第49回(2022年度)国際交流基金賞 
~差異を超える橋をかける~<1>
第49回(2022年度)国際交流基金賞 授賞式レポート

2023.3.22
【特集078】

特集「第49回(2022年度)国際交流基金賞~差異を超える橋をかける~」(特集概要はこちら
国際交流基金設立の翌年である1973(昭和48)年に始まり、今年で49回目を数える国際交流基金賞。毎年、学術や芸術等の文化活動を通じて、国際相互理解や国際友好親善にすぐれた功績を挙げ、引き続き活躍が期待される方々に贈られています。
これまでの受賞者は、バーナード・H・リーチ(陶芸家、1974年)、黒澤明(映画監督、1982年)、ドナルド・キーン(コロンビア大学教授/日本文学、1983年)、小澤征爾(指揮者、ボストン交響楽団音楽監督、1988年) 、宮崎駿(アニメーション映画監督、2005年)、村上春樹(作家/翻訳家、2012年)、蔡國強(現代美術家、2016年)等(敬称略、肩書は受賞当時)──とそうそうたる方々が名を連ねています。

今年度の栄えある受賞者は、ロベール・ルパージュ(俳優、脚本家、舞台・映画監督) [カナダ]、社団法人韓日協会 [韓国]、グナワン・モハマド(詩人、作家、画家) [インドネシア]の2氏1団体です。10月19日に受賞者も登壇して東京都内で行われた授賞式の模様を報告します。


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国際交流基金賞は、国際交流基金の事業の中でも最も歴史のあるものの一つであり、第48回までの受賞者・団体は世界34か国、200に上ります。
今年も国際交流基金が活動の柱としている「文化芸術交流」「日本語教育」「日本研究・知的交流」の3つのテーマに沿って、内外各界の有識者及び一般公募により推薦のあった74件から、有識者18名による選考委員会での議論を経て受賞者が決定しました。

10月19日、東京都内で開かれた授賞式には、受賞者・団体代表者のほか、国際交流基金の設立50周年を記念して、秋篠宮皇嗣同妃両殿下にご臨席いただくとともに、林芳正外務大臣にご臨席いただき、また、選考委員、関係者等約200人が集まりました。


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式では、秋篠宮皇嗣殿下からお言葉を頂きました。
お言葉へのリンク https://www.kunaicho.go.jp/page/okotoba/detail/91#496

「国際交流基金が設立から50年を迎えた記念すべき年にあたり、2022年度の国際交流基金賞授賞式に皆様とともに出席できましたことを誠にうれしく思います。そして、本日賞を受けられる、ロベール・ルパージュ氏、社団法人韓日協会、そしてグナワン・モハマド氏に心からお祝いを申し上げます。
 国際交流基金は、諸外国に日本への理解を深めてもらい、国際的な相互理解を増進するため、文化・芸術交流の促進や日本語教育と日本語学習の推進、さらには日本研究や国際対話の推進や支援を、広く世界の国と地域において進めてこられたと承知しております。
 私自身、これまで訪れた国々において、幾度となく、国際交流基金が関わってきた日本語教育や日本学研究を行っている機関を訪ねたり、同基金による展示を見学したりいたしました。また、国際交流基金賞や国際交流奨励賞を受賞した団体を訪れたこともありますが、そのどれもが印象深いものでした。中でも、日本語や日本学を専攻している学生のレベルが非常に高いことに、驚くとともに感銘を覚えました。また、日本研究に携わっている研究者が有する多様な視点に改めて気づく機会にもなりました。そして、そのような人たちが、それぞれの国と日本との距離をさらに縮める役割を果たしていることにも思いを致しました。
 1973年に始まった国際交流基金賞は、これまでの間、日本も含めて様々な国の個人や団体に贈呈されてきました。そして、そのことを契機として、受賞者の業績に光が当たり、それぞれの国への理解が深まったことと思います。これまで、国際交流基金の活動を支えてこられた皆様の熱意とご努力に深く敬意を表します。
 設立から50年を迎えた今日、国際社会における相互理解、文化交流の必要性はますます高まってきております。そのような状況において、国際交流基金が果たしていく役割は、今まで以上に重要なものとなってまいりましょう。今後も、関係者のご尽力により、多様な分野における文化交流がさらに発展することを願っております。
 おわりに、国際交流という幅広い分野において、専門性を活かして活動されている受賞者ならびに受賞団体の皆様の一層のご活躍を祈念し、私の挨拶といたします。」

