雑誌『をちこち(遠近)』
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「李秀賢氏記念韓国青少年訪日研修」レポート
―日韓の懸け橋を目指して―

2020.2.28

2001年に東京・JR新大久保駅で線路に転落した日本人を助けようとして韓国人留学生らが命を落としてから19年がたちます。国際交流基金関西国際センターは、亡くなった李秀賢(イ・スヒョン)さんの遺志を継ぎ、将来の日韓交流を担う韓国の高校生を2002年から毎年招いて研修を行っています。
2020年1~2月、韓国全国から選ばれた高校生17名は約2週間の日程で大阪・京都と東京に滞在し、日本の高校生・大学生との交流や一般家庭への訪問などを通じて、日本の文化・社会への理解を深めました。

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李さんが命を落とした新大久保駅で献花する韓国人研修生たち

2001年1月26日夜、JR新大久保駅でホームから転落した日本人男性を助けようと、2人の男性が線路に飛び降りました。1人は日本人カメラマンの関根史郎さん(当時47歳)、そしてもう1人が、韓国人留学生の李秀賢さん(当時26歳)でした。進入してきた電車に間に合わず、3人とも命を落としてしまいましたが、この痛ましい事故は当時、日韓両国で大きく報道され、国を超えた李さんの勇気ある行動に賞賛の声が集まりました。

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新大久保駅構内に設置されている顕彰碑

李さんは韓国の高麗大学を卒業後、2000年1月に来日。将来、日韓の懸け橋となる仕事に就きたいと、東京・日暮里の日本語学校で日本語を学んでいました。
国際交流基金は2002年から、李さんの人道的かつ勇気ある行動を顕彰し、李さんの遺志を継いで将来の日韓の懸け橋となることを志す韓国人高校生を日本に招く「李秀賢氏記念韓国青少年訪日研修」を行い、これまでに300名以上の韓国人研修生が参加しています。

韓国全国から選ばれた男子生徒7人、女子生徒10人の参加者は、大阪の高校や家庭訪問等の研修を終え、2月4日、事故が起きた新大久保駅を訪れました。ホームへと続く階段の壁に設置されている顕彰碑に花を手向け、事故の現場で黙とうをささげました。

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李さんらが男性を助けようとした現場付近で黙とうをささげた

追悼後、研修団長の金成手(キム・ソンス)さん(高校3年/釜山出身)は、「李さんはとても勇気のある方だと常々思っていましたが、実際にこうして現場で黙とうしてみて、李さんのことをより深く知ることができました」と流ちょうな日本語で語りました。
副団長の朴慧民(パク・ヘミン)さん(高校2年/大邱出身)も日本語で、「この事故のことを本で読んで知ったとき、他の国の人を助けるという勇気ある行動が私にはできるかな、と(疑問でした)。李さんの行動に改めて感動するとともに、このような機会を得て研修に参加させていただけたことに感謝しています」と話していました。

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研修団副団長の朴さん(左)と、団長の金さん(右)

新大久保駅の訪問後には、李さんが通っていた赤門会日本語学校を訪問しました。李さんを記念する公園を含めた校内施設の見学や、あたたかく歓迎してくださった学校の先生・職員の皆さんとの交流を通じて、李さんの生前の活躍に想いをはせました。

2日半にわたる東京研修ではほかに、東京都庁や江戸東京博物館、浅草などの観光地を訪れ、日本の多様性についても学びました。また、国際交流基金本部を訪問し、全員が日本語で自己紹介をしました。

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国際交流基金本部を訪問し、職員たちと記念撮影

なかには、中学時代に国際交流基金ソウル日本文化センターで開催されていた日本文化を学ぶプログラムに参加していた生徒が、当時のセンター長との再会を喜ぶ場面もありました。国際交流基金の職員には、2005年に開催した「第4回李秀賢氏記念韓国青少年訪日研修」の修了生もおり、参加者たちは、国際交流基金の仕事や日本で働く先輩の話に熱心に聞き入っていました。

そのほか、研修生たちは京都の立命館大学や関西国際センター近くの大阪府立佐野高校を訪れ、同世代の学生たちと交流を深めました。帰国前日、佐野高生や家庭訪問を受け入れた地元の方々が見守る中、研修生たちは研修成果の発表会を開催しました。
「アニメの中の日本の高校生は髪の色がカラフルで、おしゃれは自由なのかと思っていたけれど、実際は黒髪の子が多くて校則も厳しそうだった。書道や茶道のような伝統的な部活も活発なのに驚いた」「伏見稲荷の鳥居や北野天満宮の絵馬を見て、それに込められた多くの人々の願いや祈りを感じることができた。自国の文化や歴史を大切にしている姿が印象的だった」「東京とソウルは交通が便利で、皆忙しくて本音と建前がちょっと違うところ、釜山と大阪は方言が有名で、みんな親しく近づいてくるところが似ていた」等、それぞれの観点から印象に残ったことを堂々と発表しました。

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チーム発表後、質問に答える研修生たち

その後の歓送会のあいさつで、団長の金さんは「研修に参加して、かけがえのない多くの友人と出会い、共に勉強したり、遊んだりしたことは絶対に忘れないでしょう」と振り返りました。研修生たちからは、日本で受け入れてくれた方々への感謝の気持ちを表そうと、日本の歌を歌うサプライズプレゼントも。笑顔で別れを惜しみつつ、再会を誓い合いました。

「民間で交流する機会がもっと増えて、国を明るくする若者たちがこういう研修に参加して、お互いにさらに仲が良くなったらいいなと思います」(朴さん)
李さんと同じく「日韓の懸け橋になりたい」という志を持つ若者たち。今回李さんと同じ場所を訪れ、多くの人と交流することで、その思いをより強くしたようでした。

取材・写真:瀨川洋子(国際交流基金コミュニケーションセンター)
文・瀨川洋子、寺江瞳(国際交流基金コミュニケーションセンター)

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