東アフリカの日本語教育の発展をめざして~第一回ケニア日本語教育会議

蟻末 淳
国際交流基金日本語専門家
ケニヤッタ大学派遣)



japanese_east_africa02.jpg japanese_east_africa03.jpg  皆さんはケニアと言ったら、何を想像するでしょうか。きっと、地平線まで続く大草原をかけるライオンやゾウ、そして誇り高いマサイ族...それもケニアの一面です。実際、首都のナイロビのすぐ近くの国立公園にもキリンやシマウマ、そしてライオンなどが悠々と生活しています。
 しかし、その一方で、ナイロビは東アフリカ随一の国際都市です。野生動物が住むすぐ近くに、高層ビルを擁する人口約300万の大都市が広がっています。
 そして、実は、ケニアはサハラ以南のアフリカでは有数の日本語教育発展国です。約1,000名が日本語を学習しています。

japanese_east_africa01.jpg japanese_east_africa04.jpg  そんなケニアで、サハラ以南アフリカ初の日本語教育会議、第一回ケニア日本語教育会議が、2012年8月4日(土)、5日(日)に開催されました(主催:ケニア日本語教師会(JALTAK)、共催:在ケニア日本国大使館広報文化センター、助成:国際交流基金)。
テーマは「授業を作る -- コースデザインから評価まで--」で、基調講演に伊東祐郎・東京外国語大学留学生日本語教育センター教授を、ワークショップには国際交流基金カイロ日本文化センターの村上吉文日本語上級専門家をお招きし、ケニア国内はもとより、エチオピア・ウガンダ・マダガスカルなど東アフリカの日本語教育実施国から邦人教員、現地教員、計24名が参加しました。また、タンザニア・スーダンからも、代読でしたが参加がありました。


日本語教育関係の学会や研究会がない東アフリカ
 1日目の午前に行われた伊東先生の基調講演は、「授業とテスト」と題し、授業を効率的に構成するために、どのようにテストを作成し、目標設定していくか、授業とテストの密接な関係についての内容でした。
伊東先生の、ユーモアをまじえながら優しく語りかける話し方は、とてもわかりやすく、あまり日本語で講演を聞く機会がない、ノン・ネイティブ教師(日本語を母語としない現地教師)にとっても、日本語の勉強にもなったと大変評判がよかったです。また、伊東先生は、講演後の参加者の質問にも、一つ一つ丁寧に答えてくださり、お人柄が感じられました。
 午後の研究発表・実践報告は、E-learning、観光日本語、スワヒリ語・英語・日本語の対照研究など、バラエティーに富み、日本語教育関係の学会や研究会がない東アフリカでは貴重な機会となりました。

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(左)伊東祐郎教授、(右)研究発表・実践報告の様子

 夜は、会場近くのローカルレストランに移動して、ケニア名物のニャマチョマを楽しみました。ニャマチョマとはケニア風炭火焼き肉のこと。スワヒリ語でニャマは肉、チョマは焼く、という意味です。特に山羊のニャマチョマがケニアでは人気です。塩だけでシンプルにいただきます。山羊のニャマチョマに加え、鶏肉のニャマチョマ、ケニアの主食のウガリ(トウモロコシの粉を水でこねたもの)、ケニア風サラダのカチュンバリなど、代表的なケニア料理に、参加者は舌鼓を打ちました。土曜日の夜で、屋外レストランは超満員。地元の音楽がかかる、騒がしい中での懇親会となりましたが、ケニアの週末の夜の雰囲気を楽しみました。

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ケニア名物のニャマチョマ


東アフリカの日本語教育事情を共有する
 2日目の午前は村上吉文日本語上級専門家のワークショップ「はじめての教案」。授業の一般的な流れを踏まえ、実際に教案を作ってみるワークショップです。参加者は4人程のグループで教案を作成し、他の教員を学習者に見立て、実際に授業をしてみるという、大変実践的なワークショップでした。ケニア人やマダガスカル人が日本人に日本語を教える珍しい光景も見られました。学習者役は、時々、わざと間違ってみて、先生の反応を見たり。そこかしこから笑いが聞こえる、楽しいワークショップになりました。
 昼休みを挟んで、2日目の午後、最終セッションは、「東アフリカの日本語教育」です。まず、参加各国の日本語教育事情が報告されました。東アフリカでは、日本語教育機関が一つしかない国が多く(ウガンダ・タンザニア・スーダン・エチオピア)、エチオピアを除き、それらの国(及びケニア)にはJICAのhttp://www.jica.go.jp/volunteer/application/seinen/シニアボランティアが派遣されています。

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ワークショップの様子

 一方、ケニア・マダガスカルでは学習者も1,000名〜1,500名を数え、日本語学習機関も大学等の高等教育機関の他、初・中等教育機関、私立の語学学校などがあります。
 しかし、東アフリカはいずれの国も、初級学習者が中心であり、実質的に専門課程がないなど、まだまだ日本語教育は発展途上の状態です。

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(左)ケニヤッタ大学、(右)ケニヤッタ大学授業の様子

 各国代表の報告により、状況を共有した後、座談会が行われました。伊東祐郎教授、村上吉文専門家に、これまでの豊富な経験を踏まえ、様々なアドバイスをいただきながら、各国の日本語教師が、約一時間半に渡り、話し合い、今後の協力を約束しました。
 このように、東アフリカの日本語教育関係者が一同に会し、専門家を交じえ、学び、話し合う機会は、初めてで、今後のネットワーク作り、教育の連携のために重要な一歩を記すことになりました。

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(左)伊東祐郎教授と村上吉文専門家、(右)座談会の様子

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各国代表と集合写真


日本語教育国・地域別情報
ケニア
http://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/survey/area/country/2014/kenya.html

エチオピア
http://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/survey/area/country/2014/ethiopia.html

ウガンダ
http://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/survey/area/country/2014/uganda.html

マダガスカル
http://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/survey/area/country/2014/madagascar.html

タンザニア
http://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/survey/area/country/2014/tanzania.html


ケニヤッタ大学への派遣専門家の仕事
日本語で世界にケニアを発信しよう
https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/teach/dispatch/voice/voice/chukintou/kenya/2012/report01.html

ケニア発日本語教育に向けて
https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/teach/dispatch/voice/voice/chukintou/kenya/2011/report01.html



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