雑誌『をちこち(遠近)』
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08『ゆきどけ』 自分の原点

大山慶



みなさんこんにちは。涼しくて過ごしやすい季節になりましたね。
今回は、『ゆきどけ』という作品を紹介したいと思います。

『ゆきどけ』は、東京造形大学の3年次に金井勝先生の授業で制作した作品です。大学では、アニメーションのクラスではなく映画クラスに在籍していたため、金井先生の他、かわなかのぶひろ先生、諏訪敦彦先生といった、映画監督、実験映画作家の方々の授業を受けていました。

独学で初めて一人で作ったドローイングアニメーション作品ということもあり、絵、物語、演出、動画、合成、音、どこをとっても大変未熟ですが、自分の原点だなと感じる部分も多く、愛着のある作品です。

keioyama08_01.jpg 少年が犬の死骸を見たことをきっかけに、生き物の体に興味と嫌悪を抱くようになり、やがて、ありとあらゆるものがグロテスクに見えていく......というお話で、7分の作品となっています。

keioyama08_02.jpg さて今回、『ゆきどけ』をこのコラムのために全編ネット公開することにしました。それではご覧ください!



鉛筆画の淡い描画の中に、点々と染みのようにどす黒い部分があり、そこには生々しい異質なものがうごめいている――そんなビジュアルが最初に浮かび、そこからその画に合った物語を考えていきました。毛根をじっと見つめてみたり、金魚の口の中を覗こうとしたりといったエピソードは、実際に自分の体験をもとにしています。

keioyama08_03.jpg 技法としては、紙に鉛筆で原画を描いたあと、Photoshop上で目や口や皮膚などの写真を貼り付けていくというシンプルな作り方をしています。動画用紙の使い方がよくわかっていなかったため、安いコピー用紙を使って制作しました。

時間とお金が捨てるほどあり、他にやりたいことが何一つなくなってしまったら、『ゆきどけ』を満足のいく形にセルフリメイクしたいなあ、なんて思うことが時々あります。

完成してすぐ、ありとあらゆる映像コンテストに出品したのですが、全く結果を出すことができず、アニメーション作品を作るのはもうやめようかと考えた時期もありました。しかし、客員教授として東京造形大学で教鞭を執るアニメーション作家の山村浩二さんから大変励みになる言葉をいただき、「卒業制作もアニメーションでいこう」と決意しました。なんと、その卒業制作が国内外で高く評価され、いまだにアニメーション作品を作り続けることができています。

次回はその卒業制作『診察室』について書きたいと思います! 作品本編もネット初公開予定!お楽しみに!!

ちなみに、『ゆきどけ』と『診察室』はダゲレオ出版から発売されたDVD『シンキング&ドローイング』に収録されています。石田尚志さん、辻直之さんなど、魅力的な作家さんの作品がたくさん収録されていますので、ご興味のある方は、ぜひ。





keioyama00.jpg 大山 慶(おおやま けい)
アニメーション作家 1978年東京都生まれ
2005年、東京造形大学の卒業制作『診察室』が学生CGコンテスト最優秀賞、BACA-JA最優秀賞などを受賞。カンヌ国際映画祭監督週間をはじめ、海外の映画祭に正式招待される。'08年には愛知芸術センターオリジナル作品として『HAND SOAP』を制作。オランダアニメーション映画祭グランプリや広島国際アニメーション映画祭優秀賞など多数の受賞を果たす。映画『私は猫ストーカー』('08)、『ゲゲゲの女房』('10)ではアニメーションパートを担当した。現在、自ら設立に加わったCALFに在籍し、制作、配給、販売など幅広くアニメーションに携わりながら、新作『放課後』を制作中。

公式サイト : http://www.keioyama.com/
CALF : http://calf.jp/
CALF STUDIO : http://calf.jp/studio/




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