにデザイナーがそれぞれ滞在。社長のカバン持ちのような感覚で打合せ等に同行するところもあれば、工場の日常的な仕事を手伝うところ、ひたすら会話を続けたところなど「四社四様」でしたが、いずれもその会社や社長の日常を体感することで、商品がつくられるプロセスはもちろん、その背景にある強いこだわりや哲学などを存分にインプットしました。

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石渡商店のフカヒレ製造工程について説明を受けるデザイナーたち

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Three Peaksのりんご園での収穫体験後、事業者のこだわりに耳を傾けるデザイナーたち

 そして後半の3日間は、お世話になった事業者さんの商品を「自分の国で売るとしたら、どのようなコミュニケーションデザインをすべきか」というお題で、それぞれに制作する時間へ。それまでは明るく冗談を言い合っていたデザイナーたちが、一気にプロフェッショナルの顔に変化し、部屋にはどことなく緊張感が漂っていました。なかには食事もとらずに部屋にこもったり、共同作業場で朝まで過ごすような人まで出てきました。そこには、大好きになったその人やその商品のために力になりたい。震災以降ふんばってきた事業者さんたちに、世界への可能性の扉をひらくきっかけを提供したい、という想いが溢れていました。

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(左・右)自国での商品販売を想定し、デザインコミュニケーションを考える

 今回、アジアのデザイナーに対しては、自然災害・地方創生におけるデザイナーの役割を学んでもらうという目的がありました。日本と同じく、東南アジアは自然災害が頻発する地域です。同様に、著しい都市化と地方の衰退を目の当たりにする彼らにとって、復興や地方創生というコンセプトで、クリエイティブの力を活かした取り組みが増えている日本の昨今の動きには強い関心を寄せていました。
 一方で、震災から4年半が経過した東北においては、復旧作業は進んだものの、どことない閉塞感が漂っています。震災以前から人口減少が進み、日々縮小してきた市場に対して、なにか手を打ちたいと考えている人は多く、いつかアジアに出たいとは考えているけれど、一向に具体的な"アジア"の顔は見えない。どんな街で、どんな顔をした、どんなことを考えている人を相手にするのか。もしも具体的な一人と深くつながり、理解しあえたなら、そこからじわりじわりと互いが透けて見えてくるはず。そんな想いから、抽象的な"地域"などではなく、できるだけミクロな"個と個"が深くつながれるプログラムを目指しました。
 すばらしいメンバーにも恵まれ、これら両者の想いがぴったりと重なりあい、文頭の言葉が自然に出てくるほど、我々の想像を超えるプログラムになりました。アジアはおろか、海外展開は考えていなかったという事業者さんが、プログラム終了から1ヶ月経たずしてシンガポールとインドネシアのデザイナーに会いに行き、これからの展開を話し合ってきたというのには驚きました。これを機に、東北とアジアの間にある"DOOR"がひらかれるきっかけになればと願っています。

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アンカーコーヒーで参加デザイナーと同店代表による記念撮影

写真撮影:新田理恵

DOOR to ASIA
*プログラム滞在中のレポートや、デザインされた制作物をダウンロードしてご覧いただけます。

[参加デザイナー]
Zinnia Nizar-Sompie
Ampersand Studio
Cocinero
Adgi
Adityayoga
Inlandaer Design Buro
Jonathan Yuen
Jonathan Yuen
Mali Chaturachinda
be>our>friend studio
Thirada Raungpaka
be>our>friend studio
Dan Matutina
Plus63 Design Co.
Driv Loo
Little Ideas Everyday

[受入事業者]
石渡商店
オノデラコーポレーション(アンカーコーヒー)
Three Peaks
八木澤商店





from_tohoku_12days07.jpg 友廣 裕一(ともひろ ゆういち)
一般社団法人つむぎや 代表/リソース・コーディネーター。1984年大阪生まれ。早稲田大学卒業後、日本全国70以上の農山漁村を訪ねる旅へ。東日本大震災後は石巻市・牡鹿半島の女性たちと鹿角を使ったアクセサリー「OCICA」など事業やメディアの運営を行う。



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