雑誌『をちこち(遠近)』
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世界の人たちの心を開くJAPANESEポップミュージック






澄み切った歌声で、ジャズをベースにしながらも、ジャンルにとらわれない多彩な表現を聞かせてくれる歌手SHANTI。2011年6月には初めてのヨーロッパツアーを行いました。成功の余韻さめやらない彼女に、ツアーでの貴重な体験、そしてツアーの一環で参加したパリでの世界最大の日本文化紹介イベント、JAPAN EXPOの様子についてうかがいました。





■1曲目が終わったら、

 大きな歓声と拍手が上がった




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──6月下旬、ヨーロッパをツアーで回られましたね。

SHANTI:フランスのパリ、ドイツのケルン、スペインのマドリード、そして北部の都市アストゥリアス、ポルトガルのリスボン。最後には、パリの郊外で開催されたJAPAN EXPOにも出演しました。合計すると4カ国6公演ですね。


──初めてのヨーロッパツアーですか?

SHANTI:そうです。2、3年前からずっとヨーロッパで公演したいなと思っていました。2008年にインディーズで出したアルバム『Share My Air』をフランスでレコーディングしたことがキッカケになりましたし、フランスにはすばらしいミュージシャンがいるのはわかっていて、ということは、それを受け止めるお客さんもすばらしいだろうと思っていました。今回、夢が実現して、しかもフランスだけでなく他の国にも回れて、本当に達成感のあるツアーになりました。


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──どのような思いでステージに立ちましたか?

SHANTI:曲の求めている歌い方で歌って、それをそのまま受け止めてもらえればいいな、それで自分が歌に込めるエネルギーを感じてくれればと思っていました。それによって自然に喜んでもらえるかなと。だから、とにかく自分の全てを歌に込めることだけに集中すれば、必ずいい反応があるだろうという確信を持って、ステージに立ちました。

 最初のステージだったパリの会場ですが、1曲目が終わったら、「うわーっ」と大きな歓声と拍手が上がりました。温かい観客で、曲をやるにつれて盛り上がり、静かな曲をやればしんみりした雰囲気になるし、山場でノリのいい曲をやったときには、また歓声と拍手で答えてくれました。コミュニケーションがとてもよく取れていたと思います。

 最初のあいさつと真ん中、最後はフランス語で話して、あとはゆっくりめの英語で話しました。違う国に行ったときには歩み寄りが大事だと思うんです。それから1曲、今度リリースされるアルバムの中にあるフランス語の曲「恋とマシンガン」を歌ったら、ものすごく盛り上がりましたね。フリッパーズ・ギターの曲に友達のフランス人の歌手が歌詞をつけてくれたものです。

 日本語では例えば「見上げてごらん夜の星を」を歌いました。意味を簡単に説明して、日本の歌は自然をテーマにしたものが多く、自然とのつながりを大事にしていると話してから歌いましたが、みなさん音楽の中でそれを感じ取ってくれたようでした。どの国に行っても、やはり音楽は言語を超えた1つの言語なんだなと感じました。




■心に伝えたかった音楽が

 本当に届いていた




──日本とヨーロッパでは、ファンの反応に違いはありますか?

SHANTI:フランスでは外に表現するタイプのお客さんが多くて、例えばスタンディングオベーションや拍手、歓声など、ストレートに反応するので、本当に喜んでくれているのがよくわかります。

 日本でも地域によって違うんです。温暖なところのほうが外に出す感じで、例えば福岡に行くと温かい雰囲気。東京近郊など1人で生活する人が多いところは静かで、お行儀がよくて、拍手はするけど、あまり外に表現しないで、自分の中で音楽を楽しんでいるという印象があります。


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──ファンとの出会いで、なにかエピソードはありますか?

SHANTI:ドイツでは、あるお客さんに「シュガーフェイス」と言われましたが、ポスターの私の写真を見てアイドルっぽい子が来ると思ったそうです。ポップでエレクトリックな音楽なのかなと。でも、聴いたあとで「It's music for the hearts」と言ってくれたんです。私は心に伝わる音楽をやりたいなと思っていたのですが、それがちゃんとお客さんに通じていたのが、すごくうれしかったですね。

 また、最初のパリ公演だけはバンド編成でやり、そのあとの公演はトリオ編成でギター2人とボーカルの私で行ったのですが、次はバンドで来てくださいというコメントもいただきました。来ていた人たちの世代も幅広くて、7、8歳の女の子から70代の女性まで。その方はポルトガル公演に来ていた気品のあるドイツ人で、「私、あなたの音楽好きよ」と言ってくださいました。


