中国における日本研究の拠点として ~北京日本学研究センター30周年記念シンポジウム開催~

勝田 真、坂本 尚子(日本研究・知的交流部 アジア・大洋州チーム)



 1980年、前年の大平正芳首相(当時)と華国鋒主席(当時)の合意に基づき、中国における日本語・日本研究、日本との交流に携わる人材の養成を目的に「日本語研修センター(通称「大平学校」)」が設立されました。それから5年、約600名の卒業生を輩出した大平学校は、国際交流基金(ジャパンファウンデーション)と中国教育部の協議によって「北京日本学研究センター」(以下「センター」)として生まれ変わり、今日まで中国における日本の教育・研究機関の拠点の一つとして、その役割を果たし続けています。
 そのセンターが、今年設立30周年を迎えました。それを記念してこれまで多数のイベントが開催されてきましたが、この度、満を持して、そのメインイベントとなる国際シンポジウム「アジアにおける日本研究の可能性」が開催されました。
 10月24日、記念式典を皮切りに、基調講演、トークセッション、優秀修士論文賞授賞式が行われました。会場にはセンターの教員や学生だけでなく、過去に学生への研究指導を行った先生方や、この30年の間にセンターを卒業したOB・OGが多数集まり、久々の再会を懐かしむ声があちこちで聞かれました。

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記念式典参加者の集合写真

 基調講演では、初めにセンターの元日本側主任教授である竹内信夫先生(東京大学名誉教授)が、大平学校設立のきっかけをつくった大平正芳元首相の日中友好に対する思いを情熱的に語り、会場の感動を誘いました。続いて北京大学の厳紹璗教授が、日本古代史を中心とした歴史的考察について紹介し、日中両国は古代から平等で親和的な関係であったと説きました。
 トークセッションでは、中国側元主任と日本側元主任教授に加え、センター卒業後、研究者、編集者、旅行社社長、公務員など様々な方面で活躍する卒業生が、センターへの思いと今後の展望について語りました。印象的だったのは、大平学校時代に国際交流基金から講師として派遣された先生方3名がこのフォーラムに参加されていることが、一人の卒業生から紹介されたことです。大平学校設立から35年が経過した今でも、大平学校とセンターを大切に思う卒業生と先生方の熱い思いを感じ、設立当時の希望溢れる情景を思い浮かべずにはいられませんでした。

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トークセッションの様子

 翌日には、中国国内外の日本研究者がセンターに集まり、専門分野ごとに分かれた主題別フォーラムが開かれました。「東日本大震災と日本社会の変容」をテーマとした分科会では、研究発表に加え、センター事業への支援を行っている三菱商事株式会社の参加者が同社の東北への復興支援活動を紹介し、聴講者は企業の視点からも復興支援について考えることができました。分科会は6分野で同時並行的に行われ、それぞれの教室で、発表と活発な議論が行われたようです。

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分科会「東日本大震災と日本社会の変容」

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分科会「多様な視点から考える日本語教育研究」

 2日間のイベントの使用言語はほとんどが日本語でした。中国人研究者だけが参加する分科会においても、ディスカッションも含めた全てを日本語で進行しており、このような面でもセンター事業30年の成果を感じられました。シンポジウムの開催とあわせて、歴代の卒業生や日本からの派遣教授を招いての同窓会も開催されていたそうで、30年の絆を感じる温かいイベントになりました。
 センターの現主任である徐一平教授は、「十年树木、百年树人(樹木を育てるには10年かかるが、人を育てるには100年かかる)」という中国のことわざを用いて、センターを本当の意味で一人前にするには、まだまだ時間と努力が必要と語っていました。国際交流基金でセンター事業を担当している私たちも、長期的な視点に立って、センターが今後日本研究の拠点として更なる発展を遂げられるよう取り組んでいこうと思います。

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歴代の学生写真等を展示する記念写真展も実施

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30周年の一環として6月に開催された、茶道裏千家による講演会とデモンストレーション

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