雑誌『をちこち(遠近)』
バックナンバー

バックナンバー一覧

JF便り 日本研究・知的交流編 20号 国際交流基金・欧州評議会主催「インターカルチュラル・シティと多文化共生」開催報告

日本研究・知的交流部 欧州・中東・アフリカチーム(担当:嶋根)


jf-stu20_01.png

去る2009年10月31日から11月7日にかけて、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)と欧州評議会は、欧州評議会の進める「インターカルチュラル・シティ・プログラム」の参加都市から、ヌーシャテル市(スイス)、パトラ市(ギリシャ)、ティルブルフ市(オランダ)の代表、それに、「インターカルチュラル・シティ」の提唱者であるフィル・ウッドを初めとする専門家を日本に招へいし、日本の地方における「多文化共生」の実例として可児市・美濃加茂市(岐阜県)と神戸市(兵庫県)を視察した後、東京にてシンポジウムを行ないました。


>>報告書(和文)はこちら (PDFファイル4.35MB)
>>報告書(英文)はこちら (PDFファイル4.35MB)


◆概要
jf-stu20_02.jpg外国人住民をはじめとする住民の多様性を、脅威や解決すべき課題ではなく寧ろ好機と捉え、街の活力(ダイナミズム)、革新(イノベーション)、創造(クリエイティビティ)、成長の源泉とする新しい都市政策として、いま欧州では「インターカルチュラル・シティ」という考え方が注目されています。欧州評議会が中心となって進められている「インターカルチュラル・シティ・プログラム」では、趣旨に賛同する欧州12都市が参加して、お互いの知見・経験を交換しています。

翻って日本では、地域社会において外国人住民と如何にして共に生きていくかという課題をめぐり、「多文化共生」という考え方のもと、様々な政策が進められています。その中には、外国人住民の地域社会への積極的参加を促してその地域の強みにするといった、「インターカルチュラル・シティ」に合通じるような試みも散見されます。

しかし、これら日欧それぞれの地域社会における統合政策の試みは、お互いにお互いの試みや経験を知ることがありませんでした。

そこで今回の招へいと続くシンポジウムでは、そんな日欧の関係者の間に橋を架け、お互いにより広い視野、或いは異なる視点を交換・共有し、将来の交流の第一歩となることを目指しました。


◆参加者一覧
インターカルチュラル・シティ・プログラム参加都市より
・オランダ
/ ティルブルフ市 Mr. Gon MEVIS(ホン・メヴィス)副市長、市議
・スイス/ ヌーシャテル市Mr. Thomas FACCHINETTI(トマ・ファシネッティ)市議、州社会統合担当代表
・ギリシャ/ パトラ市 Mr. Panagiotis KITROU(パナギオティス・キトゥロウ)市議

欧州評議会より
・Ms. Gabriella Battaini-Dragoni(ガブリエラ・バッタイニ=ドラゴーニ)教育、文化・遺産、若者・スポーツ局長、欧州評議会文化間対話事務局長
・Ms. Irena Guidikova(イレナ・ギディコヴァ)欧州評議会インターカルチュラル・シティ・プロジェクト・マネージャー

専門家
・英国/ Mr. Phil WOOD(フィル・ウッド)フィル・ウッドLtd代表、『インターカルチュラル・シティ』共著者
・ウクライナ/ Mr. Olexandr BUTSENKO(オレクサンドル・ブツェンコ)「文化を通じての民主主義」センター長
・フランス/ Mr. Pierre SALAMA(ピエール・サラマ)パリ第XIII大学教授、専門:統合政策
・オランダ/ Mr. Thijs MALMBERG(テイス・マルムベールフ)大手オランダ政府・地方政府コンサルタント



jf-stu20_03.png◆地方視察 (2009年11月1日から5日)

可児市(岐阜県)
・可児市多文化共生フェスティバル
・可児市多文化共生センター「フレビア」
・可児市役所
・可児市外国人児童対象適応指導教室「ばら教室KANI」
・可児市文化創造センターala


美濃加茂市(岐阜県)
・美濃加茂市公民館
・中山道会館


神戸市(兵庫県)
・神戸市役所
・NPO法人定住外国人支援センター
・NPO法人たかとりコミュニティセンター
・海外移住と文化の交流センター




jf-stu20_04.jpg◆シンポジウム (2009年11月6日)
先ず導入として、欧州評議会のガブリエラ・バッタイニ=ドラゴーニ氏から、欧州評議会という組織について、またその欧州評議会の採用した『異文化間対話白書』についてご説明がありました。

またフィル・ウッド氏より「インターカルチュラル・シティ」の概念について、文化的な違いをそのまま尊重するとともに多様な市民の絶え間ない交流を通じて生まれる都市のダイナミズムと、その実現のための具体的な都市政策のツールについて、ご説明がありました。

続いて北脇保之教授(東京外国語大学多言語・多文化教育研究センター所長/教授)の司会によるシンポジウムとなり、先ずホン・メヴィス氏が、日本の外国人住民も今後増加する可能性が高く、既に割合として多くの外国人住民を有する欧州のこれまでの経験や失敗から学べることは多い、と述べた上で、今回の視察旅行から見えてきた日本の良い事例、問題のある事例、それに対する提言という3段階に分けての感想がありました。

またウッド氏よりも視察旅行を通じての感想として、多文化共生のダイナミクスはインターカルチュラル・シティと相通じる、その一方で日本にいる外国人に対してよりチャンスを与えることがこれからの日本に必要だとの指摘がありました。

これを受けて、坂井嘉已氏(美濃加茂市市民協働部生涯学習課課長兼中央公民館長)より外国人集住都市会議の紹介や都市における"顔の見える関係"の重要性について、また吉富志津代氏(NPO法人たかとりコミュニティーセンター常務理事)より多様な市民の活動のベースとなるコミュニティビジネスの重要性について、コメントがありました。

それから司会の北脇教授の提案に従い、第一に外国人市民の存在を好機とする具体策、第二に外国人住民だけでなく受け入れる側の社会全体の変化が必要である点、第三に人権の擁護という三点について、会場からの質問も交えて議論が交わされました。

会場のアンケートでは、欧州の様子が分かり非常に意義深かったとの感想がある一方で、論点も多く議論を尽くすべきなのに時間が短すぎたとの感想もあり、このテーマに対する深い関心が伺われるとともに、今後も引き続き日欧での議論を深める必要を感じました。


Page top▲

Twitter - @Japanfoundation