雑誌『をちこち(遠近)』
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若手女性邦楽家がラテンアメリカを行く、フォルクローレの名手らと競演

はなわちえ(津軽三味線奏者)
辻本好美(尺八奏者)







 津軽三味線全国大会A級女性部門で最年少優勝を果たしたはなわちえ辻本好美(尺八)による、日本の伝統と現代の感性を調和させた演奏を持ち味とした若手ユニット「風華~FUGA~」が、2013年7月15日~24日に、アルゼンチンとチリで公演を行ないました。
 ブエノスアイレス(アルゼンチン)では、国際的に活躍するケーナの名手、ラウル・オラルテと共演、またサンティアゴ(チリ)では、アルタソール国家芸術賞を受賞したギタリスト、フアン・アントニオ・サンチェスと共演し、チリを代表する総合芸術施設「ガブリエラ・ミストラル文化センター」で開催中の日本フェスティバルのフィナーレを飾りました。

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ブエノスアイレス公演ポスター



言葉は違っても音を通じて確かにできた会話
 生まれて初めての南米公演、お客様の反応はどんな感じなのか全く予測がつかず、自分たちの音楽を受け入れていただけるのか不安な面もありました。しかし、実際にお会いしてお話ししたチリの方、アルゼンチンの方はみなさまとても暖かく、初めてお会いしたとは思えないほどフレンドリーに接してくださり、その不安は少しずつ解消されていきました。
 スタッフの方は親身になってセッティングを手伝ってくださいましたし、常にわたしたちのコンディションを気遣ってくださいました。その感謝の想い、そして地球の反対側で息づく日本の心を音に載せて自分たちなりに表現した公演ではお客様も暖かく受け入れてくださり、さらなる感謝の気持ちが日々高まって行くツアーでした。
 チリで共演させていただいたギター奏者、フアン・アントニオ・サンチェスさんとは、本番の盛り上がりからあらかじめ決めておいた進行を離れて、セッションバトル。言葉は違っても音を通じて確かに会話をできていると実感した瞬間は、今なおわたしの胸で輝く宝物です。

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フアン・アントニオ・サンチェスさんとセッションバトル

 また、アルゼンチンで共演させていただいたケーナの名手、ラウル・オラルテさんは熱心にわたしたちの音に耳を傾けながら、素晴らしく深みのあるケーナの音色で優しく包み込んでくださいました。遠く離れた地の民族楽器であるケーナと尺八にたくさんの共通点、音色の類似性があることにも驚き感動いたしました。
 決して近くはない日本と南米。けれど今回のツアーを通じて、お互いの心の距離は遠いものではないと感じました。温故知新の心は共通していると思います。だからこそ、伝統楽器と現代音楽の融合を受け入れ楽しんでいただけたのだと思います。
 近い将来、また必ず訪れ皆様に再会できることを信じて、その日までさらに精進していこうと思います。今回いただいたたくさんの元気と勇気を、今度はわたしが音楽を通して発信し続けていきたいと思います。(はなわちえ)



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(左)サンティアゴの街並み、(右)サンティアゴ公演会場
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サンティアゴ公演の様子



アルゼンチンのケーナにも挑戦
 最初に南米ツアーのお話をいただいた時はとても嬉しい衝撃を覚えました。チリとアルゼンチンという、日本の反対側に位置する国で演奏が出きるなんて、思いもよらなかったからです。2013年7月15日から24日の10日間。私にとって初めての南米に期待を膨らませながら日本を出発しました。
 今回の演奏ツアーでは、それぞれの国で活躍されている演奏家の方と共演ができるという楽しみがありました。
 最初に訪問したサンティアゴでは、チリを代表するギタリスト・作曲家であるファン・アントニオ・サンチェスさんと共演。彼の繊細かつ色鮮やかな音色に魅了されました。そしてブエノスアイレスではアルゼンチンを代表するケーナの名手、ラウル・オラルテさんと共演させて頂きました。
 私は何度か日本でアンデスのフォルクローレの代表曲「コンドルは飛んでいく」を演奏したことがありましたが、その時に「ケーナと尺八の音が似ている」としばしば言われるました。それで興味もあり、折角ケーナの本場に来ているので、チリに滞在中に楽器店を紹介して頂きました。訪れたその楽器店では、お店の方が色々な種類の民族楽器を出してきて、一つ一つ丁寧に説明して下さり、また体験させて頂きました。お目当てのケーナも何種類かあり、その中から一本購入しました。
 そしてアルゼンチンに到着後、厚かましくもオラルテさんにケーナの吹き方を指導して頂きました。尺八と大まかな構造は似ているため音は難なく出せますが、やはり音色は雲泥の差。オラルテさんから奏でられるケーナの音色はとても温かみがあり、風に乗ってどこまでも飛んでいくような音でした。

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(左)楽器店にてケーナを購入、(右)ラウル・オラルテさんにケーナ指導を受ける

 今回のように、その国の風土に触れながらのステージは、その国の人と音楽やステージを通して交流することが出来る、本当に素晴らしいものだと思います。私自身、ここで得た経験や刺激を日本での活動の糧にしたいと思います。また何より、私達のステージをきっかけに日本への興味・関心や親しみを持って下さったら、最高の喜びです。ありがとうございました。(辻本好美)





latin_merica_folklore01.jpg はなわちえ(津軽三味線)
茨城県出身。9歳から佐々木光儀の下で津軽三味線を習い始め、17歳で津軽三味線全国大会A級女性部門に初挑戦。最年少チャンピオンとなる。東京藝術大学音楽学部邦楽科在学中、アルバム「月のうさぎ」(2004年)でメジャーデビュー。以後、都内のライブハウスを中心に、バンド編成による演奏活動をスタート。ヴァイオリンの沖増菜摘とともに和洋ユニットhanamasを、また東京藝術大学の後輩である辻本好美(尺八)、柿木原こう(筝)と和楽器ユニット「結」を結成。皇居内桃華楽堂での御前演奏や、アジア、欧米諸国での海外公演、テレビCMでも活躍。音楽のジャンルにとらわれず、津軽三味線の可能性を積極的に追求している若手実力派アーティストと評価されている。



latin_merica_folklore02.jpg 辻本 好美(つじもと よしみ/尺八)
和歌山県出身。16歳から尺八を始める。東京藝術大学音楽学部邦楽科尺八専攻(琴古流)卒業。在学中、テレビ番組『題名のない音楽会』に出演したほか、米国、イタリアで演奏。2011年、早乙女太一「晩夏の舞」ツアー公演に尺八演奏として参加。
東京藝術大学卒業生で結成された、和楽器ユニット「結」や和楽器オーケストラあいおいのメンバーとして、東京を中心に活動を展開中




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