コロナ禍の世界を文化でつなぐ 第48回(2021年度)国際交流基金賞 <1>
第48回(2021年度)国際交流基金賞 授賞式レポート

2021.12.23
【特集075】

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特集「コロナ禍の世界を文化でつなぐ 第48回(2021年度)国際交流基金賞」(特集概要はこちら

国際交流基金(JF)創立翌年の1973年から毎年開催されてきた国際交流基金賞が、新型コロナウイルス感染防止により中止になって1年。2021年は、是枝裕和さん(映画監督)、宮田まゆみさん(笙奏者)、ベトナムのハノイ国家大学外国語大学日本言語文化学部/ハノイ貿易大学日本語学部/ハノイ大学日本語学部、ドイツのイルメラ・日地谷=キルシュネライトさん(ベルリン自由大学教授)という、例年から1名・組増えた多彩な4名・組が受賞し、10月20日に東京都内で授賞式を開催しました。
コロナの影響で来日がかなわなかった海外の受賞者や一部の招待者とオンラインでつなぎ、リアルでの開催とオンライン中継を交えた初めての授賞式となりました。

jushoshiki02.jpg スピーチをする是枝裕和さん


受賞スピーチで、是枝さんは「こうやって一緒に映画を作っている方々の顔を見ていると、賞をいただいてよかったなと改めて感じております。デビュー作で海外の映画祭に参加したことで世界の広がりが映画を通して見えてきた実感がありました。これが今でも映画祭を大事にしたいと思う理由の一つです。なるべく多くの次の世代の人たちに、自分の国際共同制作の経験を、失敗も含めて共有していただいて、さらに豊かな、文化交流を日本の外へ広げていただければと思います」と笑顔を見せました。


jushoshiki03.jpg 宮田まゆみさん


続いて宮田さんは「いろいろな国の演奏家、作曲家、スタッフの方々、そして聞いてくださる人々と出会えたことは本当に私の大きな宝物です。国と国との間にさまざまな軋轢あつれきがあることは確かです。また、多様性を認めない社会が存在することも確かです。でも個人として演奏家や作曲家、お客様と接する時に、今まで嫌な思いや戸惑いは一度も感じたことがありません。人々との交流はとても心地よいものでした。個人対個人ではこんなに平和なのに、といつも思います。国際交流基金賞に励まされて、これからも一層世界のいろいろな地域の方々と交流を深めていきたいと思います」と力強く語られました。


jushoshiki04.jpg オンライン参加した、ハノイの3大学の学部長たち


ダオ・ティ・ガア・ミーさん(ハノイ国家大学外国語大学日本言語文化学部 学部長)、チャン・ティー・トウ・トウーイさん(ハノイ貿易大学日本語学部 学部長)、ギエム・ホン・ヴァンさん(ハノイ大学日本語学部 学部長)は、ベトナムからのオンライン中継を通じて「日越両国は過去最良と言っても過言ではない大変良好な関係を築いています。それに伴い両国間の経済交流、文化交流も一層活発化し、ベトナム進出日系企業や日本本土の日本企業に就職するベトナムの若者が増えています。我々3大学は、日本語だけではなく、ビジネスマナーやソーシャルスキルの習得、資格取得の支援等、独自のカリキュラムを通し、グローバルの舞台で活躍できる優秀な人材の養成に尽力しております。受賞を励みとし、これからもベトナムにおける日本語教育の発展、優秀な日本語人材の育成に専念することをもって日越友好関係のさらなる深化に精進してまいりたいと存じます」と流暢な日本語でスピーチされました。


jushoshiki05.jpg オンライン参加の日地谷=キルシュネライトさんと招待客の皆さん


日地谷=キルシュネライトさんはドイツからオンラインで、「国際交流基金賞を受賞したという知らせは、私をまるで荘子の「胡蝶の夢」そのままの、夢と現実の揺らぎの中にいるような気持ちにさせました。日本との出会いは非常に重要な体験でした。日本の文化と文学を学ぶことは私を豊かにし、私の地平を広げてくれました。1970年7月7日、初めて日本の地を踏み、勉強を進めた日は毎年祝う大事な日です。今回の受賞は私にとって非常に大きな意味があります。日本の詩『今様』が思い浮かぶのですが、あまりにも自明で意識せずにきたのが、最近になって初めてその全容がわかりかけている気がします」と、『いろは歌』の引用を交えつつ情緒豊かに受賞の喜びを述べられました。

式典後には、ロビーにオンライン参加の受賞者たちとビデオ通話で歓談できるコーナーも設置。来場した旧知の関係者と画面越しに喜びを分かち合い、再会を誓う受賞者の笑顔に、彼らが築いてきた友好の絆の確かさを感じさせられました。

国際交流基金賞  https://www.jpf.go.jp/j/about/award/


取材・文:寺江瞳(国際交流基金コミュニケーションセンター)
写真:桧原勇太


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