07「配給」という仕事

大山慶



前回予告したように、今回は僕のもう一つの仕事、「配給」についてお伝えしたいと思います。

作品を作り国際映画祭に参加するようになると、たくさんの短編アニメーション、短編映画に出合うことができます。コミカルなものからシリアスなもの、実験的なものや芸術性の高いものと、実に様々な作品があり、世界にはこんなに面白い短編映画があるのかと毎回驚かされます。また、ここ数年は、国際映画祭で受賞を重ねる若手日本人作家も何人か出てきており、ちょっとした盛り上がりを見せ始めています。

しかし、日本で普通に生活していると、そういった作品に出合える機会はほとんどありません。短編映画が劇場公開されたりソフト化されたりするのは稀で、せっかくこんなに面白い作品がたくさんあるのに、そのことに気がついている人間は映画祭に参加する作家や研究者だけ、という状況がずっと続いているのです。

そんなわけで、現在、僕は、同世代の作家と研究者と共に設立したCALFという会社に所属し、クライアントワークを手がけながら、国際的に評価の高い日本人作家の作品をDVD化して販売したり、上映イベントを企画したり、劇場公開させるべく配給したりしています。

その中から代表的なものをいくつかご紹介させていただきたいと思います。


和田淳と世界のアニメーション


2010年、アニメーション作家、和田淳の作品群+海外作品でプログラムを組み、劇場公開作品として全国の映画館で上映させていただきました。和田君の存在がなければ、CALFを作ろうという考えも生まれていなかったかもしれません。彼はそのくらい、僕がベタ惚れしている作家さんなのです。


CALF夏の短編祭


2011年夏、アニメーションだけではなく、実写、ミュージッククリップ、実験映画と、幅広く短編映画を集め、1週間限定の上映イベントとして渋谷の映画館ユーロスペースで開催。とても刺激的なイベントとなりました。


『グレートラビット』と世界のアニメーション傑作選


こちらも、和田君の作品群と海外作品を組み合わせて全国で劇場公開したプログラムです。和田君の特集は少し前にしたばかりだったので、タイミングとしては早すぎなのですが、新作『グレートラビット』がベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞したことを受け、急遽企画しました。


『ワンダー・フル!!』


物語のない抽象的なアニメーション作品を作り続けている水江未来の作品を集めて一本化した、劇場公開作品です。和田君の時とは違い、海外作品と組み合わせることはせず、あえて彼の作品のみで勝負をかけました。マコトヤさんとの共同配給によって、ヒューマントラストシネマ渋谷を皮切りに、これまで以上の規模で全国公開しています。


変態(メタモルフォーゼ)アニメーションナイト2014


ワンナイト、あるいはオールナイト上映イベントとして開催してきた「変態アニメーションナイト」を、今年は全国の映画館にて連続上映。世界中からひと癖もふた癖もある作品ばかりを集めた企画で、これまで短編アニメーションに興味を持っていなかった方々にも注目してもらえている、とても人気のあるシリーズです。来年はもう一度ワンナイトイベントに戻し、1500人規模の会場で派手にやれたらなあ、なんて夢見ています。


なんだか予告編ばかりを見せてしまい申し訳ないような気もしますが、実はこれらの予告編は全て僕が制作しています。というわけで、「大山作品」と呼ぶことも出来るのです! えへへ。

今後もCALFでは世界中から集めたアニメーション作品を紹介していく予定です。興味を持てそうな企画があったら、ぜひ、足を運んでみてください。きっとこれまで経験したことのないような体験をしていただけると思います。

それでは今回はこの辺で!





keioyama00.jpg 大山 慶(おおやま けい)
アニメーション作家 1978年東京都生まれ
2005年、東京造形大学の卒業制作『診察室』が学生CGコンテスト最優秀賞、BACA-JA最優秀賞などを受賞。カンヌ国際映画祭監督週間をはじめ、海外の映画祭に正式招待される。'08年には愛知芸術センターオリジナル作品として『HAND SOAP』を制作。オランダアニメーション映画祭グランプリや広島国際アニメーション映画祭優秀賞など多数の受賞を果たす。映画『私は猫ストーカー』('08)、『ゲゲゲの女房』('10)ではアニメーションパートを担当した。現在、自ら設立に加わったCALFに在籍し、制作、配給、販売など幅広くアニメーションに携わりながら、新作『放課後』を制作中。

公式サイト : http://www.keioyama.com/
CALF : http://calf.jp/
CALF STUDIO : http://calf.jp/studio/




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