雑誌『をちこち(遠近)』
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02『HAND SOAP』 その① グロテスクで繊細な「思春期」

大山慶



今日は現時点での僕の最新作、『HAND SOAP』 について書きたいと思います。

この作品は「愛知芸術文化センターオリジナル映像作品」として製作したもので、尺は16分。オランダアニメーション映画祭アニメーテッドドリームスでグランプリ、アナーバー映画祭、イマジナリア映画祭でベストアニメーション作品賞を受賞した他、広島国際アニメーションフェスティバル優秀賞、オーバーハウゼン国際短編映画祭映画祭賞など、国内外でたくさんの賞をいただくことができました。
ちなみに、2008年度作品となってはいますが、実際に完成したのは2009年です......。

keioyama02_1.jpg 思春期の男の子とその家族を静かに淡々と描いたこの映画では、「接写した写真のコラージュ」という少し変わった技法を使っています。その過剰な質感を持った絵柄によって、グロテスクで繊細な「思春期」という時代そのものを描こうと試みました。つまり、見た目やムードは異なりますが、現在制作中の『放課後』と全く同じテーマを扱った作品でもあるのです。

keioyama02_2.jpg 主人公の姿形、置かれている環境、家族構成、性格などは、作者である僕とはまるで違います。自分とは似ても似つかない主人公と物語をあえて使い、それでも紛れもなく「彼はあの頃の自分自身だ」と思える作品にしたいと思いました。 そこの部分は実現できたと思っています。あとは観ていただいた方にもそんなふうに思ってもらえたら最高です。

keioyama02_3.jpg キャラクターデザインは実在の人物をモデルにしています。といってもそれほど大げさなものではなく、主人公の男の子は医学書に載っていた患者、父親は痴漢で逮捕された教員、母親と姉は、殺人を犯してしまったOLを参考にしました。

keioyama02_4.jpg セリフはほとんどありません。電話の向こうで聞こえる「もしもし」と、テレビから聞こえる歌番組の「音声」のみ、つまり、機械が発する「音」としての言葉のみが出てきます。短編アニメーションにはセリフのない作品が割と多く、たいていの場合、言葉の代わりにジェスチャーで意思を伝えていたり、架空の言語を使ったりしているのですが、『HAND SOAP』に関しては、無理にしゃべらせないようにするのではなく、「無言の時間のみを切り取った」という設定で作っています。

keioyama02_5.jpg 本編をネットで公開することができないため、予告編をご覧いただいて今回はお別れにしようと思います。次回は、『HAND SOAP』を観た人からよくされる質問「どうやって作っているんですか?」に答えるべく、メイキング動画を公開する予定です!

お楽しみに!!







keioyama00.jpg 大山 慶(おおやま けい)
アニメーション作家 1978年東京都生まれ
2005年、東京造形大学の卒業制作『診察室』が学生CGコンテスト最優秀賞、BACA-JA最優秀賞などを受賞。カンヌ国際映画祭監督週間をはじめ、海外の映画祭に正式招待される。'08年には愛知芸術センターオリジナル作品として『HAND SOAP』を制作。オランダアニメーション映画祭グランプリや広島国際アニメーション映画祭優秀賞など多数の受賞を果たす。映画『私は猫ストーカー』('08)、『ゲゲゲの女房』('10)ではアニメーションパートを担当した。現在、自ら設立に加わったCALFに在籍し、制作、配給、販売など幅広くアニメーションに携わりながら、新作『放課後』を制作中。

公式サイト : http://www.keioyama.com/
CALF : http://calf.jp/
CALF STUDIO : http://calf.jp/studio/




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