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──海外ではアニメの挿入歌からファンになった人も多いそうですね。

SHANTI:『天空のエスカフローネ』というアニメ作品で、菅野よう子さんとのコラボレーションで「Sora」という曲を歌ったり、『攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX』の作詞やナレーションをやって、それをきっかけに海外でも10代のファンが増えました。ある女の子たちはネットに出ている私のプロフィール写真を印刷して、はがきサイズに切って、同じものを持ってきていました。グルーピーみたいに4、5人で来て、これにサインしてくださいと。

 一緒に写真を撮ることも多くて、海外の人たちとつながるために設けたフェイスブックのSHANTIファングループでは、続々メッセージが集まって、「めったに涙を流さないんだけど、この曲で泣きました」とか、「すごく自分の世界を持って歌っている感じが伝わってきてよかったです」とか、「フランス語の発音が上手ですね」とか......。YouTubeにライブ映像を誰かがアップしていたりと、本当に反応はよかったですね。




■コスプレは遠い日本の文化に

 近づきたい願望の表れ








──ツアーの最後はパリに戻って、JAPAN EXPOでのライブでしたね。JAPAN EXPOは全体として、どんな感じのイベントでしたか?

SHANTI:日本文化を伝えることが目的のイベントですが、私も最初はポップカルチャーだけで、みんなコスプレをして集まるというイメージがありました。確かにアニメやキャラクターのブースが全体の6割から7割ぐらいで多かったのですが、その一方で、日本の伝統的な合気道、柔道、剣道、日本画などのブースや瞑想や禅のブースなどもありました。

 たこ焼きなどの食の紹介や、落語、盆踊り、さらには島唄などの紹介もありました。津軽三味線の大野敬正さんもいらして、200人くらいの幅広い年齢層が集まって楽しんで見ていました。盆踊りでは観客からやりたい方を募ってステージに上げて、白塗りのコスプレの人も一緒に「♪月が~出た出た~」とやっていました(笑)。

 アカデミックな内容に興味がある人はそのブースに行けばいいし、コスプレを楽しみたい人はそのブースへ行けばいい。思っていた以上に、バランスが取れたイベントだという印象でした。


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──コスプレはなんのキャラクターが人気でしたか?

SHANTI:例えば『ONE PIECE』のルフィ、『NARUTO』のキャラクターなど、いろんなアニメのキャラクターの格好をしている人がいました。初音ミクもいました。白と黒を着て、3人か4人の兄弟か友達で、きっと一緒に縫ったんでしょうね。

 お金のかかったメカみたいな衣装を着ている人もいれば、手づくり感満載の人もいました。ただ普通に女子高生の格好している子もいて、実際、衣装も販売しているんですよ。一方では、何か西洋のキャラクターの衣装を着ている人もいて、ハロウィーンのような感覚の人もいました。コスプレをしていない人も、遊園地に行くような感覚で楽しんでたと思います。


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──コスプレをしている人たちは何を期待して集まっていると思いますか?

SHANTI:成りきるのが好き、演じるのが好きなんだと思います。キャラにすっかり入っていて、すごい目つきや歩き方で演じている。それをすごく楽しんでいるのが伝わってきます。

 それから、遠い日本の文化に近付きたい一心で着るという感じもありますね。例えば、ジャパンファンデーションのブースでパソコンをいじって「アニメ・ マンガの日本語」ウェブサイトを見ていた10代の2人組の女の子がいましたが、1人はビジュアル系バンドから日本の文化が好きになったそうで、メイクもビジュアル系でした。フランスはファッションの中心地なので、どう自分を見せるかに対してすごく敏感ですね。ましてや自分が好きな漫画のキャラクターに成りきれるのであれば、敏感に取り入れようとすると思うんです。

 それから、コスプレをしている者同士で、自分が好きだと思ったコスプレの人を見つけたら、知らない人でも声をかけあって、写真を撮っていました。アニメやコスプレが好きな人たちが集まって、JAPAN EXPOが新しい仲間を増やす場になっている感じはありました。


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■自分から歩み寄ることが

 相手の心を開いてくれる




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──マンガやアニメに比べると、海外に知られている日本の音楽はまだ少なくて、出て行くのは、むしろこれからですね。

SHANTI:それは、私も活動していてすごく残念に思うところです。素晴らしいミュージシャンがたくさんいるのに、海外に出ているのはほんの一握りの人たちに留まっています。最近ではインターネットによる音源の配信が主流になり、海外からもアクセスは可能になってきましたが、もう少し音源を提供する側にも工夫が必要だと思います。


