雑誌『をちこち(遠近)』
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09 『診察室』国際映画祭デビュー

大山慶



肌寒くなってきましたね。人肌恋しい季節が近づいてきました。
今回は『診察室』という9分の作品をご覧いただきましょう。

これは、前回紹介した『ゆきどけ』で上手くいかなかった部分にリベンジすべく、東京造形大学の卒業制作として2005年に作った作品です。

ではご覧ください。今回も前回同様、「作品全編初ネット出し!」です。



診察室で医者の診断を聞く男が、自分の内臓写真を見たのをきっかけに小学生時代のことを思い出す――というお話です。首のない女はかつての自分が抱いていた妄想を、お遊戯会のシーンは思考の旅から引き返してくる瞬間の、あるいは、寝て起きたら一瞬、自分の居場所がわからなくなってしまった時のような、ぼーっとして現実感のない状態を意識して作りました。

keioyama09_01.jpg 冒頭とラストに出てくる診察室のシーンは、ペイントソフトのPainterで描いています。ロトスコープも使っており、動きや形にリアリティがあります。

keioyama09_02.jpg 一方でモノクロの保健室のシーンでは、形や動きにリアリティがない代わりに、写真のコラージュによる過剰な質感により、さっきまでとは別のリアリティが現れています。

keioyama09_03.jpg お遊戯会のシーンでは、モノクロのコラージュの世界の人物が、現在の現実であるはずのカラーの世界を、背景やお面といった演劇の道具として使っています。

この頃から「シーンごとの絵柄に差異をつけることで生まれる、アニメーションならではの映画表現」に関心があり、それが現在制作中の『放課後』につながっています。


この作品は、学生CGコンテスト最優秀賞、BACA-JAグランプリなどを受賞し、多くの国際映画祭で上映されました。僕を色々な場所に連れて行ってくれて、いろいろな人に会わせてくれた思い出深い作品です。

keioyama09_04.jpg 僕にとって初めての国際映画祭はカンヌ国際映画祭監督週間でした。たくさんのお客さんの前で自分の作品が上映されているというプレッシャーから、「こんな作品を上映して恥ずかしい」というネガティブな感情が生まれてしまい、上映中も上映後もひどく具合が悪くなり、プログラムディレクターに心配をさせてしまいました。以来、いつ気持ちが悪くなってもいいよう、自分の上映の際には、退席しやすい出口付近の一番端に座るようにしています。

2005年当時、カンヌ映画祭では35mmフィルム以外での上映が認められておらず、『診察室』も35mmのプリントを作る必要がありました。あれから10年足らず、今ではほとんどの映画祭が何らかの形でデジタル上映に対応、テープやフィルムで上映される作品はかなり少なくなっています。

せっかく『診察室』『ゆきちゃん』『HAND SOAP』と、35mmフィルムで作った作品が3本もあるので、「いつか作家仲間たちと35mm短編アニメ上映会を開けたら素敵だな」と夢見ています。

あと、自分が痩せていた頃の写真を久しぶりに見たため、「努力なしでいつの間にか痩せていたら素敵だな」と夢見ています。

それではまた来月!





keioyama00.jpg 大山 慶(おおやま けい)
アニメーション作家 1978年東京都生まれ
2005年、東京造形大学の卒業制作『診察室』が学生CGコンテスト最優秀賞、BACA-JA最優秀賞などを受賞。カンヌ国際映画祭監督週間をはじめ、海外の映画祭に正式招待される。'08年には愛知芸術センターオリジナル作品として『HAND SOAP』を制作。オランダアニメーション映画祭グランプリや広島国際アニメーション映画祭優秀賞など多数の受賞を果たす。映画『私は猫ストーカー』('08)、『ゲゲゲの女房』('10)ではアニメーションパートを担当した。現在、自ら設立に加わったCALFに在籍し、制作、配給、販売など幅広くアニメーションに携わりながら、新作『放課後』を制作中。

公式サイト : http://www.keioyama.com/
CALF : http://calf.jp/
CALF STUDIO : http://calf.jp/studio/




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