雑誌『をちこち(遠近)』
バックナンバー

バックナンバー一覧

Vol.7 ぜひ、ワークショップで盆栽作り体験を

夏はイベントが目白押し。心が解放されてワクワクですね。
しかし、盆栽にとって、暑すぎる夏は少し生きづらい環境に変わってきているのかもしれません。

植物に関わる仕事をしていると、毎年の気候と個々の植物の状態が、頭の中に記憶されていきます。
あの年の夏は雨が少なかった。
春の長雨のせいで五葉松の葉が伸びた。
黒松の2番芽(芽切りによって2番目に吹いた芽)の動きが遅かった、早かった、など。

人が世話をしているとはいえ、盆栽は自然の恩恵を受けながら成長します。
生産性やスピード重視の社会とは縁の遠い世界なのかもしれません。
今年ダメでも、来年こそはうまく成長してくれよ、と願うのです。「のんびり」ではなく、「おおらか」と捉えています・・・・・・。

bonsai_07_01.jpg

樹齢約120年の真柏(しんぱく)。夏場は、夕方の水やりの際には、葉に水をかける「葉水」も大切。

ところで、植物を愛する人は多いですが、ガーデニングやフラワーアレンジメント、家庭菜園などを趣味とする男女の割合は、女性が多いのではないかと思っています。
蘭やバラをテーマにしたイベントでは会場が女性客で溢れかえり、私が毎月、盆栽の手入れをさせてもらっている茨城県内最大級の園芸施設「トキワ園芸農業協同組合 花木センター」も女性客で賑わっています。

それに対して、既存の盆栽愛好家は男性が断然多い。
1960年代後半から1970年代初めにかけて、皐月(さつき)ブームなるものがあったと聞きます。皐月の花に魅了された愛好家はとても多く、当時、30代40代の男性がこぞって皐月盆栽を始めたそうです。
「皐月の花がきれいでさぁ・・・・・・」
そんな昔話をこれまで幾人にも聞きました。

最近は、盆栽のワークショップを開催している店舗やイベントが各地で見られるようになり、業界に良い風が吹いていると感じます。
私の仕事場「盆栽もり」でも月に2日間、午前と午後の計4回、ワークショップを開催しています。
年齢層は20代から60代までと幅広く、接点のなかった日本の代表的な文化に触れてみたいと、関心を持つ方が増えているのは確かでしょう。そして、ワークショップの参加者は、買って楽しむよりも、自分で作って楽しむことに魅力を感じるようです。

bonsai_07_02.jpg

盆栽もりでは毎月、季節に応じた樹種を用意してワークショップを開催。

では、ワークショップの進め方を簡単に紹介します。

(1)まず、盆栽の鉢を準備します。
盆栽は基本的に屋外で管理するため、植えた樹がぐらつかないように、鉢と樹を固定する針金をセット。一般にプランターなどに植える場合にはこのようなことはしないので、盆栽ならではの、表からは見えない土の中での仕組みに、みなさん驚かれます。

bonsai_07_03.jpg

鉢と樹を固定するために、鉢の中に針金をセットする。

(2)樹の正面を探して、植え付け角度を決めてもらいます。盆栽は必ず、正面を向けて飾るからです。
この場合、樹の特徴や個性を見極めるのですが、これが難しい。樹の特徴や個性なんて、いきなり言われてもわかりません。でも、ワークショップではそれを丁寧に教えますので、安心してください。

(3)次に、不要な土と根を丁寧に取り除いて、新しい土で植え付けます。その際に鉢と樹を固定するための針金で留める方法や、新しい土を適度に鉢の深くまで入れ込むコツを教えます。

(4)苔張りと水やり。苔張りの作業では盆栽らしく変化する瞬間を味わえます。水やりは植え替え直後と自宅に持ち帰ってからの、それぞれの方法を細かく指導します。

以上を約90分で行います。
植物の葉や枝、根っこを手元でじっくりと眺めることなど遠い昔のことになっていると思うので、最初のステップとしては、十分に学べて楽しく時間を過ごせるのではないでしょうか。
数人の参加者が同じ教材を使っても、出来栄えはそれぞれで個性的。一つとして同じ作品にはなりません。作った人のオリジナル作品です。そして、成長具合で樹の個性はさらに磨かれていきます。

ワークショップに参加した後、自分で作って復習すると、知識が技術に変わります。
1鉢だけだと、部屋に飾るために外と部屋の中を行き来させることで盆栽が疲れてしまいますので、できれば10鉢ほど確保したいところ。それらをローテーションで部屋に飾ると、日々の暮らしと盆栽管理がうまく回ると思います。

bonsai_07_04.jpg

樹高25センチの檜。挿し木から成長し、大樹のような風情に。夏は強い西日を避けて葉焼けを防ぐ。

盆栽は生涯続けていける趣味。しかも、楽しみだけでなく、季節の移り変わりや自然の摂理などを教わることもあるのです。
友達であり、先生のような存在に思えてくるのも、長く育てる過程で得られる嬉しい変化です。気長にのんびりとお付き合いいただければ、盆栽に携わる人間の一人として嬉しく思います。

【Information】
盆栽もりのワークショップ日程/9月23日・24日。時間/各日とも10:00~11:30(午前の部)・13:30~15:00(午後の部)。詳しくはfacebookで確認を。

bonsai_profile.jpg 森 隆宏(もり たかひろ)
盆栽師。1979年、東京都生まれ。常磐大学国際学部を卒業後、2002年より勝田光松園にて盆栽を修行。2006年に独立し、盆栽師として活動を開始する。2009年、由緒ある国風盆栽展で職人として手がけた作品が国風賞を受賞。2009~2013年、さいたま市大宮盆栽美術館の専属盆栽技師を務める。2013年、欧州文化首都2013コシツェに盆栽デモンストレーターとして、第8回世界盆栽大会(2017年開催)のさいたま誘致プレゼンテーションに盆栽師代表プレゼンテーターとして参加。2014年にはスロヴァキアの国際盆栽フェスティバルでもデモンストレーションを行い、2016年の国際園芸博覧会トルコ・アンタルヤでは日本政府出展の展示に盆栽専門スタッフとして携わった。現在、盆栽師の仕事に従事する傍ら、2013年に構えたアトリエ「盆栽もり」などで初心者向けワークショップを開く他、米カリフォルニアでも講習会を行うなど、国内外で盆栽の普及活動に取り組む。

盆栽もりHP http://bonsaimori.jp/
盆栽もりfacebook https://www.facebook.com/Bonsaimori/

Page top▲

Twitter - @Japanfoundation