JF便り<日本語教育編・24号> 『JF日本語教育スタンダード2010』を発表しました。

日本語国際センター事業化開発チーム


国際交流基金(ジャパン・ファウンデーション)(以下、「基金」)は、1972年の設立以来、海外における日本語教育の普及に取り組んでいます。昨今日本語教育が多様化する中で、基金は、「JF日本語教育スタンダード」(以下、「JFスタンダード」)の開発に2005年から取り組み、2010年3月に、『JF日本語教育スタンダード2010』として発表しました。

基金は、世界中で日本語を通じて相互理解をするためには、日本語を使って何がどのようにできるかという能力(課題遂行の能力)と、さまざまな文化に触れることで視野を広げ他者の文化を理解し尊重する能力(異文化理解の能力)が必要であると考えています。
この「相互理解のための日本語」を実現するために、日本語の教え方、学び方、学習成果の評価の仕方を考えるためのツールである「JFスタンダード」の開発を行ってきました。『JF日本語教育スタンダード2010』では、CEFRの言語熟達度のレベルにもとづき、日本語の熟達度を「~できる(「Can-do」)」という形式の文で示し、「みんなの「Can-do」サイト」で提供しています。

※CEFR・・・Common European Framework of Reference for Languages: Learning, teaching, assessment(『外国語の学習、教授、評価のためのヨーロッパ共通参照枠』)

多種多様な日本語教育の現場がいわば同じものさしを使うことで、世界中のどこで日本語を勉強していても / 教えていても、今自分が学んでいる / 教えているレベルがどこにあるかを知ることができるようになります。

『JF日本語教育スタンダード2010』については、以下のサイトから詳細情報をご覧いただけます。


■JF日本語教育スタンダード

「JF日本語教育スタンダードとは何か」についての説明を見ることができます。

このサイトから『JF日本語教育スタンダード2010』と『JF日本語教育スタンダード2010 利用者ガイドブック』がPDF版でダウンロードできます(無料)。
前者では、JF日本語教育スタンダードの概要や簡単な活用方法を知ることができます。 後者は、JF日本語教育スタンダードのより詳しい活用方法を示したもので、日本語教師向けの内容となっています。

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JF日本語教育スタンダードサイト
http://jfstandard.jp


jf-edu24-2.gif今回発表した『JF日本語教育スタンダード2010』では、「相互理解のための日本語」に必要な3つのポイント、(1)「JFスタンダードの木」、(2)「Can-do」、(3)「ポートフォリオ」を示しました。
  『JF日本語教育スタンダード2010』は、コースデザイン、授業設計、教材開発など、「Can-do」を使った実践をサポートします。


(1)「JFスタンダードの木」とは、言語活動と言語能力の関係を整理し、一本の木で表現したものです。日本語を使ってどんなことができるのか、したいのか、そのために必要な言語能力(語彙、文法、社会言語能力など)は何かを考えるのに役立ちます。

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JFスタンダードの木


(2)「Can-do」とは、日本語で「~ができる」という形式で示した文です。それらをCEFRの6つのレベルで示しました。6つのレベルは、基礎段階(A1、A2)、自立段階(B1、B2)、熟達段階(C1、C2)で、ヨーロッパ共通参照枠(CEFR※)に準じています。どのような文法を知っているか、単語や漢字をいくつ知っているかというのではなく、それらを使って何ができるのかという点から日本語学習を考えるのに役立ちます。「Can-do」のデータベースであるみんなの「Can-do」サイト(以下で詳しく説明します)では、言語活動別やレベル別にいろいろな「Can-do」を検索することができます。

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6つのレベル


(3)「ポートフォリオ」は、学習者ひとりひとりの学習過程を記録し、保存するものです。。また、学習成果を評価し、言語的・文化的体験を記録し振り返ることによって、課題遂行能力と異文化理解能力を育成することができます。進学や留学、就職などで人が移動する際にも、それまでの学習成果や熟達度を正確に伝達できるようになります。


■みんなの「Can-do」サイト
上記(2)で紹介したみんなの「Can-do」サイトは、日本語で何がどれだけできるかを「~ができる」という文で示した「Can-do」のデータベースです。コースデザイン、授業設計、教材開発など、Can-doを使った実践をサポートします。ユーザー登録が必要ですが「みんなの教材サイト」のユーザーIDとパスワードでもログインできます。
2010年5月現在では、「CEFR Can-do」の493件すべてと、CEFR Can-doを参照して国際交流基金が独自に作成した「JF Can-do」を6つのレベルのうちの2レベル(A2、B1レベル)合わせて173件提供しています。2010年度中に、A1レベルとB2レベルを新たに追加する予定です。

jf-edu24-6.gifのサムネール画像
みんなの「Can-do」サイト
http://jfstandard.jp/cando

国際交流基金は、今後、利用者の皆さんからの意見等をふまえながら、「みんなの「Can-do」サイト」の拡充、JF日本語教育スタンダードに基づいた教材の開発や教育実践例の蓄積、JF日本語教育スタンダードの内容充実を行っていきます。


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