──確かに、日本ではインターネット配信については権利上の問題などがあって、なかなか進まない側面があります。

SHANTI:海外の業者に任せるなどして、日本の曲もきちんと権利管理ができれば、日本の音楽業界もかなり活性化するはずだと思うんです。日本にはこんなミュージシャンがいるんだと新しい発見があって、海外でライブをするきっかけにもなる。私の場合は、アニメの仕事があったから、それが突破口になって海外で知られることになりましたが、今はなかなかそうしたチャンスをつくれないミュージシャンがたくさんいます。


──日本のミュージシャンが海外に出て行くためには何が必要でしょうか。例えば、英語などの言葉の問題もありますね。

SHANTI:今回もそうでしたが、例えばスペインの田舎に行けば、4つ星ホテルでも英語もフランス語も通じないことがあります。母国語しか話さないんですね。日常生活でもライブでも大事なのは、せめてあいさつだけでも訪れた場所の言語を取り入れて表現すること。それは、相手をリスペクトしている表れになります。「私を受け入れて」ではなくて、「私はあなたを知りたい、もっと知りたい」という、自分からの歩み寄りが相手の心を開いてくれると思うんです。だから、あまり話せなくても自分が努力して、近づきたいんだという意志を表すことが大事だと思います。


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──公演では、ファンの方に日本の被災地へのメッセージも書いてもらったそうですね。

SHANTI:ライブ終演時に、「ノートを置いておくので、もしよければ被災地のみなさんに応援メッセージを書いてください」とお願いしました。最後のJAPAN EXPOのライブではかなりの人が書いてくれて、100人分ぐらいメッセージが集まりました。日本語、英語、韓国語、ドイツ語、ブルガリア語など、いろんな言語で書かれていて、私には読めないものもあります。

 代表的なメッセージは「音楽をありがとう。日本頑張ってください」といったものです。「何があってもみんなが強く1つであること。幸せに平和に生きるためには、1つであることが大事。笑顔があれば大丈夫。強くあってください」。これも感動的なメッセージだったと思います。


──おっしゃるとおり、やはり音楽は人と人を近づけ、仲よくするものですね。

SHANTI:本当にそうだと思います。私はいつも音楽は人をつなげるものだと思っています。どの国に行ってもそうだし、国と国だけではなくて、同じ空間に人が集うことによって、同じ時間を共有しますね。だから、ライブが終わると、みんな仲むつまじい感じになる。互いにいろんな話をしたりとか、世界の人たちの心を開くものですね。コミュニケーションの一つとして必要なものだと思います。






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SHANTI

日本生まれの日本育ちで、日本語と英語を同等に話せるバイリンガル・ミュージシャン。 「ゴダイゴ」のドラマー、トミー・スナイダーを父に持ち、幼い頃から様々な音楽に触れてきたSHANTIは、小学生の時、聖歌隊で賛美歌を歌い、ミュージカルも経験。97年バークリー音楽院サマースクール留学帰国後、CMの作詞作曲、ナレーション、ライヴ活動等を開始。そのソングライティングのセンスや歌唱力が多くのアーティストを魅了し、桑田佳祐、サディスティックミカバンド、CHAR、小林桂、TOKU、マリーン、TAKE6、小沼ようすけなど、名だたるミュージシャンたちと、様々な形でコラボレーションしてきた。 今夏、ヨーロッパツアー(ドイツ・ポルトガル・スペイン・フランス)へ行き、最終日はパリのJAPAN EXPO 2011に出演。 2011年4月からはNHK-BS1の新情報番組「地球テレビ エル・ムンド」の金曜担当のナビゲーターとして活躍中。





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SHANTI
Sunny and Blue ~J-pop'n Jazz~

せつなくて、キュン
ジャジー・ポップのトップアーティストSHANTI、待望のJ-POPカバー


メジャーデビューアルバム「BORN TO SING」、2ndアルバム「ROMANCE WITH ME」で、着実にファンを増やし、ステップアップしてきた、まさにブレイク寸前のヴォーカリストSHANTIによる待望のJ-POP曲のカバー・ミニ・アルバムです。


【収録予定曲】
・ ORIGINAL LOVE 「接吻」
・ FLIPPER'S GUITAR 「恋とマシンガン」 ※仏語
・大澤誉志幸 「そして僕は途方に暮れる」
・ 坂本九 「見上げてごらん夜の星を」
・BEGIN 「恋しくて」
・SHANTI 「Morning in Rio」
・RCサクセション「スローバラード」(LIVE or TV ver.)
・ サザンオールスターズ「真夏の果実」(LIVE or CD ver.)


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