さらに、林芳正外務大臣からご祝辞を頂きました。

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林外務大臣は、ここ数年、新型コロナウイルス感染症の拡大により、文化や芸術、そして国際交流も大きな影響を受けたものの、同時に、文化や芸術が私たちの心を潤す存在であり、人と人との交流の重要性を改めて認識する機会となったことに触れられました。
また、受賞者の方々が、文化や芸術、そして次世代を担う青少年の国際交流を通じて、日本、そして世界の人々の間に共感や信頼、友情をはぐくむ活動をされてきた、その御貢献に感謝と敬意を表されました。
さらに、本年が国際交流基金の設立50周年という節目であることにも言及され、今後も、国際交流基金を通じてはぐくまれる人と人との交流が日本と世界の更なる友情の架け橋となるよう期待が述べられました。

続いて、受賞者の方々と、その授賞理由についてご紹介がありました。
自身が舞台に立つ俳優で演出家、劇作家であるロベール・ルパージュ氏は、創作集団としてカナダで創設したエクス・マキナを率い、演劇、オペラ、映画そしてサーカスまでその活動領域は広範囲に及んでいます。特に、最新のテクノロジーを果敢に取り入れた独自の演出は、これまでの常識を覆すものとして世界から高い評価を受けています。日本との関わりも深く、広島を題材にした作品『太田川七つの流れ』等、演出作品の来日公演や、日本人アーティストとのコラボレーションを活発に行い、日本の舞台芸術界に大きな影響を及ぼしています。

jusho_04JP.jpg 国際交流基金の梅本和義理事長(左)と、ロベール・ルパージュ氏(右)

社団法人韓日協会は日韓両国の友好親善と共同繁栄を促進することを目的として1971年に設立され、その後今日に至るまで50年にわたり、日韓両国間の相互理解の基盤となる日本語教育分野において、青少年層を対象とした未来志向の地道な活動を続けています。
韓国の中高生を対象とした日本語学力コンテスト、大学生を対象とした日本語翻訳大会、「李秀賢記念事業」を毎年実施する等、若者の人材発掘・育成事業に関わってきました。また、日本留学&日本就職フェアの実施を通して若者のキャリア支援にも尽力しています。
このように長年にわたり青少年を対象とした多様な交流活動を通して日韓両国の相互理解・友好親善並びに人材育成の促進に貢献してきました。

jusho_05JP.jpg 社団法人韓日協会理事長の宋富永氏(右)

グナワン・モハマド氏は、ジャーナリストとして、市民活動家として、そして詩人や劇作家として、きわめて多面的な才能を放つインドネシアを代表する知識人であり、また同時代のアジアにおける知的巨人の一人です。グナワン氏は1971年に週刊誌テンポ(Tempo)を発刊し、インドネシアにおける自由と民主主義の重要性を訴え続けました。グナワン氏の活動は広く、詩や戯曲、そして美術等の分野でも多彩な能力を発揮し、文筆活動とともにアート全般の普及にも寄与してきました。日本との関係では、1997年に国際交流基金・国際文化会館共催のアジア・リーダーシップ・フェローとして来日し、それ以来さまざまな分野で関係が拡大しています。

jusho_06JP.jpg グナワン・モハマド氏(右)

式では、これまで受賞者とともにさまざまな分野で交流事業を進めてきた方々が受賞者の活動を紹介いたしました。

ルパージュ氏が総監督として指揮を執ったシルク・ドゥ・ソレイユの『トーテム』の制作現場で宮海彦氏(役者、農業エンターテイメント化プロジェクト「私農耕SHOW」代表、運動能力開発「Umi Room Fit」 代表)はルパージュ氏に相談した際、「Don't act, to be.(演じるのではない。なるんだ)」と声をかけられ、この言葉が生涯のテーマとなったと述べ、周りの人々の人生も一瞬で変えてしまうルパージュマジックとも言える、その素敵なお人柄についてご紹介いただきました。

