雑誌『をちこち(遠近)』
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人々が美しいと思い、それをまとってみたいと思う服~日本のモード、ブラジルへ

matohu
堀畑 裕之
関口 真希子


mode_brazil02.jpg  ファッションブランド「matohu」のデザイナー堀畑裕之・関口真希子の両氏は、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)の日本文化紹介派遣事業により、2012年8月に、ブラジリア・キャピタル・ファッションウィークに参加したほか、リオデジャネイロとサンパウロで講演を行いました。
 グローバル化に伴い文化の均質化が進み、ファッションがファーストフードのように消費されつつある今日、日本の美意識を見つめ、普遍性と同時代性を追求する「matohu」の世界を、FIFAワールドカップ(2014年)とリオデジャネイロ・オリンピック(2016年)を控え、急速な発展を続けるブラジルの人々に紹介しました。
 ブラジルでの事業を終えて帰国された「matohu」のデザイナーお二人にエッセイをお寄せいただきました。写真や動画とともにお楽しみください。



 文化ファッション大学院大学小杉早苗教授が取り持つ縁でブラジルへ行くことになったが、通常のコレクション準備期間に重なるため、過密スケジュールを縫っての渡航となった。海外できちんとした形でファッションショーを行うのは初めてだったので心配もしたが、様々な人の協力と努力によって東京で行うのと遜色ないプレゼンテーションをブラジルで実現でき、素晴らしい成果と経験を残す事ができた。

 現地の人々にとっても、通常のブラジル国内のショーや美意識とはちがう新鮮な経験になったようだ。それはその後の評価や取材において肌で感じる事ができた。

 ブラジルで私たちが感じたのは、光や気候、人種や歴史の複雑さ、人々の感受性や人生に対する姿勢、ブラジリア、リオデジャネイロ、サンパウロそれぞれの街のあり方、そのほか数えきれない同一性と差異だった。日本との違いはもちろんだが、世界の他の大都市とも違う特徴がそれぞれあり、このローカルな違いこそが豊かな多様性となっており、互いに刺激を与えることができた。

 互いの価値観が違っているからこそ楽しく、理解し合うのには幾多の困難があるが、ファッションショーや講演を通じて「美しいもの」や「問題に対して考える視点」など、ブラジルの人々の間にも広く共感してもらえることが実感できた。他者理解は、同時に自己深化をともなって二重に生まれるものだと思う。

 そんな中、リオデジャネイロでのある出会いはその象徴のような出来事だった。たまたま立ち寄ったショップで出会い、共鳴したアクセサリーのアーティスト、クラウジア・サヴェッリさん。日本に帰国した後も彼女とは頻繁なやり取りが続き、10月の東京でのファッションショーでの運命的なコラボレーションへと結実した。

 このコラボレーションで必須だった事が2つある。

 1つ目は電子メールやSkypeなどのインターネットを使った意思疎通だった。特に、時差が12時間のブラジルと日本で、Skypeを使ったテレビ電話は、現代ならではの「物理的距離や時間を無くす」技術的な成果だと思う。我々は実物を見せ合いながら、毎日綿密な打ち合わせをすることができた。

 2つ目に、そして最も大事な事は、「人間性」だろう。人種や国がちがっても最後に依るべきところは個人の「人間性」以外にはない。クラウジアは誠実で、きちんと約束を守り、完璧な準備をしてから打ち合わせをして来た。それはお互いを尊敬し合う人間同士の交流へと収斂されていく。

 お互いの文化と歴史への敬意と理解し合う意志があれば、人の心をうつコラボレーションを生み出す事は可能だ。そして人々が美しいと思い、それをまとってみたいと思う服こそ、「今」という同時代性をとらえた「ファッション」そのものだと言える。今回の派遣を通して、さまざまな場面で我々が互いに学び合ったのは、まさにその事であった。




◆各地での活動◆    

ブラジリアCapital Fashion Week でファッションショー(8月15日)

mode_brazil03.jpg mode_brazil04.jpg mode_brazil05.jpg mode_brazil06.jpg Photo: Cristiano Sergio/FOTOFORUM
リハーサルでは様々な混乱があったが、本番のショーは完璧なパフォーマンスとなった。ショーの最後には客席からブラボーの声も飛び、大変好評を得て成功のうちに終わった。



ブラジリアでのファッションショーの様子をこちらの動画でご覧頂けます。


動画提供:Capital Fashion Week
matohuスタッフ:飯田 学
ショー演出:辻井 宏昌、下田 弘毅




リオデジャネイロ SENAI / CETIQTで講演(8月17日)

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SENAI(国立職業訓練学校)の学生と教員を対象に講演。

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(左)講演終了後、熱気に包まれてたくさんの学生さんと一緒に記念撮影。順番を待つ人が行列に。
(右)専門家や教員20名ほどを集めての集中ディスカッション。伝統技術とファッションのコラボレーションやクリエーションの時間のかけ方などに関心が集まった。




サンパウロ Istituto Europeo di Designで講演(8月20日)

mode_brazil09.jpg mode_brazil10.jpg 午後1時からの講演は100人ほどの教室が満員。

mode_brazil11.jpg ロンドン五輪の閉会式で次回のリオを予告するパフォーマンスの衣装と演出を担当するなど世界的に活躍しているジュン・ナカオ氏(右端)や、日本の伝統的なデザインを愛するデザイナー、ウォルター・ホドリゲス氏(左端)も出席。







mode_brazil01.jpg 堀畑 裕之(ほりはた ひろゆき)
関口 真希子(せきぐち まきこ)

堀畑は同志社大学大学院哲学修了後、関口真希子は杏林大学法律政治コースを卒業後、ともに文化服装学院アパレルデザイン科で学ぶ。
1998年に同学院を卒業後、それぞれコム・デ・ギャルソンとヨウジ・ヤマモトでパタンナーとして5年間勤める。2003年 ともに渡英、ロンドンのデザイナー Bora Aksuのコレクションの仕事に携わる。帰国後の2005年3月 '05-'06 A/W 「matohu」をスタート。
2006年3月よりジャパンファッションウィークに参加。2009年、毎日ファッション大賞新人賞・資生堂奨励賞を受賞。 「matohu」は、 「日本の美意識が通低する新しい服の創造」 をブランドコンセプトに、独自のテキスタイルとパターンカットによって、和でも洋でもないあたらしい服のあり方を提案している。ブランド名の「matohuまとう」には、服を纏うという意味と、美意識が成熟するのを待とうという意味が込められている。




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