雑誌『をちこち(遠近)』
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クウェート・ヨルダン和太鼓公演

太鼓奏者 上田秀一郎



中東2カ国クウェートとヨルダンにて、2011年11月21日から10日間の日程で合計4公演を共演者のヴァイオリン須磨和声氏、そしてサクスフォーン田村真寛氏、そして他5名の日本からのスタッフと共に終えました。

中東でのコンサートは、私も共演者も皆初めてのこと。我々3名のセッションも初めての組み合わせで、初公演が中東の地というのは非常に心に残るスタートとなりました。アラブの伝統的楽器「タブラ」に似た楽器とあり、太鼓は現地の方々が好む楽器だと伺っていましたので、太鼓奏者としては現地の方々に「和」というものを太鼓を通して、また我々のアンサンブルを通してどう表現するかを考えました。

常に思うことですが、どんな音(音楽)が作られるかは一期一会であり、共演者との掛け合い、そしてお客さんのその瞬間の反応が織りなし出来上がるものではないかと思っています。やはり「人」であるということです。二度とは同じ空間で同じ「音の会話」は出来ません。そのときそのときの演奏者同士の掛け合いから生まれた"音の化学反応"によって、どんなふうにお客さんに届くのか、今回の公演もまた、1回1回が新しいものになると思っていました。

まず始めに我々が訪れた地はクウェート。今年は日本とクウェート修好50周年の佳節に当たる年で、クウェートの日本大使館主催/共催事業として20にもおよぶ行事が開催されています。その一つとして我々の公演が11月23日、24日にまずはクウェート市の「ミシュリフ文化センター」で開催されました。

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クウェート公演にて

クウェートは、非常に親日国で、今回の震災の際もこれまでに無い膨大な量の石油を日本へ無償提供してくださったり、多くの人が被災地のためにと募金をしてくださっているというお話を大使から伺いました。公演当日、会場の入り口に、私が震災以来行っている被災地支援「光灯せし希望と祈りの太鼓」プロジェクトで被災地訪問をした時の写真パネルを展示。その写真1枚1枚を皆さんが見てくださっていました。
小溝大使のご挨拶で公演は幕を開け、1時間半に亘り合計8曲を演奏。2公演で約500名の方々にご来場頂き、特に2公演目の一般向けの公演では、私たち出演者が舞台に登場すると、立ち見の方々で溢れた会場から大きな声援と拍手をいただき、3人とも、演奏に力が入りました。

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復興への祈りを込めて「光の道標」

3公演目は、同クウェート市内にあるスークシャルクショッピングセンターの野外特設会場で行われました。
当日は日本人会主催の日本祭りが開催され、多くの一般客で賑わっていました。
ショッピングセンターの野外ステージでしたので、リハーサルの段階から、会場には多くの観客が集まっていました。本番のころには会場の内外を埋め尽くす500人近い人々が30分間の我々の演奏に耳を傾け、アラブ特有の歓喜の声援をこちらへ投げかけてくれました。我々演奏者にとって、この声援は何よりの起爆剤となり、クウェートの夜空に私たちの音を響かせることが出来ました。

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クウェート野外公演風景

海外公演時は常に感じることですが、その土地土地で、観客の反応や感情表現が異なり、我々演奏者にとってとても興味深いものです。今回も観客からのダイレクトで熱意のこもった反応を感じることが出来て、私たちも素直に彼らの気持ちを受け止めることができました。
私たちと彼らの間には言語の違いや文化の違いがありますが、音(音楽)を介しての会話は万国共通。音は言葉のようにはっきりとしたある特定のメッセージを発しませんが、だからこそ面白い。だからこそ人々の違いを越えて伝わっていくものなのだなと、中東の地でもまた、感じることが出来たように思います。

クウェートでの3公演を終え、次に向かったのはヨルダンのアンマン。
27日はアンマンにある「ACS国際学校」で、500名を越える小学生から高校生までの全校生徒たちが体育館に集まり、ワークショップと私の演奏に耳を傾けてくれました。

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ACS国際学校での演奏風景

ワークショップでは、まず太鼓について知ってもらえるように、太鼓についてのクイズをいくつか出しました。一つは歌舞伎等でも使われている、太鼓で表す自然の音。深々と降る雪の音や波の音を太鼓で私が打ち、子供たちに答えを聞いたところ、とても面白い答えが沢山返ってきました。

