もうすぐ日本語能力試験!~ドイツ、インドネシア、台湾出身者が語る日本の言葉の魅力



 日本語能力試験(Japanese-Language Proficiency Test, JLPT)は、29年の歴史を持つ、日本語を母語としない人を対象とした世界最大規模の日本語能力を測る試験で、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)は、海外での試験実施を担当しています。
 2013年の第1回(7月)試験は、海外21の国・地域の101都市と日本国内の42都道府県で、7月7日に実施され、30万人近い日本語学習者が、日頃の日本語学習の成果を発揮します。
 試験直前の「応援」企画として、ドイツ、インドネシア、台湾出身で、現在は、日本で暮らすJLPT受験経験者3人に、日本の言葉や文化、JLPTについて語ってもらいました。

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左からラ・ペイウン、ラトナ・サリ、オリヴァ・キューネ

オリヴァ・キューネ(30)
ドイツ・ミュンスター出身。日本のマンガ、アニメが大好き。現在は早稲田大学大学院で沖縄文学について研究している。

ラトナ・サリ(29)
インドネシア・ジャカルタ出身。2008年に来日し、来月埼玉県の印刷会社に入社予定。日本とインドネシアのかけ橋になりたい。

ラ・ペイウン(30)
台湾・台北出身。台湾での会社員生活の後、2011年に日本へ。現在は東京で働く。週末は日本各地のお祭巡りで忙しい。



日本語を学ぶきっかけ
JLPT_Germany03.jpg オリヴァ・キューネ(以下「オリヴァ」) : ぼくは子どもの頃から日本のアニメやマンガが大好きだったんです。ドイツでは日本のアニメが日常的に放映されています。5歳の頃、「アルプスの少女ハイジ」がすごく好きだったんですが、当時はそれが日本のアニメとは知らずに見ていました。それが後から日本のものだとわかった時に、もっと日本のポップカルチャーについて知りたい、さらに、日本語や日本の伝統文化についても勉強したいと思うようになりました。

ラトナ・サリ(以下「ラトナ」) : アニメやドラマはインドネシアでも人気があります。アニメの「ドラえもん」や、テレビドラマの「おしん」など。日本人は主人公のおしんのようにがんばり屋でまじめなイメージを持っていました。

ラ・ペイウン(以下「ペイウン」) : 台湾でも私が高校生の頃、キムタク(木村拓哉)が出演する日本のドラマがはやりました。それと、台湾では日本の家電はとても人気があります。私の家でも、炊飯器、冷蔵庫、エアコンなど、子どもの頃から日本製の家電に囲まれて育ちました。私は家電のマニュアルが読めるようになりたくて、日本語の勉強を始めたんです。

一同 : へぇ~。



留学でも就職でもJLPT
JLPT_Germany04.jpg ペイウン : 最初は自分ひとりで勉強していて、本格的に日本語の勉強を始めたのは大学に入学してからです。

オリヴァ : ぼくも日本語の勉強を始めたのは大学に入ってからです。ドイツの学校では、日本語を勉強できる機会があまりありませんでした。

ペイウン : 私は大学で日本文学を学んでいたんですが、JLPTの1級(当時)に合格しなければ、卒業することができませんでした。

ラトナ : 私が来月から働く予定の日本の会社を受ける時も、JLPTの資格はとても重要でした。

ペイウン : 日本で仕事を探す時は、必ずといっていいほどJLPTの資格について聞かれますよね。

ラトナ : 日本で働くためにはJLPTの資格はパスポートの次に大切!

