雑誌『をちこち(遠近)』
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東ティモールの子どもたちと共に創った音楽の輪

山口とも(パーカッショニスト)



 東ティモールの若い人たちと、音楽を通して交流を図る事業が2012年11月に東ティモールで実施され、おおたか静流(シンガー&ボイス・アーティスト)と向島ゆり子(ヴァイオリン奏者)ともに参加しました。日本と東ティモールの外交関係樹立10周年を記念するだけでなく、東日本大震災の折に東ティモールから義援金をいただいたことへの感謝の気持ちを伝える意味も込めた公演となりました。


とことん楽しむ東ティモールの子どもたち
 最初の公演地となったバウカウのベニラレ女子孤児院では、ワークショップとコンサートに84人が参加してくれました。孤児院の児童・生徒の年齢は3歳から13歳くらい。日本では小学校高学年ぐらいになると、他人の目が気になり始めて自己表現が抑制され、内に秘めてしまった様子になりますが、東ティモールの子どもたちは全くそんなことを感じさせず、日本では考えられないくらいの素直さ、純朴さに驚かされました。
 東ティモールの大人たちも、皆、気さくで人なつっこく、「楽しむこと」に抵抗がないようで、日本から赴いた我々は、東ティモールでは人目をあまり気にする必要がないのかなぁと、文化の違いを感じました。
 例えば、音楽ワークショップでは、ペットボトルにビーズ状の粒子を入れ、振ると音の出る楽器を作成しましたが、東ティモールの子どもたちは、このような物を作った経験がないようで、作業工程や演奏はとても盛り上がり、私自身も無邪気に楽しむことができました。コンサートも、子どもたちが、この日を指折り楽しみに待っていた気持ちがひしひしと伝わってきました。参加型の演目では、児童の声援が会場中に響き渡り、演奏する側も、あまりの受けの良さにテンションが最高潮に達し、あっという間に終演を迎えるほどでした。コンサート会場が一つになり、とても良い時間を過ごせました。

music_east_timor01.jpg music_east_timor02.jpg music_east_timor03.jpg  バウカウの次は、首都・ディリにあるセント・ピーター中等学校(日本の中学・高校に相当)へ。ベニラレ女子孤児院の子供たちより年齢は上でしたが、同校でのワークショップ、コンサートのいずれでも、やはり同じように素直さと純朴さを感じました。
 日本の中学生や高校生は精神的にストレスを抱えているのか、とてもナイーブでセンシティブな生徒が多く、日本で中高生を対象にした活動のときの反応に比べると、東ティモールの子どもたちは、喜び、楽しみの表現方法が全く違っていました。とにかく楽器作り、演奏を心から楽しんでいる様子でした。

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体全体で表現できる心
 ディリにあるアーティストの団体「アルテモリス(Arte Moris)」に所属している打楽器のグループ「ハカ」との共演も心に残りました。若い男性ばかりの集団ですが、楽器を演奏することによってみんなの心を一つにして、音楽や芸術を通じて、平和な国造りを目指していました。
 「アルテモリス」では日本の「椰子の実」という曲を一緒に演奏しました。今まで、複数のミュージシャンが共に演奏する、いわゆる「セッション」の経験がほとんどなかったようですが、音を出すごとに、演奏者全員が一つになっていく様子は感動的でした。

music_east_timor05.jpg  年齢を重ねて大人になっても、体全体で表現できる心、我々はなんだか大事な物を忘れてはいないかと日本を振り返りました。このような素直な気持ちで、すべてのことが受け入れられ、人間としてまっすぐ物事を見ることができたら、争いはないように思いました。
 文明におぼれると、人間としての心の維持が難しくなり、便利になればなるほど、人間の感覚が失われていくように思います。東ティモールに来ることができて、人間本来の姿を垣間見たような気がします。
 でも、東ティモールの街を見ていると、「文明の色」が少しずつ、しかし確実に街を染めて始めているのも見えました。それにおぼれない「心」も続いていって欲しいと切に思います。
     今回の交流事業で、我々が蒔いた種がどのような芽になって花咲いて行くのか、まだまだ始まったばかりですが、我々のできる限りの場所で、また種を蒔きに行きたいと思っています。





music_east_timor06.jpg 山口とも (やまぐち とも)
パーカッショニスト。東京都出身。祖父山口保治は、「かわいい魚屋さん」「ないしょないしょ」など数々の童謡をつくった作曲家。父山口浩一は、新日本フィルハーモニーのティンパニー名誉首席奏者。
つのだ☆ひろのアシスタントとして音楽の世界に入り、1980年「つのだ☆ひろとJAP'S GAP'S」でデビュー。解散後、中山美穂・今井美樹・平井堅・石井竜也・サーカスなど、数々のアーティストのツアーやレコーディングに参加。95年音楽劇「銀河鉄道の夜」をきっかけに、廃品からオリジナル楽器を作るようになる。以来、廃品打楽器を使った独自のパフォーマンスを展開し、全国各地で老若男女を魅了するコンサートを数多く行っている。 希有なキャラクターが評価を受け、2003年4月からNHK教育テレビで放送された「ドレミノテレビ」では、UAとともに進行役を勤め、親しみやすいキャラクターと音楽性の高さから人気を博した。その他テレビ出演も多数。
公式HP:http://tomooffice.jp/




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