雑誌『をちこち(遠近)』
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米国で最先端のパブリック・ディプロマシー理論を学ぶ ~南カリフォルニア大学パブリック・ディプロマシー夏期セミナー

稲田 充弘(経理部会計課)



 最近では、パブリック・ディプロマシーという言葉を耳にすることも多くなってきたと思いますが、日本の外務省のウェブサイト(参考:外務省HP よくある質問集/文化外交)によれば、パブリック・ディプロマシーとは「伝統的な政府対政府の外交とは異なり、広報や文化交流を通じて、民間とも連携しながら、外国の国民や世論に直接働きかける外交活動」で、「グローバル化の進展により、政府以外の多くの組織や個人が様々な形で外交に関与するようになり、政府として日本の外交政策やその背景にある考え方を自国民のみならず、各国の国民に説明し、理解を得る必要性が増してきています。こうしたことから、『パブリック・ディプロマシー』の考え方が注目されています」と説明されています。

 このように世界的にも関心が高まり始めているパブリック・ディプロマシーですが、比較的新しい概念であるため学問的には未だ確立の途上にあります。その中でも世界のパブリック・ディプロマシー研究をリードする存在として注目されているのが、アメリカの南カリフォルニア大学です。
 ロサンゼルス市の南東部に位置する西海岸最古の私立大学で、UCLAと市内での人気を二分し、カレッジ・スポーツや情報工学、映画芸術学で全米中にその名を知られています。
 パブリック・ディプロマシーの分野にもいち早く取り組み、2003年にパブリック・ディプロマシー・センターを設立し、2005年には世界に先駆けてパブリック・ディプロマシーを専門とする修士コースを開設しています。2006年からは、通常の授業がない夏休みの期間を利用して、世界中のパブリック・ディプロマシー専門家を対象に、集中的にパブリック・ディプロマシー理論を教授する夏期セミナーを実施しています。今回、国際交流基金の職員として初めてこのセミナーに参加することになりました。


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世界各国の実務家が集う
 今年(2013年)のセミナーは、7月22日から2週間の日程で行われ、世界14カ国から32名が参加しました。中堅職員向けのセミナーのため参加者は30~40代が中心です。アメリカの国務省職員のほか、発展著しいカタールから5名が初参加し、イスラエルの前線で活躍する政府の報道官やルワンダ出身のアフリカ連合職員など、世界中から多彩な顔触れが集いました。職種も、政府職員以外に文化交流団体やジャーナリスト、大学教授など多岐にわたっています。

 授業は月月曜日から金曜日まで、午前に3時間、そして午後にも3時間で、パブリック・ディプロマシーの概念理解に始まり、ソフトパワーや国家ブランディング、CSR(企業の社会的責任)や中国のパブリック・ディプロマシーなどの関連トピックについても授業が行われました。講義を中心にしつつ、グループでのディスカッションや発表の機会も多く設けられています。


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信頼性が最重要
 パブリック・ディプロマシーは新しい概念のため、多様な考え方があるのが実態です。例えばパブリック・ディプロマシーの定義については、これまでにも様々な定義付けがなされてきましたが、このセミナーでは「パブリック・ディプロマシーには確立した定義はない」(参照:南カリフォルニア大学パブリック・ディプロマシー・センターHP What is Public Diplomacy?)ということを前提としています。
 またパブリック・ディプロマシーを実践するにあたっては信頼性が最も重要で、そのためにコミュニケーションやステークホルダーを重視すべきであると繰り返し強調されていました。
 あるいは、パブリック・ディプロマシーの構成要素は「聞き取り」「宣伝」「文化外交」「人物交流」「国際放送」だとする論説が紹介され、国際交流基金が行っている文化交流や人物交流もパブリック・ディプロマシーの一要素と位置付けられているのが印象的でした。時には、JETプログラム(語学指導等を行う外国青年招致事業)など日本の取り組みが事例として取り上げられることもありました。
 経験豊かな教授陣、幅広い講義内容、豊富な資料と情報、参加者同士の白熱した議論によって、2週間という短い期間にも関わらず、非常に中身の濃い充実したセミナーとなっています。


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セミナー参加者と(一番左が筆者)


このセミナーは今年で8年目を迎え、これまでに181名が参加していますが、日本人はわずかに2名。ヨーロッパでもベルリンのInstitute for Cultural Diplomacyを始めとして、パブリック・ディプロマシー研究が進められています。 日本の文化が海外で評価され、日本はソフトパワー大国と言われるようにもなりましたが、パブリック・ディプロマシーへの取り組みは始まったばかりです。今後、国際社会におけるパブリック・ディプロマシーの重要性が高まっていく中で、日本でもパブリック・ディプロマシー研究を進め、理論に基づいて効果的にパブリック・ディプロマシーを実践していくことがより必要となっていくことでしょう。



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