雑誌『をちこち(遠近)』
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04『nami』 最初で最後の8mmフィルム作品

大山慶



みなさんこんにちは。
今回は僕の一番古い作品『nami』について書こうと思います。

2000年。大学に入る前の浪人時代、受験のための絵を描くことに疲れてしまった僕は、「もっと自由に"自分の作品"と呼べるものを作りたい」と考え、逃げ出すような形でイメージフォーラム映像研究所に通い始めました。ここは「実験映画」「アンダーグラウンド映画」「個人映画」などと呼ばれる映像を勉強する研究所で、夜間に開講されているため受講生の年齢や経歴も様々で、とても刺激的な場所でした。

8mmフィルムを使ってグループ制作をするという課題があり、そのグループ内で僕の企画が通り生まれた作品が『nami』です。

この作品は、魚の内臓を取りのぞき、自立するようにスタンドをつけ、少し動かしては撮影するというコマ撮りの手法で制作しました。魚が腐ってしまうため、何日もかけて撮影するわけにはいかず、30時間くらい通しで撮影をし、一気に完成させました。

8mmフィルムの編集は「切ってテープで貼る」というシンプルな方法を使うので、カットのつなぎ目に一瞬ノイズが入ります。そのため、あとから細かい編集をしなくてもいいように、しっかりと計算してコマ撮りする必要がありました。 ビデオとは違い、撮ったものをその場で確認することもできないし、ピントや明るさも自分で設定しなければなりません。今から考えるととても不便なのですが、その不便さのおかげで、撮影の基本を学ぶことができたように思います。


制作当時は、ようやく個人でもパソコンによる動画編集ができるようになってきた頃で、それ以降、フィルム作品はどんどん減っていきました。僕自身、この作品を最後にフィルムで作品を作ることはなくなりました。

作家が扱うフォーマットは8mm、16mmからビデオになり、SDサイズがHDサイズとなり、近い将来「スーパーハイビジョン」と呼ばれるさらに高解像度な映像が主流となりそうです。

家庭で楽しむ映像は「8mm」→「VHS」→「LD」→「DVD」→「Blu-ray」→「データ(ネット)」と、これでもかというくらい次から次に形が変わってきており、映画館の映写も35mmフィルムからDCP(デジタル上映)に変わってきています。

歴史が浅く移ろいやすい、発展途上なメディアではありますが、そういった部分が僕を惹きつけているようにも思えます。50年後、100年後、映像がどのような形で人々に受け入れられているのか、想像することもできません。しかし、どのような形になっていても、自分の作品を観て楽しんでくれる人がほんの少しでも存在してくれているように、それを目指して作品作りに励みたいと思います。

それでは『nami』をご覧いただこうと思います。ただし、この作品には女性の局部が写ってしまっているため、今回はその部分にモザイクをかけた自主規制バージョンで公開させていただくことにします。

『nami』
http://youtu.be/TCIbF_-spek

(編集部注:この作品は芸術作品ですが、見る方によっては不快に感じる場合もあるかもしれません。ご自身の判断でご覧いただきますようお願いいたします)





keioyama00.jpg 大山 慶(おおやま けい)
アニメーション作家 1978年東京都生まれ
2005年、東京造形大学の卒業制作『診察室』が学生CGコンテスト最優秀賞、BACA-JA最優秀賞などを受賞。カンヌ国際映画祭監督週間をはじめ、海外の映画祭に正式招待される。'08年には愛知芸術センターオリジナル作品として『HAND SOAP』を制作。オランダアニメーション映画祭グランプリや広島国際アニメーション映画祭優秀賞など多数の受賞を果たす。映画『私は猫ストーカー』('08)、『ゲゲゲの女房』('10)ではアニメーションパートを担当した。現在、自ら設立に加わったCALFに在籍し、制作、配給、販売など幅広くアニメーションに携わりながら、新作『放課後』を制作中。

公式サイト : http://www.keioyama.com/
CALF : http://calf.jp/
CALF STUDIO : http://calf.jp/studio/




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