オリヴァ : 日本に留学する時、ぼくの場合はN2レベル以上を持っていることが必要でした。

ラトナ : 帰国して仕事を探す場合でも、インドネシアには日本企業が多いので、資格は重要です。取得しているレベルによってお給料にも差が出てきたりするので、周りの友達も一生懸命勉強しているんです。JLPTの資格を持っているとどこでも働ける、というくらい心強いですよ。

オリヴァ : ぼくはドイツの学校で学んだ日本語より、JLPTのために学んだ日本語の方がより実用的で、今の日本での生活にも役立っていると感じています。

ラトナ : 私も、JLPTの勉強を始めてから日本語のニュースが少しずつわかるようになってきました。



日本語の表現の面白さ
ペイウン : 日本語はあいまいな表現が多くて難しいです。働いていても、時々同僚が伝えたいことの意味がわからなくなる時があります。「そうかもしれません」って、一体どっちなの?って。

オリヴァ : そうですね。あと、ドイツ語や英語と違って、日本語は動詞が文章の最後にくるので、話を最後までちゃんと聞かないと相手の意図がわからなくなりますね。

JLPT_Germany05.jpg ラトナ : 私は擬態語や擬音語が面白くて大好きです。「ぴかぴか」と「きらきら」は、え?何が違いますか?って驚きました。

ペイウン : 台湾でも、「ぴかぴか」と「きらきら」のような違いはないです。

オリヴァ : ドイツ語にもないですね。でも、そういう微妙な表現の違いにこめられた気持ちはわかるような気がします。それをドイツ語に訳したら説明書のようにぼう大な文章になってしまうと思うんですが、それが日本語だとほんの一文におさまっているのがすごいなと思います。ぼくが日本語で好きなのは、手紙の最初や最後に入る、季節のあいさつです。夏の時期には「きびしい暑さが続きますね」など、他の季節にもそれぞれのあいさつがありますよね。

ラトナ : インドネシアには日本のような四季がないので、季節のあいさつのようなものはないです。

オリヴァ : ドイツには四季がありますが、手紙ではすぐに用件に入ります。でも、話し始める前に、まずそういうあいさつがある方が相手に親しみを感じます。私たちは今、同じ季節の中で生きているもの同士なんだという、相手とのつながりが深まるような感じがするんですよ。



日本は知るほど面白い
JLPT_Germany02.jpg ペイウン : 日本の四季は美しいです。春は桜、夏は花火、秋は紅葉、冬には雪が降る。季節ごとの違いとその変化を楽しんでいます。

オリヴァ : 住んでみないとわからないことってたくさんありますよね。ぼくは今の留学の前に少しだけ京都に滞在していたんですが、日本はどこに行っても京都のように、寺院や古くからの建物が集まっているのだと思っていました。東京の高層ビルが建ち並ぶ街並みは、京都の景色とはあまりに違っていて、カルチャーショックを受けました。

ラトナ : 私は前にホームステイをしていたんですが、ホームステイ先の人たちが、本当の家族のように接してくれて嬉しかったです。その時に教えてもらった日本人の考え方や礼儀などは、今もすごくためになっています。

ペイウン : 私は、地域ごとにこんなにたくさんのお祭があることを、日本に来るまで知りませんでした。

ラトナ : 私もです。インドネシアでは町内で行うようなお祭はないので、夏の間に近所の公園などで毎週のように行われる「盆踊り」にはびっくりしました。

オリヴァ : 日本の地域ごとの伝統や文化、歴史は知れば知るほど興味深いですよね。ぼくは今、日本の歴史小説やドラマに興味があります。今はN2を持っていて、日常会話や現代のドラマは理解できます。現在は、N1合格を目指して勉強市中です。NHKの大河ドラマが理解できるよう頑張ります!

* 本稿はJLPT通信2013(2013年1月発行)より転載。日本語学習者向けに、ふりがな付きで同内容がお読みになれます。



日本語能力試験とは
日本語能力試験は、原則として日本語を母語としない人を対象に、日本語能力を測定し、認定するための試験です。実力の測定だけでなく、進学、就職、昇給、昇進、資格認定への活用等、さまざまな目的で活用されています。日本国内では公益財団法人日本国際教育支援協会が、海外では国際交流基金が各地の実施機関の協力を得て開催しており、台湾では公益財団法人交流協会との共催で実施しています。
2013年は、7月7日(日)と12月1日(日)に実施されます。(どちらか片方のみ実施する都市もあります。)公式ウェブサイトでは試験実施都市一覧や問題例を公開中!



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