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ACS国際学校でのワークショップ風景

日本でもこのようなワークショップを行うのですが、子供の感受性や想像力にはいつも驚かされます。ここアンマンの子供達もまったく同じで、その発想にはこちらがびっくりさせられました。その後、実際に太鼓に触れてもらうため、全校生徒の中から選ばれた約20名ほどの生徒たちに、大太鼓や桶胴太鼓を私の合図と共に打ってもらいました。西洋のドラムとは異なって厚めの皮を使用する和太鼓は、木の胴と皮の共鳴で大きな力強い音が出ます。そのためには、しっかりと腰を落として大きく手を振り落とす姿勢が大切になってきます。はじめは恥ずかしそうにしていた生徒たちも、真剣に音の違いを聞きながら、気持ちの良い音を出してくれていました。

ツアー最終公演は、ヨルダン大学のハッサンホールにて開催されました。
11月28日、アンマン市民を中心に約700名の観客が集まりました。小菅大使のご挨拶で幕を開けたコンサートでは、クウェート同様、観客からの大きな歓声と拍手に我々演奏者は包まれ、アンコール合わせ合計9曲を演奏しました。最後にはスタンディングオーベーションの盛り上がりとなり、公演後は多くの方達が楽屋を訪れてくださり、皆さんの感想を直接聞くことも出来ました。

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ヨルダン公演にて

我々3人の演奏者が、今回の中東ツアーを通して現地の人々とふれあう中で、各々自身がこれからも「表現者であり続けること」について目指す先を見つけることが出来たのではないかと思います。そしてまた、私たちのこの公演が、日本とクウェート、ヨルダン両国とのより良い関係のための、ある一つの架け橋になることが出来たらとても嬉しく思います。今後もふたつの国と日本の文化交流がよりいっそう深まることを期待し、私たちも日々努力をしていこうと思います。



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wadaiko_kuwait09.jpg 上田 秀一郎
1976年 神戸出身。高校在学中太鼓に出会う。1995年に地元神戸を襲った、阪神大震災後被災地で激励演奏を行う中、太鼓の大きな力に感銘し、卒業後「和太鼓一路」ヨーロッパツアーに参加。帰国後、地元神戸の「和太鼓松村組」創設に参加、以後8年間中心メンバーとして活躍。
太鼓ソリストの最高峰、林英哲に師事。「英哲風雲の会」のメンバーとして国内・海外での林英哲ツアーコンサートに出演。
2004年より本格的にソロ活動を開始。三枝成彰作曲太鼓協奏曲「太鼓について」ペルー公演にてソリストデビュー。2005年、CLUB CITTA'川崎「オリエンタルナイト」総合プロデュース。自身初のコンサート「赤と黒」を開催。2006年より内田裕也プロデュース「NEW YEARS WORLD ROCK FESTIVAL」(毎年12月31日)に連続出演。2007年、鈴木和郎(ピアノ)とのライブアルバム「Last Summer」をリリース。
2008年、平成中村座「夏祭浪花鑑」に太鼓奏者として出演し、ドイツ・ルーマニア公演、コクーン歌舞伎、信州まつもと大歌舞伎に出演。笛田中傳十郎と上田の和太鼓が、囃子の一楽器としてではなく、舞台演出として歌舞伎の舞台に登場するのは初めての事として話題を呼ぶ。2009年より「珠響〜たまゆら〜」に三響会(囃子)、稲本響(ピアノ)、村治佳織(ギター)、藤原道山(尺八)と共に、和洋ジャンルの超えたコンサートにて競演。2010年、大阪平成中村座「夏祭浪花鑑」に出演。2011年、桜壽博多座大歌舞伎「夏祭浪花鑑」に出演。現在もソロ演奏の他、木乃下真市(津軽三味線)、土井啓輔(尺八)、谷川賢作(ピアノ)、鈴木和郎(ピアノ)田村真寛(サックスフォーン)、中川かりん(二十五弦琴)、田中傳十郎(笛)と様々なジャンルと共演し、独自の音楽世界を表現し続けている。




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