社団法人韓日協会の活動については、長年、共に事業を実施してきた、独立行政法人日本学生支援機構理事の吉野利雄氏より、アジア地域を中心に14か国・地域で実施されている日本留学試験について、韓日協会がさまざまな工夫をすることにより、ソウルで最多の受験者数で実施となっていること、そして日本留学フェア等の開催にあたっては、日韓関係が難しい時期にあっても、冷静に事態を受け止めて、地道に日韓関係の改善に取り組んでこられたことに敬意を表していること、そして今後のさらなる活躍への期待が述べられました。

1997年に「アジア・リーダーシップ・フェロー・プログラム」でグナワン・モハマド氏が来日した際に担当した小川忠氏(跡見学園女子大学教授)からは、新型コロナウイルスのパンデミック発生直後、グナワン氏から「危機の時代にあって一番大切なのは若者たちの創造性、批判精神の育成で、それが自国優先主義、ポピュリズム、過激なイデオロギーに対抗する民主主義の血肉となる」と力説されたこと、そして、ジャカルタに文化施設サリハラ・コミュニティーを設立し、若手文化リーダーの育成に尽力されているとともに、文化交流の拠点となっていることが紹介されました。

続いて、受賞者によるスピーチが行われました。
ルパージュ氏は、17歳で初めて歌舞伎公演に触れて魅了され、その後プロフェッショナルとなってから、国際交流基金の招へいで初来日し、芸術面でさまざまな刺激を受け、中でも、破壊され不毛な地があるのだと思っていた広島が、不死鳥のごとく美しく甦った姿に驚き、後に7時間におよぶ叙事詩『太田川七つの流れ』の着想をもたらしたというエピソードが披露されました。その後も日本を再訪し、大勢の日本人アーティストと協力、共同して、多くの演劇やサーカスやミュージカルを制作したエピソードにも触れられ、これほど頻繁に日本へ招待いただいた理由は、日本の人々が自分の作品の普遍性に自己を見いだすからではと思い、そのことを誇らしく思っていると言及されました。

jusho_07JP.jpg 日本との交流について語るロベール・ルパージュ氏

社団法人韓日協会からは、宋富永理事長が「今日のようなグローバル時代において、韓日両国が平和と繁栄を目指して未来志向の青少年交流や教育交流をさらに深めて行くためには、私どものような民間団体や教育機関が今まで以上に多彩な努力を重ねることが大事であり、 私どもはいくつかの成すべき事業を地道に行っていますが、この度、国際交流基金賞という素晴らしい賞を頂くことになり心よりうれしく思います。この賞に励まされ、これからも韓日はもとより、アジア全域における共同繁栄と平和に少しでも貢献できるよう更に頑張ってまいりたい」と述べられました。

jusho_08JP.jpg 受賞の喜びを語る社団法人韓日協会の宋富永理事長

グナワン・モハマド氏は「この受賞は、インドネシアの作家・ジャーナリストとしての私の業績への惜しみない評価であり、感謝の念に堪えません。しかし、より重要なのは、この受賞が希望へのメッセージでもある」とし、あらゆる場所で、人々が宗教的、民族的、文化的なアイデンティティの純粋性を擁護し、「アイデンティティ政治」が広がる世界において、私たちの知的及び芸術的エネルギー(更に言えば、ユーモアの力)を結集して、「人類が共通して持っているもの」を作り出していく必要があるとし、この出発点として、ジャワ語の「他者」は「"liyan"(リヤン)」と言いますが、「人生を共有できる異なる存在」という意味も持つ、この言葉にこだわりたい、そして今回の受賞が、そのこだわりを更に後押ししてくれるでしょうと述べられました。

jusho_09JP.jpg 本受賞の意義について語るグナワン・モハマド氏

授賞式後、それぞれの受賞者は、これまでのご功績を称える多くの人々に囲まれ、ご歓談されました。

2022年11月30日
文:西納由美子(国際交流基金広報部)
撮影:ステージ

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