雑誌『をちこち(遠近)』
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七、学校での落語会は毎回が真剣勝負なんです

立川志の春




まだまだ暑い日が続きますね。

夏といえばかき氷。今大人気で、中には1時間待ち、2時間待ちという行列ができるようなかき氷屋さんもあるようです。
ふわっふわの氷にたっぷりのシロップをかけて......たまらないですね~。

でもこのかき氷、もとはというと、魚介類の牡蠣かきがありますね。
あの牡蠣を食べる習慣というのはずいぶん昔からあったんだそうですが、今よりも衛生環境が整っていない頃のことですから、あたる人が多かったようです。あたらないようにどうしようかと考えた時に、一つは加熱して食べるという方法、そしてもう一つは逆に冷やす、つまり氷と一緒に食べるという方法が生まれたんだそうです。
ただ、氷と一緒に食すにしても、塊のままだと食べにくい。というわけで、氷を削って、飲み込みやすい状態にして牡蠣と一緒に食べる形が流行ったのだとか。ですからかき氷のそもそもの由来というのは、実はあたりにくくするために牡蠣を氷と一緒に食べていた「牡蠣氷」にあったのです。

......というような話は、一切聞いたことはありませんっ!
すみませーん!(特にこのエッセイを毎月英訳して下さっている方にすみません!)

さ、少し涼しくなったところで......今月は学校での落語会について書こうと思います。

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5月7日、東京のインターナショナルスクール「The American School in Japan(ASIJ)」での落語会にて、生徒の皆さんと。


最近、学校で落語をやらせていただく機会が少しずつ増えてきました。ありがたいですね。ところで、学校での落語会は、通常の落語会とはちょっと違うんです。
通常の落語会ですと、お客さんはお金を払って落語を楽しもうという心持ちで自主的に足を運んでくれているわけです。ところが学校の場合は、大概、先生が企画をしてくれますから、生徒さんが主体的に我々を呼んでくれているわけではないのです。
つまり、これは入場無料の会でも往々にしてありがちなことなのですが、あまり生徒さん(や、お客さん)が前のめりではないという状態が多いんです。

はっきり言ってしまうと、あまり期待されていない。だから余計に気合が入るんです。意地でも笑わせたい。何とかして落語を面白いと思ってもらいたい。学校公演の場合は、毎回毎回が一発勝負という気持ちでやっています。

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ASIJの落語会で設けた「一緒にやってみましょう」のコーナーで、生徒さんたちに挑戦してもらったのは「時そば」の仕草。


でも、その気持ちさえ伝われば、生徒さんたちは素直に反応してくれます。で、後でアンケートをいただくと、「とても面白かった」「楽しかった」などなど、嬉しい感想を寄せてくれます。ただ興味深いのが、ほとんどと言っていいくらい、その言葉の前にはこんなことが書かれています。

「正直、落語と聞いて眠くなってしまうかと思いましたが......」
「友達と寝てしまうのではないか......大丈夫かな......と心配していましたが......」
「落語=お年寄りのイメージだったので、自分たちの世代には理解できないタイプの笑いだと思ってたけど......」
「最初は落語なんてつまらないと思っていたけれど......」

いやいや。落語っていったい、どれだけイメージ悪いんだ! という感じなんです。
で、ほとんどの生徒さんは、生の落語には触れた経験がないのです。ところが不思議なことに、ネガティブなイメージだけがものすごく定着しているのです。

いや、でも、私自身がそうでしたから、わからなくもありません。
「伝統」=「古い」「時代遅れ」「理解できない」と思ってしまうんでしょうね。
あとは何でしょう。もしかすると、生でこそ「想像して浸る」ということの醍醐味を味わえる芸だと思うので、メディアを通すと面白さが伝わりにくいというのもあるのかもしれません。若者の皆様、他に「これかな?」と思う要因があれば教えてください!

いずれにせよ、少しでもネガティブなイメージを覆せるよう、これからも頑張っていこうと思います。でも中には落語に慣れている子の、こんな感想もありました。

「演出がすごくうまかったです。さすがは、プロの落語家だなと思いました」

こわいですね~。あと、こんなのも。

「志の春さんのように、自分の仕事を楽しめる人になりたいと思います。でも、落語家にはなりたくありません」

いい仕事見つけてください!

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8月5日には、東京工業大学で英語落語を。4年目となる今年は、新作「The Important Thing」を披露。





shinoharu00.jpg立川志の春(たてかわ しのはる)
落語家。1976年大阪府生まれ、千葉県柏市育ち。米国イェール大学を卒業後、'99年に三井物産に入社。社会人3年目に偶然、立川志の輔の高座を目にして衝撃を受け、半年にわたる熟慮の末に落語家への転身を決意。志の輔に入門を直訴して一旦は断られるも、会社を退職して再び弟子入りを懇願し、2002年10月に志の輔門下への入門を許され3番弟子に。'11年1月、二つ目昇進。古典落語、新作落語、英語落語を演じ、シンガポールでの海外公演も行う。'13年度『にっかん飛切落語会』奨励賞を受賞。著書に『誰でも笑える英語落語』(新潮社)、『あなたのプレゼンに「まくら」はあるか? 落語に学ぶ仕事のヒント』(星海社新書)がある。最新刊は『自分を壊す勇気』(クロスメディア・パブリッシング)。


*公演情報は公式サイトにて。
立川志の春公式サイト http://shinoharu.com/
立川志の春のブログ  http://ameblo.jp/tatekawashinoharu/




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